離れていても絆は切れない

友達って、いいね















Jewel.07













プルルルル…


プルルルルルルル…




――――…ピピピピピッ






「――――…こちらはリーグ協会ホウエン支部。私の名前はホウエン支部情報管理部部長のアキラ、そちらの情報管理部部長との応答願います」


『こちらはリーグ協会シンオウ支部。私が、シンオウ支部情報管理部部長のアルフォンスです』

「アルフォンスさん、さっそくですがこちらとそちらのモニターに回線を繋ぎ映像を映させて頂きたい。貴方達に一目会いたいと言うお方がこちらに来ています。宜しいでしょうか」

『勿論、喜んで回線を繋げさせて頂きたい。暫くお待ち下さい、回線を繋げます』

「アルフォンスさんだー」

「…」
「キュー」
「……」







此処はリーグ協会ホウエン支部内部に置かれる、情報管理部が勤める情報管理室

目まぐるしい数のコンピュータやモニタースクリーンといった機材が沢山置かれている(それはもう選抜試験会場本部以上の圧巻といったらねえ)、ホウエンの全てに関する情報の中心部と断言してもいいそんな場所に、私達はいた






「本来なら、この様に他支部同士連絡を取り合う事はあまり好としないものなのですが…チャンピオンの頼みです。大目にみましょう」

「ありがとう御座います」

「…しかし、私としてみればつまらない意地の張り合いはせず、お互い仲良くしていくべきだと思うんですが、どうでしょう。こうして連絡を取り合う事すら許されなくなってしまった今の現状を、チャンピオンはどうお考えだろうか」

「いきなり難しいお話をぶっこんできましたね、アキラさん。…昔のリーグの事については、私は何も口を出すつもりはありません。しかし、今回を機にその冷戦という支部同士の意地の張り合いが無くなってくれれば、嬉しいですよね」

「意地の張り合い…フッ、本当にそう思いますよ。こんなねちねちと腹の探り合いなんかせず、友好をもって情報交換をしていけばリーグの為になるとずっと思っていたんですよね」

『…―――事の始まりは50年前。我々支部の上に立つ本部に良い印象を与え、実績を評価してもらうべく功績を積み上げていく。互いが互いを刺激し合っていった、しかしお互いを意識し過ぎた結果、いつしか互いの腹の探り合いをする状態にまでなってしまった。それこそ聖蝶姫の言う、支部同士の意地の張り合い…外国各地の支部はともかく、同じ日本の支部同士がこの様な現状では、なんの為の支部なのかと疑問を抱きたいところ。それこそ我々情報管理機関は何故他の支部の動きを見張らなければならないのか、とね』

「アルフォンスさん!」

『失礼、中々興味深い会話が聞こえたものだからつい口を出してしまった。…久し振りだね、聖蝶姫。声のトーンや話し方からして元気そうにやってくれていて安心した。さて、回線は無事繋がったから次は元気そうな姿を見せてくれ』

「チャンピオン、映像を映します」

「はーい」

「…」
「キュー」
「……」







カタカタとアキラさんがキーボードを操作し、エンターキーを軽くタンッと入力後、眼前にある大きなモニタースクリーンには久々に見る顔が映し出される

そこに映し出されたのは、向こう側の管理室の光景と―――…シンオウでお世話になった、ユリさんの旦那さんのアルフォンスさん

端整な顔立ち、綺麗な白銀色の髪、優しい色を浮かばす緋色と藍色のオッドアイな彼。いつにもましてハーフ顔のイケメンならぬイクメンお父さん(←)。スーツ姿で今まで仕事をしていただろう彼は、数ヶ月前と全然変わっていなかった






「お久し振りです、アルフォンスさん。お元気そうでなによりです」

「…」
「キュー!」
「……」

『あぁ、良かった。どうやら元気にやってくれているみたいで安心したよ。三強の子達も元気そうでなにより。……しかし聖蝶姫、少々寝不足気味なのかな?目の下にうっすらとクマがある。仕事を熱心に取り組むのはいいけど、体調管理には気をつけてもらわないと。それに前と比べて少し痩せた?それだけ多忙なのは分かるが…ユリも言っていたが、君はもう少し食べた方がいい。後は…―――』

「(噂には聞いていたが、なるほど。これが彼の観察眼…侮れないな)」

「(ひーっ!相変わらずこの人目敏いから困るよー!)え、えっと…アルフォンスさん!ユリさんは元気ですか?」

「(あ、チャンピオン話を変えた。よほど図星だったらしいな。…後でロイドさんに伝えておくか)」

『ユリかい?ユリなら相変わらず、元気にしている。君が居なくなってから、ユリもそうだし家の中も随分寂しくなった。…また帰ってくるといい、俺達はいつでも君達の帰りを待っている。勿論、君の友人達も君達を待っている』

