新生リーグ誕生

改正された、様々な物事


とても慌ただしい、毎日











Jewel.03













広大な海を渡り偉大な滝を登り、屈強で強敵なポケモンが住うチャンピオンロードを抜けた先にあるのは、チャンピオンロードの出口であると同時にサイユウシティの入口

今まで視界を遮り行く手を塞いでいた暗闇から解放されれば眩い陽射しが出迎え、フワリと吹き抜ける温かい風を一身に感じ、次に視界をうめ尽くすのは、一面様々で可憐な花が咲き誇るフラワーロード。フラワーロードを抜ける先にあるのはポケモンリーグ協会

ポケモンリーグ協会ホウエン支部。サイユウシティに拠点を置き、ホウエン地方最後の関門として聳え立つポケモントレーナーなら誰もが最後に辿り着く場所






『…―――ただ今より、リーグ大会予選選抜試験・午後の部を再開します。予約されている方は予約番号札を受付に提示し、係の指示に従ってください。繰り返します、ただ今よりリーグ大会予選選抜試験・午後の部を再開します。予約されている方は――――…』







ピンポンパンポーン。コミカルだが音響は何処か深く重みを感じさせるチャイムがリーグ内全体を響かせる

午後の部の再開を知らせるチャイム。このチャイムを耳にしたトレーナー達は腰を上げ、意気揚々とモチベーションを上げたり、仲間に見送られながらと各々受付に足を運ぶ。受付に集まったトレーナーは軽く十人近くはいるだろう。今日もまた随分な数だ

彼等はこの日の為にこの地にやってきたと言ってもいい

数ヶ月前にルールが改正された事により、リーグ大会出場券を目指し日々リーグにはトレーナー達で縦横した。数が数なだけに予約制とし、午前と午後に分かれて試験は開始される。無事に予約をゲットした多くのトレーナーは日を改めてまたこの地を訪れ選抜試験に備える。自分達の力を見てもらい、認めてもらう為にも。仲間との結束を強め強くなった自分達に今出来る最高の力を、思いを相手にぶつける為にも







…―――――ドオオォォォンッ…






リーグ協会外部にある、ドーム型の特設フィールド

各方面四ヶ所に設置されている壮大なスケールで行われているこの場所こそが、リーグ大会出場権を得る為に活気溢れるポケモントレーナーと、王座を守る四天王による壮絶なバトルが繰り広げていた







『…――――試合終了!キレイハナが戦闘不能になった事によりこの勝負、挑戦者の勝ち!』

『これより選抜試合を開始します。両選手、準備は宜しいですね?』

『試合開始!』

『それでは次の挑戦者はフィールドへ』







「…――――東ドーム選抜試験会場にて15番選手、四天王ミレイを破り勝利。ポケモンを回復した後、第三試合会場南ドームへ案内をお願いします」

「北ドーム選抜試験会場、挑戦者の受付番号とトレーナーカードを検出します」

「西ドーム選抜試験会場にて四天王ゲンジと28番選手との試合開始。これよりモニターに映します」

「南ドーム選抜試験会場、異常があれば速やかに本部に連絡を」








リーグ協会外部、ドーム型の試験会場にほど近い場所に健在する一層立派な建物の中

目まぐるしい数のパソコンの数と目覚ましいくらいの巨大なコンピュータのモニター画面、そして忙しなく動く従業員の姿、止まらない音と声の無双。モニター画面には各方面多面に映る様になっており、今現在行われている映像がリアルタイムに送られている


この場所こそが、各所で行われている認定会場を取り仕切る本部である


リーグ協会ホウエン支部本拠地とは別に位置付けられている建物。元々この建物はホウエンリーグ大会専用の建物で大会期間外は使われる事がなかったのだが、ルールが新たに改正されたことで大会会場が必要となった事でこの場所が必然的に抜擢される事になった。リーグ協会ホウエン支部本拠地、それこそリーグ内部からとの緻密な連携を計りながらこの選抜試験は穏便且つ安全に取り仕切られている


