みんなの妹、ピンクの蕾

皆の人気者の女の子


まだまだ手の掛かる、愛しい子













Jewel.58













キッカケは、一人の人間がミリにプレゼントしたのが始まりだった

自分のポケモンがいつの間にか持っていたらしい、まだ見ぬ世界を待ち望む儚い生命を宿したポケモンの卵。手に持つとズッシリと感じる命の尊さと、じんわりと温かいぬくもり。この卵をミリに手渡した張本人は「是非、ミリちゃんに育てて欲しいの」と、嬉しそうにミリを見つめる。そうお願いする彼女の隣には産みの親であり相棒のポケモンがニコニコしながら一緒にミリを見つめていた

この子が私とミリちゃんの絆を結ぶ象徴になってもらいたい、と付け加える様にお茶目っぽく言う彼女。そんな彼女の言葉の裏を語るなら、職場だけの間柄ではなくもっと友として友好を深めたいという願いが込められていた。そして、ミリなら絶対にこの子を立派なポケモンに育て上げてくれるに違いない。チャンピオンとして、トレーナーとして、一人の人間として。ミリの人柄や性格、そして個性を見極めた上で、彼女はミリを信頼し、この生まれたばかりの卵を託す事を決めた



ミリは卵から出てくる愛しい存在の誕生を、心から待ち望んだ



ポケモンの卵という存在を、当然知ってても今まで巡り逢うキッカケがなかったのもある。初めて見て、手に抱いた卵に心が踊った。そして驚いた。ポケモンの卵はこんなにも温かくて、繊細で、脆くて、なんて弱いものなんだと

一つのミスによって簡単に命を絶やしてしまうかもしれない恐怖と、尊い命を手に持った責任感に、新たな命の誕生の期待感。しかもこの卵の親のポケモンはミリが見た事がないポケモンで、知らない土地で育ったポケモンだった。つまり今までゲーム上で知っていたポケモンではなく、まったく新しい所謂新種のポケモンだった事は(自称ポケモン博士の)ミリにとってとても興味深いものだった(ちなみに初めて対面した時はそれはそれは驚きそれはそれは大興奮だった


たとえどんなに仕事が忙しくて疲労が溜まっていた日でも、ミリは卵を温め、愛でる時間を惜しまなかった


ミリが不在の時も、手持ちのポケモン達が交代で卵を温め続けた。全員、新たな命の芽吹きを大切にし、誕生を待ち望んだ。たとえこの子も自分達と同じ色違いだったとしても、自分達の様な悲しい思いを絶対にさせないと決意しながら




そしてミリが卵を受け取って約一ヶ月が過ぎた頃




膨大な量の仕事が片付き、悪種も消え、ドタバタと忙しなく働いていたその日の夜――――…今宵もまた、子守歌と共にミリの腕の中で淡い光と一緒に抱かれていた卵に、ついに亀裂が生じた






―――――――――
―――――――
―――









「チュリ〜チュリチュリー♪」




ピョーンピョーン!



「チュリリ〜♪チュチュ〜!」




ピョーンピョーン!







「――――…うー…むー」

「チュリチュリー♪」

「むぅ…桜花ァ…お願いまだ寝かせて…ママは今日オフなの…惰眠貪るのォォォ…」

「チュッチュー!チュリチュリー!」

「あぁぁぁぁ…」

《こーら桜花ー!ミリ様の睡眠を妨げちゃダメでしょー!》

「ミロー!」
「キューン」
「あああ桜花ちゃんダメえええ!」






外は爽快な天気に、時間と共にポカポカと温かくなってくる陽気が窓から差し込んでくる部屋の中

残業をしてきた為もあり、「朝食はこちらで用意するから」というアスランの言葉に甘えて、時間の許す限り(多分此処にきて初めての)寝坊を決め込もうとしていた矢先に、それは起きた



チルタリスの羽毛布団にすっぽりと身体をくるまり、溜まりに溜まった疲労と解消し、足りなかった睡眠を十分に補う事に専念するかの様にぐっすり眠っていたミリ

その彼女の上に、早く起きて構って遊んでとばかりにピョンピョンと跳ねて睡眠を妨げる存在が一匹

この存在こそ、四天王ミレイの手によってミリの元に手渡された、あの卵で

生まれた子は彼女の相棒のドレディアの進化前のポケモン、チュリネ

葉の色をした本来の色とは違い―――――桜色をした、色違いのチュリネだった







「チュリ〜?」

《ダメだよ桜花、ミリ様は今日は身体を休ませなくちゃいけないんだよ。疲れてるんだよミリ様は》

「チュリリー!」

《きょーはママおしごとおやすみだからあそんでくれるひだからあそぶのー、じゃないの!気持ちは分かるけど今日はミリ様じゃなくて他の皆と遊んでもらって!ね!》

「ミロー、ロァ」
「キュー」

《ほら、水姫も炎妃も呼んでるよ!お姉さん達に着いて行って!愛来、悪いけど桜花を連れて行って頂戴》

「あ、はい!わかりました。ほら、桜花ちゃん。私達と一緒にお外で遊びましょうね〜」

「チュ…」





うりゅ




《あ、ヤバッ》





ブワァアアアア!