「…ありがとう御座います。その日が来るのを楽しみに待っています」

「…」
「キュー」
「……」

「親しいんですね、彼と。話を聞く限り、チャンピオンはそちら側の人間と親しい間柄とお見受けする」

「アルフォンスさんご夫妻にはお世話になっていた時期がありまして。勿論、シンオウ支部の皆さんとはリーグ大会でお世話になった事もあったんですよ。今までそういうお話を人と話した事がなかったので、知らないのも無理ないですが……あ、アルフォンスさん。シロナは元気にしていますか?」

『あぁ、こちらのチャンピオンも元気にやってくれているよ。彼女はよく頑張っていると思っているよ、あの厳しいコウダイ幹部長の下で反発心と闘志燃やしながら慣れない仕事を頑張ってこなしている。中々根性があるよ、彼女』

「そ、そうですか。元気なら良かったです(反発心と闘志燃やしながらってシロナちゃん貴女って子は…)」

「(幹部長だけじゃなく、チャンピオンまでもが両極端…ここまで揃うと笑い話だな)」

『映像を繋げる作業中に彼女の方にも一報を入れておいた。彼女達も君に会いたがっている。恐らく俺の計算が正しければ、後3分25秒14でこちらに駆け込んでくるはずさ』

「あらあら」







相変わらず、先の事を計算して予測するアルフォンスさんに私は感服混じりに苦笑する

しかし本当に彼は侮れない。今日改めてしみじみ思う。一時期過ごしていた時はまだストッパー役だったユリさんがいたからまだよかったけど、この私がこうも簡単に見抜けられてしまうなんて

リーグに在籍していれば、他の支部の事も耳に入る事がある。シンオウ支部はホウエン支部にとってライバル的存在だと言ってもいい。何故、ライバルなのかはそこまで把握仕切れていないけど、まあとにかくこうした優秀な人材がこうして(色んな意味で)猛威奮っていたら誰もが注目し警戒しちゃうよね

彼こそは「白の鬼才」、「歩く情報屋」。向こうでは中々個性豊かなキャラクターらしく、癖のある存在だと聞く。私の知る彼こそはユリさんを愛するバカップル、家族を大切にする二児の父親だから、別の顔を知る度に色々驚かされるばかり。隣に立つこちらの情報管理部長のアキラさんも、既に彼に圧倒されている様子だしね

こりゃ大変だなぁー






『…―――さて、聖蝶姫。君の活躍はこちらまで聞いている。本当に、よく頑張ってくれているのはよく分かっている。けど…』

「分かってますって、アルフォンスさん。体調管理に気をつけろ、ですよね?大丈夫ですよ〜私、こう見えて結構頑丈で図太いんですよ〜」

「…(ペシッ」
「キ、キュー?」
「……」

「(頑丈、か…?)」

『……………。君とは、別の機会に話がしたいところだ。…そう、いずれ…近い内に』

「?」








ドタドタドタドタドタッ



ウィーン、バタン!

ドカッ、ガシャァァン







『ミリから連絡ですって!?』

『よく来てくれた、チャンピオン。…てか今何か物騒な音が聞こえたんだが、何も壊してないだろうね』

『いえ、情報管理部長。残念ながら多少被害が及んでます』

『あらあら。元気な事はいいことね』

『キャーッミリ!ミリよーミリーッ!やーん久し振り〜!会いたかったわー!アルさんちょっとどいて!ミリー!』

『うおおおっ!?』




「…3分25秒14…確かに来ましたね」

「やーんシロナちゃん久し振り〜!」

「…」
「キュー!」
「……」








何か意味深な顔で言い掛けたアルフォンスさんを余所に、スピーカーから何やら騒がしい足音と物騒な音が聞こえた後、

モニタースクリーンに、また久しく見る顔ぶれが現れた

金髪の長い髪、金の瞳を嬉しそうに輝かして画面いっぱいに映し出されたシンオウチャンピオンであり私のライバルだった可愛いシロナちゃん(あ、ちょっとシロナも痩せた?)。本当に嬉しそうに、満面な笑みでこちらに手を振ってくる元気そうな彼女を見ただけでもう癒されたよね!(手を振ってあげたらこれまた嬉しそうにキャピキャピしちゃって!)(おねーちゃんもうキュンキュンよ!←