そして―――…








「午後の部の予約人数は14人…今日もまた随分と多いね。午前は確か18人もいたんだっけ。一試合に最高15分、効率良くやってるとはいえ、四人が何処までいけるか…今のところ異常はないね?」

「はい、その様な報告は受けていません。報告次第、すぐにでも連絡を」

「ありがとう、お願いね」

「はい!」

「…」
「キュー」
「……」







この選抜試験本部を取り仕切る、最高責任者

この人物こそが、最年少でありホウエンNo.1の実力を誇るホウエンチャンピオンのミリである


リーグの改正を率先に行い、新たな新生リーグを誕生させた第一人者でもあるミリ。チャンピオンという立場でも相当な多忙を極めるというのに、彼女は自ら率先して指揮を取っていた。相変わらずその瞳には光が無いが、光が無くても心の眼で全てを汲まなく見抜く。盲目であれ此処まで完璧に全てをこなす彼女の偉業はまさに舌を巻くほどだろう

リーグ改正により新たに加わったルール、「四天王・チャンピオンとの勝ち抜き戦を行い勝利した者・実力を認められた者に大会出場権を与える」。このルールを加えたのは誰を隠そうミリ本人。そうなれば必然的に企画者としてリーダーとして上に立つのも道理と言える。勿論、本人も進んで責任者の立場として身を置いた。チャンピオンの仕事をこなしながら合間を縫ってこの場所へ赴き、不慮が無いか確認し、指示を入れ、統率をする。時には今の四天王と同じようにフィールドに立ち、四天王を勝ち進んできたトレーナーを見定めながら牙を奮う。しかし、四天王の壁があまりにも強固故にミリがフィールドに立つ事は極まれなのだが



…―――――「彼等にも、私達と戦う機会を与えてあげたい」



これからまた忙しくなっていくのを分かっているのに、ミリは不意にそんな事を言い出した。そしてその言葉が全てのキッカケに繋がった

今のミリは誰もが憧れるチャンピオンとして頂点に君臨しているが、数ヶ月前まではちょっと有名なだけの只の一般トレーナーに過ぎない。一般トレーナーだったからこそ、四天王及びチャンピオンの存在は彼等トレーナー達にとって遠き存在だという事を重々理解している(といってもミリ本人あまり興味が無かった為に認識は低い)。ホウエンやシンオウに限った事ではないが、どの地方も四天王やチャンピオンの存在は大きく、偉大であるという認識が強い。しかしリーグ大会以外等あまり表舞台に現れない事から、チャンピオンはともかく彼等四天王と戦う事は愚か姿さえも見ないという(まだホウエンは出ている方だと言う)。リーグ側が認可したとはいえ、本当に実在しているかさえ分からない浮き世離れしている現状に果たしてトレーナー達はどう思っているのだろう。名前だけの架空な存在、それこそ中には引きずり下ろしてやりたいと野心を燃やすトレーナーも多くはない

ミリの提案により改正されたルール、まさに今まで迷宮入りとされていた彼等四天王の存在を公に公表し、しかと実在しているんだと示す為だと言ってもいいだろう。といっても、此処のホウエン四天王はそんな事しなくても自ら公の場に現れたり、キャラクターそれぞれが個性豊かだったりとで良い意味でも悪い意味でも有名な為あまり意味がないのだが









