予想外な事ばっかり 意外性な事ばっかで 逆に楽しいね Jewel.37 ダニエルさんとルイスさんと自分達の地方自慢話に華を咲かせ、穏やか一時を過ごした後――――私達は決勝戦の為にフィールドへ立った 私、ダニエルさん、ルイスさんという三人での決勝戦は誰かが確実に余る。二人なら分かるけど三人でどうやって分けるのだろうかと思っていたら―――流石ポケモンマスター認定試験、私の予想を斜め上を越える方法を選んできた 決勝戦は昨日の試合と同じ場所 しかしなんと、Y字型フィールドになっていたのだ 百歩譲ってY字型フィールドなら三人で対戦が出来る。効率は良い。しかもバトル形式はトリプルバトルという予想外な組み合わせに、私達三人は驚きを隠せなかった 確かにある意味では、余興として楽しめて面白いバトルフィールドにバトル形式だとは思う。聞いた事は無いバトルだけど、余興に乗っかって争うのも悪くはない。他の二人も同じ考えだったらしく、私達はすんなりとY字型フィールドへ足を運ばせた 使用ポケモンは昨日と引き続き六匹まで。ポケモンの交替は無し。手持ちのポケモンが戦闘不能になったらバトルは終了 ダニエルさんとルイスさんはさっそくといった様子で高らかとボールを投げる ボールが開き、光放たれた彼等自慢のポケモン達 ダニエルさんのポケモンはニャオニクス同様に見た事の無いポケモンだった。でも有り難い事にモニターにポケモンの名前が表示されていて、「ブリガロン・マフォクシー・ゲッゴウガ」とあった。ハリネズミがでっかくなったのがブリガロン、キツネが二足歩行したのがマフォクシー、カエルが忍者になったのがゲッゴウガ……うーん、こんなポケモンがカロスにいるんだね。御三家の進化系かな? ルイスさんのポケモンも、チラチーノやダニエルさんの持つポケモン達同様に見た事がないポケモンで、モニターには「クリムガン・ワルビアル・ローブシン」とあった。…ど、どれもこれも厳ついワルそうで濃いポケモンだ…爽やかな印象を受けるルイスさんにすっごくミスマッチ…チラチーノがいても全然中和されてない… 「さあミリ君、私達はポケモンを出した。君のポケモンは何を出す?」 「俺は貴女が盲目だからといって手加減はしません。まぁ、貴女の事ですから最初っから分かっているかと思いますが」 「ご心配には及びません。盲目だからと甘く見てもらうとこちらも困りますので それにもう―――貴方達に挑む子達は、決まっています」 私の隣りにいた――――蒼華と時杜と刹那 彼等は私の言葉と共に、瞬く間にフィールドに立ち、戦闘態勢に入っていた 「ほう、やっとその三匹を出してきたか。昨日は姿を見ても実力を確認すること叶わず終わってしまっていたからな。楽しみだ。…まぁ、君達を勝たすつもりは鼻から無いがな」 「ガロロ…!」 「フォクシー!」 「ゲゲゲッ!」 「私達の方も負けませんよ。イッシュ代表として、ここは是非勝たせてもらいます」 「ガァアアン!」 「ビシャアアッ!」 「ッブシン!」 「二人の胸をお借りする気持ちでこの勝負、勝たせてもらいます。どうぞよろしくお願いします」 「…」 「キュー!」 「……!」 皆、やる気満々だ むしろ殺る気満々ってね メラメラと闘志が燃え上がっている。ダニエルさんもルイスさんも、彼等の手持ち達全員も 蒼華と時杜と刹那も久々の戦闘と、久しく現れなかった強者相手に心が踊っているのを感じた。あの平和主義な刹那でさえ楽しみだといわんばかりのオーラを纏っているから、私としたら三匹の気持ちがとても嬉しいばかりで 私はニヤリとほくそ笑む 『これよりポケモンマスター認定試験トーナメント戦・決勝戦を開始します』 二人はまるで分かっていない 蒼華と時杜と刹那を指名した意味を 彼等がフィールドに立つ事こそが、既に勝敗が決まっているという事を 『――――バトル開始!』 このバトルを、楽しみましょう 蒼華と時杜と刹那のライバルに相応しいか、見極めながら ――――貴方達はこの私の眼に届くくらい、闇をも照らす強い光を見せてくれるのかしら 「さぁ!封印されしその力、我が名の元に解き放て! 清流の風、紅蓮の渡り人、沈黙の守人 蒼華!時杜!刹那! Hatch everything to nothing!」 壮絶なバトルが始まった * * * * * * 「―――――あぁ、私だ。今こちらは認定試験の決勝戦に入った。中々素晴らしいバトルを繰り広げられている。