とても忙しい日々を過ごしてますが

私は、元気です
















Jewel.41













本番前いきまーす



3…


2…


1…




スタート!






「――――はい!次のコーナーは、誰もがすっごく注目している『ポケモンマスター』について!」

「最近ポケモンリーグ協会本部が会見で公式発表し、ポケモンマスターが誕生した話はかなり有名な話になっていますからねぇ。今日は大々的にこのコーナーで取り上げますよ!」

「と、いうわけで今日はこの番組初!そのポケモンマスターに輝いたホウエンチャンピオンのミリさんに起こし下さいました!」

「紹介に預かりました、ポケモンマスターになりましたミリと申します。短い時間の中ですが、どうぞよろしくお願い致します」

「…」
「キュー!」
「……」






ワアアアアアア…!

パチパチパチパチ!





「今日は三強のポケモンを連れての番組出場ありがとう御座います。聞くところによると、ポケモンマスターになられてこの番組に出場するのは初めてだというのは…?」

「はい、初めてです」

「当番組を選んで頂きありがとうございます!!…あまりミリさんはチャンピオンになられても、こういうニュース番組には出られていなかったから、番組としてもすごく有り難いです」

「フフッ、これも何かの縁ですよ」

「色々とお話をお聞きしたいところですが、さっそくお話を進めていきたいと思います。よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」

「まず、一つ。ポケモンマスターになられて、今日まで何をされてきたんです?」

「たくさんの方々に祝福を受けながら、チャンピオンとしての仕事を勤めてきました。パレードやパーティを開いてもらっていた手前、遠征に赴いてバトルをしたり、いつも以上にトレーナーと対戦したりと…フフッ、少なくても前よりもさらに忙しくなりましたね」

「そうでしょうねぇ、リーグ協会主催の予選選抜もポケモンマスター見たさに出場するトレーナーも多くいると聞きますからねぇ」

「ポケモンマスターになって、まず誰に報告しましたか?」

「お世話になった方々、個人的にお付き合いしている方々ですね。個人的な事になっていきますので誰かという発言は控えさせて頂きますが―――皆さんまるで自分の様に喜んで下さって…その声でさらにポケモンマスターになったという自覚が深まりました」

「身近でチャンピオンを見てきただけあって、本当に嬉しかったんでしょう。勿論私達だって貴女の姿をニュースで取り上げ、見続けてきたのですから、気持ちはすごく分かります」

「フフッ、ありがとう御座います」

「―――時に聞きますが、ポケモンマスター認定試験について貴女は誰何一つとしてその全容を発言していないと聞きます。リーグに問い合わしても、発言は控える姿勢でいらっしゃいます。出来たらチャンピオンのお口からポケモンマスターの事についてお聞かせ願いたいと思っているんですが…」

「申し訳ありません、私もリーグもポケモンマスターの事を口外してはいけない規則になっています。特にどういう経緯で認定試験に出場し、その試験内容等の質問は原則禁止されているんです。ご理解頂けたらと思います」

「そこをなんとか、ちょーっとだけは可能で…?」

「すみません…お気持ちは理解していますが、規則は規則なので。ご察し下さい」

「……ですが世間は全容を明らかにしなければ、貴女がポケモンマスターになった話を疑う人も出てきます。その点につきましては、どうお考えで?」

「はい、私も当然そう考えました。勿論、上に進言しましたが、上はその口外禁止の姿勢を崩すつもりはないそうです。何故、その姿勢でいるのかも口外禁止――――なので、もし誰か私の認定を疑う人が出たらそれはしょうがないと思っています」

「私達は当然貴女がポケモンマスターになった事を信じています。そのスカーフに付いているエンブレムがその証なのは歴史の記録に残っています」







首元にキラリ輝く、ポケモンマスターだと証明するブローチ






「しかし万が一、そんな人が現れたとしたら…上はどうお考えなのですか?」

「うーん、出来たら私としたらその人と正面きってバトルして実力を認めてもらえたらと思うんですよね〜」

「…」
「キュッ!」
「……!」

「チャンピオンだけでも実力が認められてる上に更にバトルとは色々と危なそうですねそのトレーナーさん」

「他のマスコミも執拗に真相を追及してきそうなんですが、それに関してはどうですか?」

「出来たらしたくないんですが…あまりにも執拗でしたら、上に報告させて頂きます。そのマスコミさんは今後どうなってしまうかは………うーん、フフッ」

「あ。今のでマスコミ業界の人達は身の危険も含め色々と察ししたと思いますよ色々と!」







チャンピオン、無駄に素敵な笑顔が怖いです!