…―――ピピピピピッ






「!―――…何かあったの?」

「…――――西ドーム選抜試験会場より、20番選手が第四関門のゲンジ氏に勝利したとの連絡が入りました」

「あらー、珍しい。あの四人に勝ったトレーナーが現れるなんて」

「20番選手の詳細を照会します」

「トレーナーカードのデータベースを表示します。中継映像を繋げます」

「20番選手、ゲンジ氏が出場権を許可するもチャンピオンとのバトルを望んでいるとの連絡が入ってます。…チャンピオン、如何致しましょう」

「勿論、選手の挑戦を受けましょう。その選手をあの場所へ。久々に楽しめそうだね、皆」

「…」
「キュー!」
「……」

「畏まりました。それでは西ドーム選抜試験会場と中央ドーム本会場の通路を開通します」

「西ドーム選抜試験会場、こちら本部。これからチャンピオンがそちらに向かいますので、中央ドーム本会場に20番選手の案内をお願いします」

「チャンピオン、よろしくお願いします」

「了解。後の事は任せたよ」

「「「はい!」」」








…――――四天王及びチャンピオンの勝ち抜き戦

名の通り、挑戦者が四人の四天王とチャンピオンに休憩無しの一本勝負でバトルを行う。所持ポケモンは原則6匹までとし、各バトルの使用ポケモンは一匹のみとする。制限時間は15分、制限時間内に四天王及びチャンピオンに勝利を収める事が出来たらこの勝負は挑戦者のものとなる

四天王、チャンピオンに勝利出来た者には次に行われる年に一度のリーグ大会出場権が与えられる。また、五人全て勝利する事限らず、この内の一人に実力を認められた者など状況に応じて出場権を与えるものとする


この独自のルールを作り上げたのも、他でもないミリ本人だ


戦える事すら稀だと言われていた存在とこうしてバトル出来る機会が恵まれるのであれば、ポケモントレーナーとしてトレーナー魂に火が着くというもの。誰しも、強いトレーナーと戦いたい。特に地方で一番二番と強い相手と戦える機会が転がってきたものなら彼等は喜んで食いついてくるだろう。そして付け加えて言わせてもらうが、バッチ習得期間はそれぞれ思い思いに修業などに明け暮れるのだが、バッチ習得したその後の期間が長いのだ。簡単に且つ分かりやすくいえば、暇。修業をし続けるにも限界がある。そんな彼等の心理を踏まえ、何かアクションを起こしてあげれば俄然やる気が出てくれるのではないか。「リーグ大会の腕試し感覚で来てくれたら嬉しいね〜」「ミリさん、貴女がそう思っても彼等はそうはいかないと思いますよ」「同感です」「だな」「もーミリちゃんたらー」「あはー」と会話していたのも今ではいい思い出





ポケモントレーナーには、大きな夢と、強い志を持っている





一人一人、目指す夢は違うかもしれない。歩む道も違ってくる。それでも、少しだけでも彼等の夢の手助けになってくれたらいい、とミリは言う

夢が無かったら道を示してあげればいい、目先の目標だけならその先の未来に期待を掛けて手を差し出せたらいい。方法なんていくらでもある。私達が動かなければ、何も始まらないのだから――――…そう言って、ミリは綺麗な微笑を浮かべて笑ったのだった




















リーーーーン…




今日もまた、不思議な鈴の音を響かせて

慈愛の微笑を浮かべ、フィールドに立つ








「…――――屈強と知られ、強固な壁と謳われたあの四天王を相手に、よくぞ此処まで勝ち進んでくれました。私の名前はミリ、このホウエン地方のチャンピオンを務めています。貴方のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」








物腰は優雅で、丁寧で

しかしその漆黒の瞳には、光は無い

けれど光無き瞳はまっすぐ相手を見抜き

チャンピオンマントを羽織るその姿こそ、誰もが認めしチャンピオンの御姿




隣に立つのはかの有名な三強の姿

彼等もまた、悠々たる姿でチャンピオンの隣に立ち

勇猛たる姿で挑戦者を待ち構える








「話は聞いています。ゲンジがリーグ大会出場認めたというのに、貴方は更なる高みを目指し私とのバトルを望んだ。四天王を立て続けに倒し、疲弊しているにも関わらず、なお戦いたいという強き意志とその勇気ある行動に私は貴方を称讃し、貴方の挑戦状受けましょう―――…それでは始めましょう、私達のバトルを。貴方は私に、一体どんな光を見せてくれるのかしら







…――――見せて頂戴!この眼に届くくらいの、強く眩しい光を!」
















今日もまた、ミリは慈悲深き采配を奮ったのだった









(ホウエンの為、皆の為)(頂点に立つ者として、道を示す)



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