このテープは盲目の聖蝶姫が行方を眩ました後に録音をされたモノ。マスコミが盲目の聖蝶姫に近かった存在をピックアップし、厳選した中で取材をしたモノだろう。しかしこのテープは使われる事無く、棚の奥底にしまわれる事となる

黒い手がラジカセからカセットテープを取り出し、横面に書かれている文字を見る。「メリッサ、マキシ、トウガン、スズナ、ヒョウタ、ナタネ、スモモ、トム、デンジ、リョウ、キクノ、ゴヨウ、オーバ、ゲン、シロナ」と記されている。文字数が多く、書く欄が少なく、それでも頑張って書いたのだろう。細かく小さく書かれているカセットテープに録音された張本人の名前。年期が入っているせいもあり、読み辛い部分もしばし見受けられる

この人物達が一体誰なのかは、説明しなくても分かるだろう





「――――……」





ラジカセから取り出したカセットテープを、丁寧にケースにしまいこむ

今度はもう一つのカセットテープの「盲目の聖蝶姫を贈る言葉(南)」を取り出す。先程のケースには書いていなかったが、このケースには既に録音されている人物の名前が書かれているのか「ダイゴ、ミクリ、ゲンジ、プリム、フヨウ、カゲツ、テッセン、ナギ、トウキ、ツツジ」と記されていた。この人物達も一体誰なのか…説明をしなくても分かるだろう

題名を見る限り、盲目の聖蝶姫がホウエンチャンピオンを辞退して、シンオウに帰還する際に録音されたモノだろう。彼女との別れを惜しみ、彼女との再会を心待ちにし、彼女に感謝の言葉を贈る。目が視えない事からビデオではなく、カセットテープにした彼らの計いなのかもしれない。しかしこれが此所にあるという事は…――彼女の手に、渡る事が叶わなかったに違いない






「――――――…」






又もや黒い手はケースを開け、中身を取り出しては躊躇する事無くラジカセにセットをする

音量などは既に設定済みである為、黒い指はすぐに再生ボタンを押した



カチャッ…



暫くラジカセが動く音が響き渡る音が聞え始め―――そして、彼女に言葉を贈る声が流れ始めたのだった





















「――――…‥やぁ、"  "。僕だよ、ダイゴ。ちゃんとこれ録音出来ているかな?…あぁ、大丈夫みたいだね。びっくりしたかい?君がシンオウに着いてバック開いて気付いてもらえる様に仕組んだのさ。今君は何をしている?そっちにシロナさんという方や他の方々と再会する事は出来たかな?――…さて、そんな前置きは置いといて、だ。今から君に僕らから言葉を贈らせてもらう。送別会の時、君はモノを受け取らなかったから、せめて言葉だけでも受け取って欲しい。…とりあえず、今回は僕ら四天王とジムリーダーから。他の人達はまた別の日に届けさせてもらうからね



それじゃまずはジムリーダーから」



「ではわたくしから。"  "さん、お元気にしていますか?ツヅジです。覚えていますか?あなたに勉強を学んだお蔭で無事にスクールを卒業し…ジムリーダーに就任する事が出来ましたの。これもあなたがスクールに足を運んで、私に指導をして下さったお蔭です。ありがとう御座います!あなたに教わった知識を糧に、わたくしらしいジムリーダーとして頑張りたいと思っています!今度あなたがホウエンに帰って来たら、バトルを申し込ませて頂きます!その日が来るまで私は日々の修業を積み重ねていきますから!"  "さん、お体に気をつけて下さいね」


「次誰行く?」
「ジャンケンしようぜ」
「決めておきなさいよ」
「いーや、ほらトウキ。お前行け」


「マジで!?……あーっと、"  "!久し振り!お前今何してるんだ?そっちもサーフィンとかやってんのか?寒そうだよな…シンオウとかって。…いやいや俺こんな事言いたいんじゃなくてな。"  "、俺もツヅジと同じでジムリーダーになったんだぜ!ただのサーフィン男じゃないぜ、…おーいそこ、笑うなよー…。でさ!俺こっちで頑張るからさ、お前も頑張れよ!こっちに戻って来たらツヅジと同じでさ、ジムリーダーになって成長した俺とバトルしてくれよ!絶対だからな!後は…そうそう!お前、盲目だからどっかそこら辺で躓いて転ぶなよ!」


「あー有り得そう」
「彼女フラッと消えるし」
「次は誰だ?」


「んじゃ次はワシじゃ。"  "ー元気かー?ワシじゃ、テッセンじゃ!こっちは相変わらず元気にしとるよ!そっちは寒いじゃろうなぁ…風邪ひく前にこっちに戻ってくるんじゃぞー!そうそう、最近またクリちゃんが新しいカラクリ作ったんじゃよ!帰って来たらまた一緒にカラクリ楽しもうなー!ワーッハッハッハッ!!」


「クリちゃんって誰?」
「カラクリ大王らしい」
「次はー?」


「なら次は私よ。"  "、私よ、ナギ。そっちはどうだ?無事にシンオウに着いたか?皆心配しているぞ。シンオウで約束果たして来て、こっちに戻ったらまたラティアス達と空の散歩をしよう。今までチャンピオンとして私達を引っ張ってくれたんだ、羽を休めてゆっくり休んできて、あなたが元気になったらまた会おう。ジムの事は、いや、ホウエンは私達に任せて頂戴」