あはー





「では、感想はどうですか?内容は言えずともミリさんの率直な感想だけでも聞かせて頂いたらこちらは手を引きます!」

「私達もそのマスコミの一部にはなりたくありませんからねぇ」

「!率直な感想、ですか。うーーん………あ、なら大丈夫です。そういえば上が率直な感想なら大丈夫だっておっしゃっていたのを今思い出しました」

「大事な事ですよチャンピオン!」

「…(ペシッ」

「では、さっそくその率直な感想をお聞かせ下さい!」

「はい、ポケモンマスター認定試験に対する私の率直な感は…………………、………」

「………?ミリさん?」






フラァ…




ゴッ!!









「「「「「!!!???」」」」

「キュー!?」

「ミリさん!?どうしたんですか!?」

「大丈夫ですか!?今すっごく机に額がダイレクトいきましたね!?」

「……ハッ!私としたら中継中にも関わらず気を失うなんて…!」

「ええええええええ」

「ミリさん別に今バラエティの反応を求めているわけではありませんよ…!」

「いえいえ、私は今本気で思い出そうとしていましたよ?率直な感想をいう為に、こう、試験内容を振り返って……ああ駄目だちょっと思い出しただけでも気が遠くに……(ガッ!」

「キュー!!」

「ミリさんんんんん!!」

「すみませんいったんCMに入りまーす!!!」










暫くお待ち下さい……









「先程はお見苦しい姿を見せてしまい、かつ驚かせてしまい申し訳ありませんでした。CMのお蔭で落ち着きました。CMも時には大切なんですね。身に染みてよく分かりました(爽やかスマイル」

「いや〜、一時はどうなるかと思いましたよ」

「改めて率直な感想を申し上げますと――――『気を失ってしまうくらいかなりの難易度でしたがその反面、合格出来た時も気を失うくらいとても嬉しい光栄な事』でした(爽やかスマイル」

「…やけに気を失うとありますが、実際には…?」

「そこにベットがあったお蔭で打撲に至らず済んで本当によかったです(爽やかスマイル」

「あ、はい、もうこの質問はチャンピオン自身の意識の為にも終わりにしますね!」







笑顔があまりにも爽やかすぎです!

あはー






―――――――
―――――
――

















「ハハハッ!中々、上手く話から逃れられたな!あれは面白い映像になるだろう!確かにこれなら君に対する執拗な取材は少なくなるだろうな!むしろコミカルな姿を見れた事で世間は好評価するんじゃないかな!」

「我ながら上手くいったと思います。ですが本当に私の率直な感想なんですよ?今でも思い出すと、こう………意識が…」

「いやいや、無理に此処で思い出す必要はないよ。私からけして聞くことはないから落ち着こうかミリ君」

「…(ペシッ」
《ミリ様しっかり!》
《コントみたいだな》
《マスター、お気を確かに》
《そんなに難しかったのか…》
「ふりり〜」
「チュリリ〜?」






リーグの仕事を終わらせ、マスコミの方の取材を終わらせた私達は、自宅のリビングに腰を落ち着かせていた

こちらのホウエンに帰ってきてからというものの、様々なマスコミの取材やら(溜まりに溜まった)リーグの仕事やらと、色々駆り出され回され振り回される日々を送っていた。尚且それにプラスしてポケモンマスターとして現地に赴いてバトル披露したりと―――アスランさんを含めて、私達はこの数週間を多忙の毎日で負われていた

今日やっと全てに区切りが着いた事で、こうしてのんびり久しぶりにアスランさんと会話する事が出来た。改めて視るアスランさんは、相変わらずお元気そうで安心した






「―――…しかし、君は本当にやってくれたよ。私でさえ難しい試験をクリアしてきたなんて…本当に、君は素晴らしい人間だ」

「全てはアスランさんのお蔭ですよ。アスランさんが居なければ、私は試験にさえ出られなかったんですから。私がこうしてチャンピオンとして君臨出来たのもアスランさんの御力添えのお蔭ですし、ポケモンマスターなんて尚更ですよ。本当に…ありがとう御座います、アスランさん」

「いやいや、礼を言うのはこちらの方だ。君がいてくれたお蔭で私も助けられた。それにポケモンマスターの誕生を間近で見れたんだ。私はとても、誇らしいよ。…良く頑張ってくれたよ、ミリ君」