「チュリィィイイィイイィ!」







The 号 泣





《ああああああああッ!》

「キャアアアア桜花ちゃんんんんッ!」

「ミロォォォ!」

「…キューン」






自分の要望が通らない、または自分とミリを離れ離れにされしまうのではないかと…まあ幼児によくある光景だが、桜花は小さな身体を震わせ、身体に似つかない大きな鳴き声を上げる

勿論そんな鳴き声を上げられたら、手慣れてない者じゃなければ誰だって慌てふためいてしまう。しかもこの場には今ミリが、睡眠を欲するミリがいるのにこれでは起きてしまう。時杜と水姫と愛来は突然泣き出した妹をどうしようかとアワアワと困惑し、そんな彼等を炎妃はやれやれと小さく溜息を零した







―――――…桜色のチュリネ、名は桜花

ミリの腕の中、淡い光に包まれる中で産声を上げた女の子。初めて目にした存在を、自分の親だと認識するものなのか、初めて出た新しい世界に飛び込んで目にした相手を―――…生まれるまでずっと温めてくれたミリの事を、自分の親だと思うのも無理はない。「生まれてきてくれてありがとう、愛しい子」と慈愛の優しさを込めた祝福を受ければ、それこそミリを親だと確信してしまうだろう

まだまだ赤ちゃん故の好奇心旺盛で、見守っていないと何をしでかすか分からない危険を漂わせる桜花は実は寂しがり屋な性格。いつも回りには大好きなお兄ちゃんお姉ちゃんが傍にいてくれているから一件そう見受けられないが、兄姉達はともかくやっぱり一番大好きなお母さんのミリがいないと泣いてしまう。何処の子もやっぱりお母さんは大好きで大切なんだよね






「…」
《どうしたと言うんだ》

《なんだ、また桜花が泣いているのか》

《仕方ない、その様子だと構ってもらえなかったらしい》

《桜花!マスターが起きてしまわれるじゃないか!》

「ふりぃ〜」
《あららー》

「ガァアア」
《おい朱翔、お前のその声が余計に桜花の泣き声を悪化させちまうだろーが》

《フッ…愛来以上に手が焼く子だ》



《しー!桜花しーっ!》

「ミリ様起きちゃいますから!桜花ちゃん、ね!私達と一緒にお外で遊びましょう!ね!ね!」

「ロォォォ!」

「……キューン」







桜花の誕生は手持ちの仲間達に大きな衝撃を与え、また大きな変化を与えた

皆が皆、桜花の誕生を喜び、祝福した。大切な仲間でもあり、妹であり、家族でもある桜花。偶然か、必然か、生まれた桜花も色違いだと判明するも、彼等にはそんな事など関係なかった。色違いでもそうじゃなくてもちゃんと仲間として接しよう、大切にしようと誓っていた。むしろ色違いだった事に喜びを感じていたに違いない。それこそ、彼等の中で決意が強まったと言ってもいい。この子を辛い思いも苦しい思いもさせない、絶対に自分達と同じ二の舞にはさせないと――――――…








スルリと、布団の中から細い腕が伸びた




腕は泣き叫ぶ桜花に伸び、その手はやんわりと桜花の身体を撫でた。慣れた様に手は桜花を引き寄せ、ミリが布団から上半身を起こした事ですっぽりと腕の中へ落ち着いた

お陰様で泣き声も止み、頬を伝う涙も止まった。キョトンとする桜花だったが、大好きなお母さんの腕の中と知れば嬉しそうにお母さんにすり寄る。なんとか泣き止んで良かった、とホッと安堵する面々にミリは眠たげな目を擦りながらも小さく笑う






「―――…もー、桜花。君のお蔭で目が覚めちゃったじゃないの」

《ミリ様、睡眠の方は大丈夫ですか?》

「うん、大丈夫。もうしょうがないからね…―――桜花、責任持って今日は皆と一緒にいっぱい遊びましょうね〜」

「チュリチュリー!」












さて、この子が最後の紹介になります


みんなの可愛い妹で人気者の、桜花ちゃん


人間で言えばまだまだ赤ちゃん。右も左も分からない子。言葉を覚えたばかりなので説明下手なところもありますが、割愛頂けたらと思います








(さて、君は何を話す?)


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