そのシロナを追う様に後から現れたのは、シンオウ四天王のキクノさんと、以前私に本を読み聞かせてくれたゴヨウの姿

キクノさんは前からシンオウ四天王として在籍している人で、特設大会後にシロナの紹介がキッカケで出会う事に。穏やかな人で会話していくとこっちまで穏やかでのほほんとなってしまう可愛らしいお方(笑)。ゴヨウは前回のリーグ大会で準優勝まで登り詰め実力を認められ、四天王になった話を当本人から聞いたのは記憶に新しい。これまたシロナとゴヨウの会話が面白いったらね〜(ゴヨウはシロナのストッパー役ピッタリだよね)(いやぁおねーさん安心だよ!←)勿論、二人にはシンオウを発つ時にわざわざ見送ってもらった大切な仲間


シロナでいっぱいに映るモニターの隅に、あらあらとのんびり笑うキクノさんと呆れて溜息付いているゴヨウ。そしてシロナの勢いに負けて画面上からアルフォンスさんの姿が忽然と消える

うん、シンオウも元気そうでなによりです←









『もう!ミリ!連絡が遅いわよ!ずっとずっとずうううっっと待っていたんだからね!どうして連絡してくれなかったのよおおおおお(`ω´♯)!(ぷんぷん)』

『ちょっ、チャンピオン待っ、暴れないでくれない、か、ってΣうおおおっ!』

『『『部長ーーーッ!!』』』

『こっちから連絡しても『現在使われてませんー』ってこんなポケギアごときに私とミリの愛を阻んでくるしいいいい!もううううう!!』

『仕方無いでしょう、ミリさんも貴女と同じチャンピオン。毎日忙しい事は貴女が一番分かっているはずです』

『分かってるけど…ゴヨウだってミリからの連絡を待っていたんでしょ!お見通しなんだから!そうですよねキクノさん!』

『フフ、そうねぇ。微笑ましいわ〜』

『ほら見なさい!キクノさんもお見通しよ!観念しなさいゴヨウ!あなたもいい加減認めなさい!可愛い可愛いミリちゃんに会いたくてしょうがなかったってー!でもミリは私の可愛い子だからねー!あげないんだからー!』

『シロナさん貴女目の前にいるのはホウエン支部の方々がいるのを忘れられては困りますよ。いい加減静かに落ち着いて会話しなさい仕事疲れと寝不足でテンションが崩壊してますよ(一息』



「あはは、皆元気だね〜」

「…」
「キ、キュー…」
「……」

「…………」









…――――実のところ、私がこの場所で、こうしてリーグを通じて連絡を取り合ったのは今日が初めて

つまりデンジとオーバーは勿論、シロナといった近しい者達とは今まで連絡を取っていなかった事になる

シンオウで旅をしていた時に持っていた、ポケギア。本当はアレは私の物ではなく、ナナカマド博士からポケモン図鑑と一緒に借りた物だった。シンオウの旅を終わらせ、ホウエンに発つ前に本人に返した。向こうは私に譲るつもりでいたけど、私は遠慮した。確かに持っていれば便利なモノ、だけどそこまで必要性を感じなかったから。皆の電話番号は長年使い込んでいるマイ・手帳に記入済みだし(だけどなんか知らない番号がいっぱいあったんだよね)(全く記憶にないから書き直したけど)、ケジメとして皆との連絡を絶って新しい旅に集中したかったから

…まぁ、本音といえばあまりにも忙しくて連絡出来なかったのもあるけど←

それに今ポケギア持って無くても、その内ダイゴから新品のポケナビを頂くお話があるからね。貰ってから連絡…って考えたけど、一体いつになるのか分からないしこうして目の前の皆の反応見ちゃうとポケナビ待ってる場合じゃないのが目に見えるといいますか(笑)

やーんみんなもう可愛いんだからー







「…―――――無理に気を、使わせてしまったんだな。…こんな、大人の醜い争い事なんかに」

「え?」

「幹部長から直々に許可は得ている。…今日は時間が許す限り、久々の友人達の会話を楽しむといい。遠慮は要らない。向こうもきっと、それを望んでいる」

「…ありがとう御座います」






本当に、やっと仕事も落ち着いてきている。こうして連絡取れるのも、向こうに友人達がいて、そしてホウエンリーグを一から改正出来た賜だと言ってもいい

ホウエンとシンオウの架け橋

内情探り合う冷戦状態なんて、どうでもいいし今の私達には関係ない

今日がキッカケで、冷戦なんて止めてお互い手を取り合えたらいいね







「とりあえず皆、久し振り





 元気そうで、私は嬉しいよ」









さて、アキラさんの許可も頂いている事だから

時間いっぱい、楽しまないとね


私の居なかった故郷の話、たくさん聞かせてね










(ちょっぴり、ほんのちょっぴり)(故郷が、恋しくなったりしてね)



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