見応えのあるバトルだ」 誰かと電話するリチャードの姿があった 「といっても、勝者は決まったもの同然というべきか……あぁ、なに、こちらの話だ。そうそう、アイツの様子はどうだ?ちゃんと修業を怠ってないか?……そうかそうか、なら大丈夫だな。…ハッハッハ!確かにいつ首狩られるか分からんからなぁ!肝に銘じておくよ。何か言われても適当にあしらっといてくれたまえ」 流暢に電話先の相手と話しつつも 中継で流れる、別会場にて行われているポケモンバトルに出ているポケモン―――色違いのスイクンとセレビィを、鋭い眼光で静観していた 「そうそう、面白い話があるのだよ。…といっても現段階じゃまだ確定してないから正式に話せるものではないがね。少なくともアイツが喜びそうな話なのは確かだ。勿論、お前にもな。正式に話が決まり、アイツが修業を終えて戻ってきたら、改めて私の口から話そう。といってもまだ修業の期間は一年あるけどな。ハッハッハ! ―――それまでゼルジースの事は頼んだぞ、ガイル」 ガチャン… 「いにしえの再会、か…………本当にソレが実現してくれたらリーグ協会としても"あの一族"としても、彼女を歓迎しなければいけないのかもしれないな」 あの一族とは、一体… ―――――― ――― ― 昨日行なわれたY字型フィールドでのトリプルバトル、やってみての感想は「これは止めた方がいい。死人が出る」って言いたいくらいハチャメチャで危ないバトルに終わりました しかもトレーナーがトレーナー、ポケモンがポケモンだった為―――これがただのトレーナーが一般人が見ていたら、壮絶過ぎるバトルにお口あんぐり状態だったのは間違いない やっぱり余興程度で終わらせてくれてよかったと思う。そうじゃなかったら泥沼合戦までいきそうで焦る。とりあえずホウエンではY字型フィールドの案は却下の方向で決まりという事で さて、昨日の回想はそこまでにして また、次の日が経った 「あらー、此処は一体何処でしょうか」 最終難関試験を迎えた今日この日 今日の最終試験はポケモン使用禁止という事もあり泣く泣く蒼華達やアスランさんとお別れした後、本部の案内を受けつつ眼の見えない私の為にとルイスさんのエスコートを受けながら―――小型ジェット機に乗り込んで、早数時間が経過していて 当然私の眼の代わりになってくれていた蒼華達はいないので、筆記試験同様に私の目の前は真っ暗だ。自分の力と感覚を研ぎ澄まさせつつも、ルイスさんの腕を組んでいる事でなんとかこの状況を理解しようとしていた とりあえず"何処か"に下ろされたのは分かる。優しい風が吹き、樹々が揺れる音が聞こえてくるという事は、近くに森でもあるのかもしれないし、もしかしたら目の前に森か林があるのか…川のせせらぎも遠くからかすかだけど聞こえてくる うーーん、つくづく眼が見えないのは不便でしょうがないよ。マジになって朱翔みたいに波動を使ってみるのもアリかな? 「何処かの島、だな…目の前には広場、その先は森がある。手入れはされていないな。足元には気をつけるんだよ」 「はい、ありがとう御座います」 「ほう。一見ただの森に見えるが…ポケモンマスター認定試験の最終試験に選ばれた場所だ、何が起きてもおかしくはなかろう」 「ポケモンを所持せず、こんな場合に連れてきて、一体どんな事をやらされるのか……せめて自分の命の保証が約束される範囲だったらありがたいんだけどな」 「ご安心を。私達本部が貴方達をしっかりお守りしますので、命は必ず保証しますよ」 後ろから、ジェット機に同席していた案内人の方の声と 何処からか湧いてきたかの様に現れる、複数の気配 「皆さんのご察しの通り、此処がポケモンマスター認定試験最後の試験です」 「…私達を、この森に単身で行かせる事には間違いないのか」 「はい。貴方達には単身で、順番ずつこの森の中に入ってもらいます。勿論、私達は貴方達の身の危険がないように近くで監視させてもらいます」 「ではこの島は、どんなポケモンがいる島なんですか?」 「小さくか弱いポケモンもいれば、巨大で凶暴なポケモンなど幅広くいます。人間の手が一切加えられていない、まさに野生の島です。名前は勿論、ありません」 「へー」 「それでは改めて、貴方達にポケモンマスター認定試験最後の試験を発表します 貴方達はこの森に入り――――どれだけこの森に住むポケモン達を従えるか、その数を競いあってもらいます」 あらまあ 楽しそうだね (呑気に話を聞く私の隣で)(ダニエルさんとルイスさんがビシリと固まった) |