「はい次ー」
「とりあえずジムリーダー出しとけ」
「お菓子終わっちゃってるよー」
「おい誰か俺のカンペ知らねぇか?」


「ジムリーダーの最後はこの私が閉めさせてもらおう。"  "、元気にしているかい?このテープが届いたという事はきっと無事にシンオウに着いている事と思う。ダイゴも言ったが、きっと驚いて…そうだね、噂のシロナさんと聞いていたりしていてね。貴女がシンオウに行くって聞いて私達慌てて皆を集めて録音させてもらった。引継ぎの時、やけにダイゴがてこずった時が何度かあっただろ?あれ実は芝居。時間を稼いで貰っていたんだ。じゃなきゃダイゴがてこずる不器用な男じゃないさ。――…さて、私が貴女に贈る言葉は一つ。『また、会おう』。私はジムリーダーとして、祠の守護者としてルネを守り、皆と手を取り合ってホウエンを…貴女が作り上げたホウエンを守っていく。どうか再会する日まで、元気でいてほしい」

「因みにフエンジムリーダーやトクサネジムリーダーは急用で居ないから、またの機会で録音テープを贈らせてもらうから」


「ジムリーダー、終了したな」
「誰から行く?」
「誰でもいいわ」
「この際リーグ順でも良かろうに」


「なら俺から行かせてもらうぜ。よぉ、"  "!カゲツだ、元気にしてるか?どうだそっちのシンオウは?こっちは相変わらずだぜ!四天王も大変なんだな…未だに仕事に慣れてねぇが、まぁなんとかこっちは頑張ってるぜ。なんたってアンタが築き上げてきたホウエンリーグなんだからな!帰って来る時はお土産忘れんなよ!んで、今度四天王としてアンタに挑戦状叩き付けるんでな!楽しみにしろよっ!」

「ハァーイ"  "ちゃん!あちし、フヨウよ!元気にしてるー?こっちはなんとか仕事になれて安心よ〜。やっとおばあちゃんに顔出せたりで、順調にやっているから大丈夫よー!"  "ちゃーん、早く帰って来てよー!寂しいよー!あちし"  "ちゃんが帰って来るの待ってるから!それまで一歩も挑戦者を上がらせないからね!待ってるからね〜!」


「と言ってもまだホウエンにいるけどな」
「トウキそれ禁句」


「こんにちは"  "さん、プリムです。ご機嫌はいかが?体調を崩していないかしら?ホウエンとシンオウは気温の差は激しいですからね、十分気をつけて下さいね。私から言う言葉は二つあります。一つは『ありがとう』。貴女がホウエンに来て下さらなかったら、こうして皆で仲良くする事は叶わなかったでしょう。私は貴女の四天王として一年共にしてきました。だからこそホウエンリーグが変わったさまを理解しております。どれもこれも…貴女が身を削ってまでリーグに、いえ、ホウエンに尽くしてくれたお蔭です。本当にありがとう。…二つ目の言葉は、『今度は一人の女性として、また会いましょう』私はチャンピオンの貴女しか見ていません。なので、チャンピオンのしがらみから解放され、ポケモンマスターというモノにも解放された"  "さん個人として。今はゆっくりとチャンピオンで蓄積された身体を癒してから、ホウエンに戻って来て下さいね。私達四天王一同は貴女の帰りを待っています」

「"  "、お前がチャンピオンになり、儂が四天王として共にリーグに立った一年間はとても有意義だった。お前はよく頑張ってくれた。それは誰もが知っている。…今更儂から言う言葉は無い。が、もし言うならばプリムと同じだ。『ありがとう』『今度は本当のお前と再会しよう』。儂らは待っておるぞ、お前が帰って来るのを。それまで体調とか崩すんじゃないぞ」


「終わったみたいだね」
「閉めはチャンピオンだな」

「―――…"  "、僕から伝える言葉は只一つ。『チャンピオンの座を守ってみせる』君から譲り受けたこのチャンピオンマントと、君が座り続けたチャンピオンの座を、僕は守ってみせる。…正直言って、君が降りたチャンピオンを僕が引き継いで良かったのだろうかと今でも思っている。でも君は言ってくれた、『貴方らしいチャンピオンでいてくれればいい』と。君のお蔭でスカッと何かが晴れた気がしたよ。…君は本当に不思議な人だよ。敢えてそれが何かは言わないよ。君が戻ってくるまで僕らはホウエンを守り、僕は君が守ったチャンピオンの座を守ってみせる。――…そして、ホウエンのチャンピオンとして、ポケモンマスターである君にポケモンバトルを申し込む。その時が来るまで、お互いに頑張ろう。僕らは君を、待っている」


「誰か告白しちゃえー!」
「ええぇええええ!?」
「ワーッハッハッ!そいつはいい!誰かフラれる覚悟で告白する奴はおらんかー?」
「テッセンさんそれひでぇ!」
「チャンピオン言っちまえよ!」


「……さて、後ろの声は気にしない方向で…そろそろテープも終わりそうになった所で終了とさしてもらおう。"  "、今君がどんな気持ちで聞いているかは推し量れない。でも、少しでも僕らを思い出して欲しい




再会するその日まで、どうか元気で…―――」










カチャッ…









テープが、終わった






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