表で輝いても

裏の影響は確実に蝕む



仮面の笑みが全てを隠す














Jewel.27













キラキラと輝く黄金の輝き

静かに妖しく光る銀色の光



輝かしいステージの上を金色と銀色の光が螺旋を回り、走り、水と炎が空中へ交差していく

本来なら水と炎は相性が悪く相殺しあって終わるはずなのに―――この二匹のイリュージョンは互いを打ち消し合うどころか、むしろ互いの手を取り合う様な絶妙なコンビネーションだった

歓声が、響き渡る





黄金のポケモン―――それは色違いのミロカロス

銀色のポケモン―――それは色違いのキュウコン




二匹は【金輝銀妃】と呼ばれていた









「フィニッシュ!」

「ミロー!」

「キューン…!」










キラキラ輝く二つの光

キラキラ煌めく二つの身体

ステージの上を独占せんとばかりの圧倒的パフォーマンス




ミロカロスは真上に向かって水の球体を放つ。これはミロカロスの技、みずのはどうだ。みずのはどうに向けてキュウコンは九本の尻尾に妖しい光を纏わせ、尻尾を振り上げて光を水の球体に放つ。これはキュウコンの技、おにびだ。水の球体の回りにおにびの光が妖しく回転し始め、水蒸気が発生すると同時にキラキラと淡い粒子が降り注いでいく

まるでカラオケにあるミラーボールみたいなその光景。観客はほう、と感嘆の溜め息を着き、また審査員も眼前の光景に見とれていた

回転していたおにびはやがて勢いを付け水の球体に吸い込まれた。すると水の球体は炎というモノを取り込んだ事で一瞬の煌めきと共に爆発した

爆発した球体はキラキラと淡い粒子と水滴を降らす事により―――――そこには、綺麗なアーチを象った虹が浮かび上がっていた


観客は盛大に歓声を上げた










「さあ水姫、炎妃。ごあいさつを」

「ミロー」

「キューン」








ミリはオレンジ色をしたドレスの裾を摘み、麗しく一礼を

左右に並ぶミロカロスとキュウコンも艶やかで美しく、ミリに習って一礼をした







ステージは金と銀の光で輝いていた



――――――
―――










グランドフェスティバル・コンテスト協会ホウエン本部

ホウエン地方発祥、且つ本部を此処ホウエン地方ミナモシティに置き、シンオウを始め日本を主とした地方に支部を置く。言わずとも知れてるグランドフェスティバル・コンテスト協会、通称GF・K―――十数年前に設立された本部は他地方の支部より壮大で風情があり、歴史を感じさせられる

此処に本部を置くだけあって、本部内はコーディネーターの人達で賑わいを見せていた。先程、丁度マスターランクを終わらせたのもあってか観客の人達で広場は縦横していた

普段の観客数よりも今回はさらに人数が多く、行列を成してまで人々が先程のコンテストに注目していたのは何故か――――答えは簡単だ。何故なら今回のマスターランクコンテストは、この地方の一番の人気者であるホウエンチャンピオンが出場していたのだから










「ミリ!!そこにいたか!探したよ!」

「あ、ミクリ!やっほー」

「…」
「キュー」
「……」







人々が縦横している広場を離れ、此処は関係者以外立ち入れ禁止の廊下の先

無事にコンテスト大会を終わらせ専属ジョーイに出場した二匹を預け、諸々の手続きを終わらせ待合室で腰を落ち着かせていたミリの元にミクリが現れた







「ミリ、おめでとう!これでユーも晴れてホウエン認定トップコーディネーターだ!」

「ありがとう、ミクリ」

「しかしこうも早くマスターランクを数週間で全部制覇するとはね。流石、シンオウ認定トップコーディネーターだ。感服するよ」

「シンオウでの演技内容と若干違っていたけどこっちのコンテストもやり甲斐があって楽しかったよ」

「それはなにより!今回ジムにいたから最後のステージを見納めする事叶わなかったが…それは録画した映像を見させてもらおう。美しさコンテストのミロカロスとキュウコンのパフォーマンス、実に楽しみだ!」

