「…?いやー、私は知りませんね」

「うーむ、ポケモンマスターの『盲目の聖蝶姫』…知らんなぁ。その子がポケモンマスターならワシは一回くらい出会っているはずじゃが…」






初めて聞く名に、オーキドとウツギは顔を見合わせて頭を傾げる

そうか…、と残念そうに溜め息を吐くナナカマドに、苦笑を浮かべながらナナカマドを見つめるオダマキ。一体その方がどうしたんですか?とウツギが問い掛ければ、ナナカマドはゆっくりと重い口を開いた





「…彼女は七年前、こちらの地方で有名になった子だ。トップコーディネーターになり、シロナと戦って殿堂入りを果たした子でもあり…―――私が初めて、図鑑を託したこの内の一人だ」

「トップコーディネーターで、殿堂入りを果たした方ですか…それは凄い方ですね」

「…七年前といえばちょうどワシが図鑑を作り上げて、サンプルの何個かををそちらに送った、あの図鑑の持ち主かのぅ。確かシロナ君にも託したんじゃっけ?」

「あぁ。長くなるが、彼女達は託す日が違えど良きライバルとして戦ってくれた」











「ナナカマド博士!」

「おぉ、シロナ君じゃないか!久し振りだな」

「聞きましたよナナカマド博士!あの子も図鑑持っていたんですってね。…どうして今まで教えてくれなかったんですか!」

「え?いや、別に黙っているつもりでは無かったのだが…」

「教えて下さったら、もっと早くあの子と出会えたのに…!そうすれば色んな所に遊びにいけたのに……もう!ナナカマド博士の馬鹿!」

「え、あ、すまん」



ガチャ



「キュー!」
「…」
「……」

「こんにちは〜ナナカマド博士いらっしゃいますかー?シンオウ図鑑完成しましたよー……ん?この気配はシロナ?」

「"  "っ!会いたかったわ!」

「おふっ!?」

「"  "!今から遊びに行きましょう!テンガンザンの山頂とかミオシティとかカンナギタウンとか…そうよ!トバリシティで新しい服を見に行きましょう!あなたに似合う、ぴったりな服を見つけてあげるからね!…――と、言うわけでナナカマド博士失礼しましたー」

「え、え?あ、ちょ、まぁあああ」




「………元気だな」








「……懐かしい」

「「は、はは…」」

「それから彼女はホウエンまで足を運んだのだ。ホウエンで、今度はチャンピオンとして」

「彼女がホウエンに来てからリーグは、いや、ホウエンは変わりましたよ。当時リーグ内部がゴタゴタしていたり人数不足だったりリーグに挑戦する人数が少なかったり、他にも色々問題があったみたいなんですけど彼女が全て一刀両断して一から改善をしていってくれて、しかも彼女が仲立ち役としてシンオウと繋がりが持てたりと、劇的に変わってくれました」

「ほぅ、普通なら中々出来ない事じゃがそれをこなすなんて…」

「そして彼女はチャンピオンでありながらトップコーディネーターになって、そして私やナナカマド博士他多数の博士などの推薦と彼女の実績と栄誉を称えて、厳選な選別と試験の中で、ポケモンマスターになったんです。――…それが、今から六年前です」








「オダマキ博士、」

「"  "ちゃん!おめでとう!君は晴れてポケモンマスターだ!」

「ありがとうございます」

「それから…お疲れ様。これから君は、」

「はい。チャンピオンを辞退して、シンオウに戻ります。ホウエンでもすべきことはしましたから」

「チャンピオン業も大変なのに、ホウエンのポケモンまで調べてくれて本当にありがとう。…そうだ、今度娘を紹介するよ。サファイアという子だ、会った時にはどうかよろしくしてあげてくれ」

「はい。…―――喜んで」











「…――懐かしいです」

「そうだな…」

「盲目の聖蝶姫かのぅ、そんなに凄い人なら名前くらい聞いているはずなんじゃが……」

「ポケモンマスターは数限り無く少ないですし、普通なら劇的に報道されるはずなんですよね?ジョウトはそんな報道はされませんでしたが…」






ポケモンマスターなんて簡単になれる筈が無い

五十年に一人、出るかで無いかの瀬戸際。それほどポケモンマスターの道は険しく、難しい。なるにはまずその人の実績に始まり厳しいチェックに厳しい試験、それからその人の知識を計る為に難しいテストをして、合格して晴れてポケモンマスターになれる。あまりに難しい為に、博士の称号を持つ者でもポケモンマスターになる事はけして簡単ではない

しかし盲目の聖蝶姫はそのポケモンマスターになれた。最年少で、偉業な速さでの、ポケモンマスターだった

それにウツギの言う通り、ポケモンマスターは言わば人間国宝だ。ポケモンマスターが誕生しただけでも凄いのに最年少なら尚更だ。情報は全地方に轟き、誰もが盲目の聖蝶姫を知っている―――筈なのに







「それもそうだ。何故なら、」

「……………」

「…――――行方不明になってしまったんだよ、彼女は」

「え、――――…」

「それは…」

「――…色々事情があってか、今まで私達は彼女を忘れていた。最近になって思い出してきたのだが…何故、という理由はともかく―――私達は一刻も早く彼女の消息を知りたい」

「盲目の聖蝶姫を、一人の女の子を、私達は…いえ、私達含めシンオウホウエン全土の人々は彼女の無事を知りたい。捜したい―――今回のリーグ集会で、シンオウとホウエンのチャンピオンがカントーとジョウトのジムリーダーに情報を求めるみたいなんです」

「君達にも、是が非でも捜索に手伝って欲しい。――良いだろうか?」

「もちろんです!私に出来る事なら何だって言って下さい!」

「ワシも二人の頼みじゃ、勿論手伝うぞ!誰だって一人の人間を心配するのは当たり前じゃからな。――――それで、その子の名前は何と言うんじゃ?」

「彼女の名前は――――…………」









そう、彼女の名前は…








「ミリ、という子だ」









(さぁ、歯車はどうやって進んでくれるのか)




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