「アスランさん…ありがとう御座います。…皆もありがとね」

「…」
「キュッ!キュー!」
「……」








改めて、としみじみ言うアスランさんに、私も改めてアスランさんに何度目かのお礼の言葉を述べる

本当に、アスランさんには色々な面でお世話になった。アスランさんが居なかったら自分は此処まで頑張れる事なんてしなかったし、ポケモンマスターにたどり着く事すらも出来なかった。どれだけ彼は私に期待し、手を回し、投資してくれたのか―――本当に、感謝の言葉が尽きないくらい



私の左右には蒼華と刹那、肩には時杜に頭には風彩、膝の上で甘える桜花、後ろに控える朱翔、影の中に潜る闇夜。他の子達はリビング内で思い思いに自由に過ごしている(あ、身体の大きい轟輝は別ね


嗚呼、本当に平和だ

この平和に期限があるだなんて―――あまり想像したくない








「それでミリ君、君はこれから…どうしていきたい?」

「どう、とは?」

「ポケモンマスターはチャンピオンよりも地位は高いのは知っているね?」

「あ、はい。…支部の幹部長以上の地位になっていくのも、総監から聞いています」

「そうだ。ポケモンマスターは私以上の地位で、プロ以上だ。ポケモンマスターになると自動的にチャンピオンは辞退する事になっていくのも、知っているね?」

「………はい」








ポケモンマスターはチャンピオン以上の地位で、アスランさんの幹部長以上の地位

本部直属になるので支部管轄下のチャンピオンではいられない。勿論、ポケモンマスター保護の名目でホウエンに所在を置く事は許されない。故に私は、私達は嫌でもアスランさんとお別れをしなくちゃいけなくなる

…アスランさんは、知っていたのかな。こうなる事を、離れてしまう事を。総監から話を聞いてからずっと疑問に思い続けていたけど、純粋に喜んでくれるアスランさんの姿を見る度に聞くにも聞けない

きっとこの先―――私は分からないまま疑問を迷宮入りにさせるのだろう。知らない方が、幸せな時があるから








「………なので、私は最期にホウエンリーグチャンピオンとして、サイユウシティでリーグ大会を開催しようと考えています。最後の仕事として、新しいチャンピオンに…あのチャンピオンマントを託したい。そう考えて居ます」

「そうか…なら私は全力で君をサポートするよ。思う存分、悔いのない様にね」

「はい。最後までお世話になります」









総監は一年間の束の間の猶予を与えてくれた。その間で全ての決着をつけろ、悔いの残さない様に―――と

チャンピオンとして悔いの残らないやり方といったら、一つしかない

半年間予選選抜で抜き出したトレーナー達にリーグ大会に出場させ、競ってもらう。そして、一年間共にしてきたチャンピオンマントを、新しいチャンピオンに託す事

その仕事が終わった時こそ、私は真のポケモンマスターになる








「それから、リーグ大会を終わらせたら…」

「シンオウに戻って、皆と約束を果たしたいと思っています。聖蝶姫として、ポケモンマスターとして。……でないと、ハリセーン飲まされそうですからね、フフッ」








皆と交わした約束

叶う事を夢見て今まで頑張れた、約束

シンオウに戻ったら皆と再会して、束の間の自由を約束を果たす為に使いましょう。交わした皆の約束の数はたくさんある。きっと楽しい毎日を過ごす事になるんでしょう

あれから一年―――きっと向こうも変わっているはず。一年という歳月は短い様で内容はガラリと変わっている事があるから―――嗚呼、皆との再会が本当に楽しみだよ




―――もう、会えないかもしれないけど










「………………寂しくなったらいつでも帰ってきなさい。君はもう、私の娘だ。君の帰る家は、此処だ」

「!」







私の考えていた事を察したのかは分からない

けど――――心夢眼で視たアスランさんの表情は、寂しそうだけど愛情に満ちた優しい笑みを浮かべていて




―――――私はきっと、この時浮かべたアスランさんの表情を忘れる事はないだろう








「…アスランさん、本当に…ありがとう御座います」














たとえ別れる事になったとしても

私はもう、アスランさんの"娘"

紙切れ一枚の繋がりだとしても、心の絆は確かなもの





私の居場所は此処

私達の帰る場所は、アスランさんの元





今まで帰る場所も自分の居場所が無かった私からしてみたら、それだけでも十分過ぎます

だからこそ守ってきてよかった

仮面を被ってでも守り切った日常も

ホウエン地方も、アスランさんの笑顔も――――








「これからもっと、忙しくなるよ」








もう、後戻りは出来ない

私は身を引き締める思いで次のステップへと臨むのだった














リーーン…






何処かで鈴の音が鳴った








(まだ誰もその音には気付かない)



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