さあ、忙しくなるよ!

今の内にお仕事を片づけるよ!















Jewel.32













アスランさんから認定試験の話を頂いてから、私の日常は慌ただしくなった






認定試験を受ける前提で今のやっている仕事を確実に全て終わらせる必要があり、また私が率先して行なっていた予選選抜試合のリーダーをロイドに一任し引き継ぎの手続きを行なったり、遠征の予定を前倒しにしたりとそれはそれはもうエネコの手も借りたいくらい忙しい毎日を繰り返してきた

勿論、まだポケモンマスター認定試験の事は内緒の話になっている為―――ロイドを含めた四天王、そしてリーグ従業員達の皆さんがどうして私がそんなに忙しなく動き回る理由が分からずといった様子だった。怪しんでるなぁと思っていても気にしなかったけどね!

いずれ発覚する話。改めて皆の前で発表した時の反応がすっごく楽しみだよ







「ガァアア!!」
《お前らァッ!修行だ!!俺が直々に相手してやらァ!!》

《全てはマスターの為に!マスターに栄光を捧げる為にも今より強くならねば!!》

《今回ばかりは私も修行をしないと示しがつかないな》

《久しく腕がなるな…!》

「ふりり!」
《ボクも頑張るよー!》

「ミロー」
《こんなチャンスを物にしないと!私もしっかり修行をします!》

「キューン…!」
《妾も共に行きますれば…!》

「チュリチュリー!」
《おにいちゃんおねえちゃんがんばってー!》

《私、精一杯頑張ります!》








《皆張り切ってますね!》

《我等も後で仲間に入れてもらおうか》

「…」
《久しく稽古でもつけてやろう》

「おねーさん嬉しいなぁ」








アスランさんから話を聞いた子達(連れ添いメンバー)はそれはそれはもう大喜びで、帰宅してからも残りの子達(お留守番メンバー)にさっそく説明し、大喜びのままドンチャン騒ぎなったのは記憶に新しい

それからはというと皆楽しそうに「修行だー!」といって轟輝と朱翔を筆頭に毎日修行三昧。バトルをあまり好まない子達も率先と参加しているから、よほど嬉しかったんだなぁとおねーさん思うばかり。裏庭が爆発爆音爆風で大変な事になりつつあったけど、なんとも微笑ましいものだった。元気だなぁ←






「修行に行く前に、ちょーっとコレに目を通してくれるかな〜?」

《はい!僕がやります!》





アスランさんから頂いた、十数ページにも及ぶ分厚めの書類。名乗りを上げてくれた時杜に私はありがとう、と言いながらソレを渡す。受け取ったソレを時杜は慣れた手つきで念力で書類を浮かせ、一枚一枚丁寧にページを捲っていく

心夢眼で浮かぶ光景に、私はふむふむと内容を読んでいく





「オダマキ博士にナナカマド博士……あ、アスランさんとリンカさんの名前発見。…カラシナ博士ってシロナのお祖母さんだよね?………コウダイさんにジンさんに……あ、ダイゴのお父さんの名前まで!」

《いっぱいいますね!》

《それだけ私達に期待してくれているんだな》

「まさかこんなにいるなんてね。あと知っている名前は………あ、サラツキ博士もある。名前しか知らないけど、ありがたや〜」








アスランさんから頂いた書類

それは私をポケモンマスターに推薦してくれている多くの有名人の方々の名前が記されていた

地方の博士、地方の時の人、地方の著名人、権威の人達―――知っている人もいるけれど、殆ど知らない名前の人達ばかり。何人いるんだろうコレ。うーん、分からん。きっと私が知らなかったり気付かなかったりするだけで、実は凄い影響力を持つ方々なのだろう。こんなに凄い(のかもしれない)人達に私達は認められて、背中を押してくれている。彼等の期待に答える為にも、負けるわけにはいかないね

アスランさんから頂いたのは、これだけじゃない








「…"ウルシバ・ミリ"、かぁ……思わぬ産物を手にしちゃったよ」









その一枚のは、戸籍を示すモノ

ただの戸籍なんかじゃない―――正式に、私はアスランさんの"養女"として戸籍に入った事を示す大切な紙

総監のご好意で第一関門をパスしてくれるとはいえ、当日どうなるかは分からない。念の為だとはいえ、アスランさんは進んで私を養女として迎え入れる手続きをこの数日の間で(いつの間にか)取ってくれていた

(今更知った事だけど)アスランさんの姓は「ウルシバ」。漢字で書くと「漆葉」。ウルシバ・アスラン―――この名前がアスランさんの本名。そのアスランさんの養女になると言う事は私も「ウルシバ・ミリ」になるわけで

この世界に来てから軽く一年が経つも、私は無戸籍だった。気に入らない事に、緑色の髪をしたあのロケット団の口から既に耳にしていたし(イラッとして沈めてやりましたけどね!)、トレーナーカードだけで正直大丈夫なのかと疑問と不安はあったから――――けれど、これからは違う

私は本当に、アスランさんの娘になったんだ

そして、私は本当にこの世界の住人になれたんだ!



ポケモンマスターの称号をもらえるよりも、コッチの方が私としたらすっごく嬉しかったりするんだけど……はりきって修行している子達の手前、内緒にしておくとして

せっかくアスランさんが此処までしてくれたんだもん!俄然やる気が出て頑張れるってものだよね!







