一つの物語が終わった ――葬られた真実が明らかになる また一つの物語が始まった ――舞台は最北の地へ戻される 姿を見せた、全ての元凶 ――彼等はなお、蝶を狙う そうして繰り返される終わりなきストーリー 六年前に葬られた真実 隠された盲目の聖蝶姫の真実 氷の女王の誕生 葬ってもなお輝き続けた栄光と名誉 冷酷と言われ、非道と言われた 笑顔をいう仮面を被り、自分を隠した 慈悲を捨て、心を殺し、心を閉ざしても それでも充実した毎日で 少なくとも、自分は、シアワセだった―――― 『…さて、と…一仕事したわ。全く、探すこちらの身にもなって欲しいわ』 『それだけ、もう一人の【私】の力は不安定なんですね…』 『過去夢で起こった影響力は計り知れない。本人の意思関係なしにね。…まさかこんな形であの子の力が発動するとは思わなかったわ…たとえ無意識に、思わぬ状況で発動したとしても、結果は結果。どうしようも出来ないわ』 『…だからこそ、受け入れるしかないのですね』 『そう。たとえその結果が最悪な事になったとしても、受け入れる事しかあの子には出来ない。無意識とはいえ発動した、自分自身の責任として』 『…………』 空間に響く、二つの声 二つの声は、夢を見続ける蝶を見守る 過去と未来の行く末を、思案しながら 『………それでフレイリ、これからどうするつもりです?』 『当然、見守るわ。私が手を出せる領域ではないレベルよ。これはあの子が解決すべき物語、私の出る幕ではないわ』 『ですが…彼等に理解出来ない事態が、"また"別件で起きてしまっているのは事実です。フレイリ、あなたの力でどうにかしてあげられないのでしょうか…』 『あの子が介入するならわかるけど、私の介入は最も危険なのは分かっているはずよ。…状況によっては対処するつもりではいるわ。それが仕事だから……けれど、』 『けれど?』 『あの子を探すついでに色々調べてみたのよ。レンガルスと同じ魂を持つ、彼の事を。…中々興味深い話になってきたわ。彼ならこの手の話に理解を示してくれるはずだし、彼もミリを任せれる存在なのもまた事実――――ミリを救えるのはレンガルスか、もしくは… ―――ゼルジースか、ね』 無垢なる魂と強き力を持つ彼と 無垢なる魂と強き身体を持つ彼 彼女を救えるのは、どっち? リーーーーーン…―――― また一つ、 鈴の音が鳴り響く さぁ、次の扉を開こう 次の扉の先には、何がある? 開かれていた扉がゆっくりと閉じられて、新たな扉がゆっくりと開かれた―― 鳴り響く鈴の音の雷鳴を 蝶はついに、夢から覚める 第五章 完 |