胸を借りるつもりで

貴方達に、挑戦しましょう





負けるつもりは、ありませんから










Jewel.36













ポケモンバトルトーナメント戦

午前11時から、ポケモンバトルが始まった





本部の案内人に二人、また二人と呼ばれていき――――控え室にある備え付のモニターに映し出されていたのは、圧巻するくらい白熱したバトルが繰り広げられていた

やはりこの認定試験に選ばれただけだって、彼等の実力は群を抜いて素晴らしい逸材だった。トレーナーも素晴らしければ、彼等の下で戦うポケモン達も然り。ポケモン達の個々の能力も当然素晴らしかったけど、やはり彼等の目覚しい努力の結晶が積み重なって出来た実力そのものだと感じた。まさに熟練、まさにベテラン。互いに引けを取らないバトルは、今まで視てきた私のバトルの常識を遥かに上回るものだった。強過ぎやん

9人もいるとなれば、出身地方がそれぞれバラバラ。ホウエンは私だけで他はカントーとジョウトに数名、イッシュというミレイの故郷の地方だったり、後はカロスという初めて聞く地方の出身者もいた。当然彼等の所持するポケモンもバラバラで、初めて見るポケモンも何匹かいた。ポケモン図鑑を開いて確認したけど対応してなかったみたいで表示されなかった。残念

6対6のポケモンバトル。流石に六匹、しかも高レベルのポケモンにほぼ同レベルの実力者同士のバトルとなれば勝負は簡単に着く事は難しい。一人の勝利にに掛かった時間はそれはそれは長く―――私達がバトルする時にはもう、空はもう日が暮れ、うっすらとキラキラ星が輝きつつあった








――――ドカアアァアアンッ!






「サザンドラ!ルカリオの動きを封じろ!隙を与えるなよ!りゅうせいぐん!」

「躱しなさい朱翔。相手の動きをよーく感じるのよ、はどうだん!」

「ガァアアッ!」
「ばう!!」








初めて視たポケモン、初めて戦うポケモン

素晴らしい実力を兼ね備えた彼等対戦相手に、私達は一試合一試合全力でバトルに臨んだ

手持ち達の皆は異空間の中でモニターに映る彼等の試合を見て、メラメラと闘志を燃やしていき、彼等に負けてたまるかとばかりに奮闘してくれた

一筋縄ではいかなかった。今まで私達が戦ってきた相手のレベルがちっぽけで、今戦う相手とのレベルがあまりにも違い過ぎたのが嫌でも思い知らされた。皆も戦っていく中で感じたはず。それでも皆は果敢に戦ってくれた、頑張ってくれた

私も私で―――久しく感じていなかった高揚感に心を踊らせた









「さあ、フィニッシュを決めなさい!








 ――――はかいこうせん!」









――――ドォォオオオン…








少なくとも私は

彼等とのバトルを楽しんでいた








「勝負あり!エントリーナンバー10番、決勝戦進出を許可します!」

「ありがとう御座います」

「…」
「キュー!」
「……!」

「ばうばう!」








さあ、今日はゆっくり休んで

明日の決勝戦も頑張ろう




―――――――
――――
――







次の日が経った







「此処で会えたのも何かの縁だ、互いに自己紹介をしようではないか。私の名はダニエル・キース、歳は今年で60になる。出身はカロス地方のミアレシティ、相棒はこのニャオニクスだ。宜しく頼む」

「ニャオ!」

「では次は俺で。俺はルイス・カーテス、歳は今年で48になります。出身はイッシュ地方のライモンシティ、相棒はチラチーノです。気軽にルイスと呼んで下さい」

「チーラ!」

「私の名前はウルシバ・ミリです。ミリと呼んで下さい。歳は18になりました。出身はカントー地方のマサラタウンですが、ホウエン地方代表で出場しました。相棒はこの子達です。スイクンの蒼華、こっちはセレビィの時杜にミュウツーの刹那です。若輩者で御座いますがご指導頂きたいと思います。以後お見知りおきを」

「…」
「キュー!」
「……」








昨日―――決勝戦に駒を進めた私達は、他のブロックで決勝戦進出した二人のトレーナーと対峙していた

今日の決勝戦、もう誰も脱落する人がいない事もあって私も含め目の前の二人も心の余裕が出来たのか、心穏やかに話を振ってきた



ダニエルと名乗った男性は、ポケモントレーナーに分類したら「ベテラントレーナー」、和服に身を包ませた威厳を携えたシンオウ幹部長に近い渋さを感じさせる人だ。厳つい風貌もあってニャオニクスというポケモンが無駄に可愛く見えてしょうがない。なにあのニャオニクスって子めちゃめちゃ可愛い

ルイスと名乗った男性は「エリートトレーナー」、爽やかな清潔感を持ち人当たりの良さそうな、けれど心に熱いモノを秘めていそうな人。足元にいるチラチーノってポケモンがふわっふわしていてすっごく可愛い。ふわっふわ触りたいふわっふわ

こんなに可愛い姿をしていたところで、実際に決勝戦まで進ませた屈強なポケモンに間違いはない(二匹が蒼華達の存在に圧倒されつつあったけど)。相手も同じ事を考えていたらしく、興味津々と蒼華達を見ている

私はクスリと笑う






「貴方達との勝負、決勝戦を迎えるだけあって一筋縄ではいかないみたいですね。ニャオニクス、チラチーノ…初めて見るポケモンですが、可愛らしい姿をしていても実力は御墨付きですからね」

「そちらも見た事ないポケモンを従えていますが、バトルに出していないとなれば実力は未知数…しかし、俺のチラチーノが圧倒されているとなれば…フッ、君こそ一筋縄ではいかないみたいだ」

「お互いに実力は一緒。余興の為とはいえこの決勝戦、正々堂々と勝負をしようではないか。互いに、悔いの残らぬようにな」

「「はい」」










彼等が地方でどういう立場で、どんな覚悟で此処にいるかは分からない

けれど―――きっと私達は同じ立場で、同じ覚悟で此処にいるのは確か。負けられないのも、向こうも同じ



そう、喩え余興とはいえこの決勝戦も――――ポケモンマスターになる為にも必要な、負けられない戦いなのだから







「そういえば、イッシュ地方にはヒウンアイスとやらが有名と聞くが、それはまことに美味なのか?」

「美味しいらしいですよ。ヒウンアイス、人気すぎて俺まだ食べた試しがないんですよ。毎日行列で…もし機会が恵まれたら挑戦しようかと思ってはいます。ダニエルさんもイッシュに訪れたら是非食べてみてください。ヒウンシティだけの限定アイスですから」

「ヒウンアイス…美味しそう」

「ほう、では機会に恵まれたら頑張って並ぼう。こちらのカロスではシャラサブレとミアレガレットが有名だな。シャラサブレとミアレガレットのつめあわせは鉄板さ。まだ食べた事がないのなら覚えていて損はないぞ」

「シャラサブレとミアレガレット…いいですねぇ。食べにいこっかな」

「是非来るといい。あと他には―――――」












決勝戦が始まるまで、私達は故郷にある有名なお菓子の話に華を咲かせていたのだった







(いつか行ってみよう)(知らない土地へ)


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -