思い出していくのは彼らだけではない


少しずつ、記憶の鎖は解かれていく







思い出すんだ、掘り起こせ

闇に閉じ込めてしまった、光の勇姿を




―――――――
――――










「ママー!テープどこやっちゃったっけー?」

「えー?知らないわよー。物置の中じゃないかしら?」

「最後に見たのって六年前よね?…だったらやっぱり物置かも…ポチャマ、一緒に物置に行って手伝ってくれない?」

「ポチャー」

「ヒカリ、手伝うか?」

「ピッカ」

「だいじょーぶだいじょーぶ!三人はそこで寛いで頂戴!」

「大丈夫かぁ?ヒカリのヤツ」

「うーん、まぁ彼女に任せようよ」

「フン」






此所は、マサゴタウン


――――ヒカリの家






「しっかし、ヒカリのヤツったら本当に盲目の聖蝶姫って人が好きなんだな〜。もう時期スズラン大会あんのにまさかヒカリの家に行く事になるなんて」

「ピッカッチュウ」

「よほど僕らが知らない事が信じられなかったみたいだね…僕もナナカマド博士がいる研究所にいる皆に聞いたら普通に知っていたし」

「…………」

「つーかまさかシンジまで来るなんて思わなかったぜ」

「あ、それは言えてるよね」

「…俺も今更になって何で此所にいる理由が分からん」

「ヒカリの勢いマジハンパなかったぜ…」

「そうだね」

「ピーッカ…」





テレビの前、桃色のソファーに座り若干ゲッソリもしくは苦笑を漏らすサトシとシゲルとシンジ、とピカチュウ←

ナギサジムで無事にバッチを取得し、後はシンオウリーグ大会でもあるスズラン大会に控えるだけになった四人。出場をするのはサトシとシンジな為、二人の闘志はメラメラに燃え盛っていた。対する残りの二人の内、ヒカリはマスターコンテストに出場するも惜しくも敗退、シゲルはナナカマド博士の研究のお手伝いとして勤しみそれぞれ自分のしたい目標に頑張って腕を振るっていた


今回、ナギサシティでサトシとヒカリとシゲルがポケモンセンターに寛いでいる最中に四天王のオーバと出くわし、久々に会話に花を咲かせる。その時会話に『盲目の聖蝶姫』が出たものならオーバとヒカリのテンションが上り、名前は分かっても人物を知らないサトシとシゲルは蚊帳の外。知らないのか?とオーバが聞き、二人は素直に知らないと言ったものならオーバは驚愕し、「アイツを知らない奴がいるなんて…!」とズーンと極端に落ち込んだ。そんなにショックを受ける程なのかと冷や汗を流す二人を置き、すくりと起き上がって何を言うかと思ったら「ヒカリ君!こいつらにアイツを教えてやってくれ!」なんて拳を握って言ったじゃないか

しかも対するヒカリも「ですよね!盲目の聖蝶姫を知らない人がシンオウの土地を歩いちゃいけませんよね!」と燃え始め、「ゆけぃヒカリ!君の手に全てが掛かっているっ!」「任せて下さい!オーバ隊長!」とあれよあれよという間にマサゴタウンへ急ピッチに戻るはめとなり…途中、すれ違いになったシンジとバッタリ出くわせば「ちょうど良かった!アンタも盲目の聖蝶姫の勇姿を見に行くわよ!」「は、な、ちょ、おまぁああああ」と、シンジを強制連行。オーバの熱い声援を背に、一人の女の子にズルズルと引きずられていった三人だった






「しかしヒカリもやるわねぇ。同年代の男の子を家に連れて来るなんて」

「おばさん!」

「ごめんなさいねぇ、あの子熱くなると本当に回りが見えなくなるから…」

「あ、あはは…否定出来ない」

「ピーッカ…」





オレンジジュースをお盆の上に乗せて三人に渡していくのはヒカリのママ

エプロンとダイナミックなパーマむしろアフロヘアーなお母様だ。今日も一段とふんわりしている。ありがとうございます、とそれぞれお礼をいいオレンジジュースを受け取った三人に、ヒカリのママはフフンと笑う





「聖蝶姫は私も大ファンなのよ。あの子がトップコーディネーターを目指したのもあの人に惹かれて目指したようなものなのよ」

「あれ、おばさんじゃなかったんだ。だっておばさんもコーディネーターですよね?」

「確かに身近な人間の私もその対象として含まれているかもしれないわね〜。盲目の聖蝶姫がシンオウで活躍したのが七年前だから…あの子が七歳の頃、物心が着いた頃だったからテレビで見た当時のコンテストが衝撃的だったみたい。勿論、私もあれには舌を巻いたわ〜」

「「へーぇ」」

「シンジ君はバトルの方よね?なんだかそんな感じかするわ」

「はい。彼女が魅せるバトルは隙が無くそれでいて強い。トレーナーなら誰もが目標とする尊敬出来る方です」

「分かるわ!バトルはバトル、コンテストはコンテストで違った魅せ方をする彼女のバトルセンスは計り知れないわよね!やっぱりシンジ君も彼女を目標に?」

「はい、ですがあくまで彼女を尊敬としていますが、倒したい相手とはまた別です。けれどいつかは彼女を超えてみたいとは思っています」

「うんうん、良いわねー男の子はこうでなくっちゃ!」



「…………シンジが珍しく流暢に話す位だから、きっと盲目の聖蝶姫さんはそれほど凄い人なんだね…」

「だな…」

「ピッカ」

「おいそこ、聞こえているぞ」











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