「…フフッ」

「…?」

「ううん、なんでもない。……時杜、ありがとう。もう大丈夫だよ」

《はーい》

「そろそろ皆の修行に加わりますか。……久しぶりに私も参加して皆に稽古でもつけてあげちゃおっかな!」

《や、ミリ様流石にそれはマズいです!》

《主は大人しくしていてくれ》

「えー私が加わったら確実じゃない?ちょちょいのちょいでもれなく皆を軽く翻弄してあげちゃうよ!」

「…(ベシィィッ!」

「あたっ!?なんで!?」
















今はまだ言えない

まだ、言わない


いつか、アスランさんの事を―――「お父さん」と呼べる日が来る事を

私は切に願うばかりだ






――――――――
――――――
―――










ポケモンマスター認定試験が何故、他言無用で秘密にしないといけないのか。それは至って簡単でシンプル―――多大な混雑と不正を招くのを阻止する為だという話だ

全ての地方の有力候補が集い、世界中の観客が列を連なっていけば色々な面で混雑するのは当然で、昔こそは賑わいをみせていたそうだけどその反面裏で事件が起きたり騒動が勃発したり、裏金問題など不正行為も続出ていたりしていたから、それはそれは大変な事が起きていたらしい。何処の世界も色々あるね

事態を重く見た先々代の総監は観客の出入りを禁止し、またポケモンマスター認定試験に携わる全国放送を禁止した。ポケモンマスターを輩出する事はリーグ協会として最も大切な行事だからこそ、静粛で厳粛に行ないたい。約五十年サイクルで行われるポケモンマスター認定試験…今となればその規則のせいもあり、幻の存在になってしまったけど

知らされるのは幹部以上のリーグ関係者に有権者や著名人の方々。理由はポケモンマスター認定試験に出場出来るトレーナーの選出及び推薦を行なってもらう為。勿論、彼等にも他言無用という事で口止めをしてもらう。民間人に知られるのは改めてポケモンマスターが決まった、その日に。特に大々的に放送されるのはポケモンマスターになったトレーナーの発祥地や活動地――――民間の人達からしてみれば「いつの間に!?」って感じだよね。そんな流れでいいのだろうかとは思うんだけど…まあいいや。うん













「はい、そんなわけで。私、ウルシバ・ミリはポケモンマスター認定試験に行ってきます」

「「「「「えぇええええええ!!!???」」」」」







認定試験間近になり、アスランさんから口外解禁されたという事で――――早速、私はリーグの従業員達全員の前でポケモンマスター認定試験に出場する旨を伝えた

皆さんそれはそれは、もうそれはそれはびっくり驚き、それはそれは大騒ぎになるくらい喜んでくれた。広場は大歓声大声援で響き渡り、流石の声量に耳をやられるかと心配しちゃったけど

四天王の皆にも改めてお話した。他言禁止の為今まで黙っていてごめんなさい、と。皆話を聞いて最初はすっごく驚いていたみたいだけど、最近忙しなく動き回っていた私の姿を知っていたから、すんなり事態を受け止めてくれた。「だからでしたか。私に予選選抜試合のリーダーを任せたのは」「あら、まあ。おかしいとは思っていたのよね」「お前さんがポケモンマスター…儂が生きている間にポケモンマスターが生まれるのかぁ…」「キャーーーッ!ミリちゃんんんんすごいよおおお!!」言い方は様々だけど最後は四人は私の背中を押してくれた







「ポケモンマスター認定試験は、私とミリ君の二人で行ってくる。認定試験は一週間、その間は当然私達は仕事の席を外す。私達が不在の間、リンカ副幹部長を中心にリーグを運営してもらいたい」

「皆さん、私達は必ず帰ってきます。そして私は、必ずポケモンマスターになって帰ってきます」

「…」
「キュー」
「……」

「帰ってくる日まで、」

「リーグの事を、よろしく頼んだよ」

「「「「「「はい!!!!」」」」」」













――――そして、時は流れ



ポケモンマスター認定試験日、

今日に迫ったこの日



遂に私達はホウエンを離れ、ポケモンリーグ協会本部へと向かう












「ミリちゃーん!今日だねポケモンマスター認定試験!んもうやっぱりミリちゃんは凄いよ!枠の中に入るだけでも超ど難関なのに…キャーミリちゃんサイコーッ!頑張ってね、ミリちゃん!私、応援しているから!」

「ミリさん、わたくしも応援していますよ。貴女は最高のトレーナーです。わたくしは貴女がポケモンマスターとして戻って来る事を、願っています」

「行ってこいミリ。リーグは儂らに任せて、一発デッカイのかませてやれ」

「どうか気を楽に。私達は貴女の帰りを待っています。ポケモンマスター認定試験…頑張って下さい、我等がチャンピオン」

「皆…ありがとう。チャンピオンとして、聖蝶姫として、ポケモンマスターになってきます。それまで、リーグの事、ホウエンを宜しく頼みます」

「「「「チャンピオンのお心の侭に」」」」
















さあ、皆


準備はいい?



ぶつけにいこう

今、私達が出来る全てをもって








「さぁ、ミリ君。行こうか」

「はい!」

「…」
「キュー!」
「……」









ポケモンマスター認定試験

一体どんな試験なんだろうね



とても、楽しみだよ







(絶対ポケモンマスターになってやるんだから!)



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