「わざわざ来てくれたんだ。フフッ、しっかりあの子達の演技を見ておいてね」

「もちろん!…お、そうだ近々ダイゴとナギの四人でパーティーを開こうではないか!ダイゴの奴だ、それはそれは盛大にもてなしてくれるはずさ!」

「それは嬉しいねー。でも気持ちだけ頂くよ。私を祝うよりも…その時間をもっとナギの為に使ってあげて?」

「……そう言われてしまうと何も言えなくなるじゃないか。全く…………(ボソッ)こちらとしたらさっさとダイゴとくっついてもらいたいものを」

「……(くぅぅぅ」

「あらあら、刹那ちゃんお腹空いちゃった?もうちょっと待っててね。………あ、ごめんミクリなんだっけ?ダイゴ?ダイゴがどうしたの?」

「………、つくづくユーも罪な人だ」

「え?摘み?」

「…(ベシッ」

「あいた。蒼華ちゃん今そこ叩くところ?」

「…(ベシベシッ」

「あたたた」

「…なんでもない、聞かなかった事にしたまえ。そうだな…ダイゴに思いっきり美味しいレストランにでも招待してもらいなさい。それくらいダイゴにさせてやってくれ」

「うーん、言葉だけでも十分なんだけど…分かった。その時がきたらお言葉に甘えようかな」








のーんびりとミクリの言葉の裏に気付かないミリに紐ではたくスイクン、苦笑を漏らすセレビィと腹の虫を包み隠さず鳴らすミュウツー

久しく会わなかった友人達の変わらない姿にミクリはやれやれと笑う

ナギという名前の出た女性はヒマワキシティに住む飛行タイプの使い手のトレーナーであり、ミクリの恋人だ。ミリとミクリが出会って暫くして出来たミクリの恋人―――嗚呼懐かしきかな、「恋人」になる前はよくミクリはミリに恋愛の相談をしてはダイゴにからかわれていた事を。今では懐かしい思い出でもあり、ミリの的確な助言によって実った恋。素敵な話ではないか

勿論ミリとそのナギという女性は対面済みであり、今では良き友人だ。ダイゴを含めミクリとミリが会っている事は認知済みでもある為、浮気される心配は無い。むしろ最近はミリの配慮もあってミクリと会う際は必ずナギや第三者(※ダイゴ)がいての再会をしている。ナギもミクリの愛を信じているしミリの性格や自分への配慮、そしてミクリを恋愛対象としてこれっぽっちも見ていない事も知っていた

むしろナギもミクリも早くダイゴとくっついてもらいたいのが本音。中々行動に移さないダイゴを内心ヘタレてんじゃないかともやもやしていた

気付きもしないミリもミリだが









「これからミリはどうするんだい?…しばらくこちらでコンテストを続けるのかい?」

「ううん、残念だけどリーグの方を専念するよ。安定してきたとはいえまだまだ気が抜けないからね」

「そうか…残念だ。………そうそうダイゴの奴、つまらなそうにしていた。最近ちゃんと顔を出してるかい?」

「え、うーん…いつ顔出したっけ?」

「キュー」

「あぁ、そっか…もう軽く二ヶ月顔を出してなかったんだ」

「それはいけない。たまにはいつもの様に顔を出してやってくれ。アイツも喜ぶ」

「………そうだね。時間があった時にでも」









けれど仕方無い事も分かっていた。片や御曹司の副社長、片やチャンピオンという分厚い壁は中々壊す事は出来ない事を。ダイゴ自身、今の関係に満足している事も





久しく顔を出した時の暇そうにしてつまらなそうな、こちらと分かった時のガッカリした顔をした友人を思い出しながら、その友人の為にミクリはミリにダイゴに会う様に口添えを忘れない

なんとも言えないと表情を曇らせるミリ。歯切れの悪い、憂いを帯びた光の無い瞳――――その顔を見てミクリはよほど今の仕事が忙しいんだろうと悟った。自分よりも年下でまだまだ遊び足りない年齢なのに大変なんだな、と思うも口には出さず「またダイゴにとびっきり美味しいケーキを用意しておく様に行っておくから」と言い、その場を後にしたのだった



























「ダイゴ…元気にしてるかな」

「キュー?」

「ううん、行かない。行って、奴等の被害が彼に降り懸かっても困るし…どんな顔して行けばいいかちょっと分からないところもあるからさ。それにダイゴ、鋭いから―――まぁ今日ミクリに会ったのは予想外だったけど」

「…」
「…キュー…」
「……」

「…上手く笑える自信がないんだよね」







――――この頃、既にミリ達はロケット団の襲撃にあっていた

そして、己に降り懸かる悪魔にもさらに苦しめられていて――――



徐々に徐々に、闇がミリを蝕んでいた








「さあ、水姫と炎妃を受け取ったら早く帰ろう。刹那もお腹が空いてるし、此処の人達に被害が回らない為にもね」






ミリは悟られぬ様に

仮面という笑顔を張り付けていた






(嗚呼、壊れていく)


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