一つの、調査書がある それは今まで彼女の行動を記したもの 二つの、カセットテープがある それは彼女と接点があり、彼等の話を録音したもの 闇に葬られた真実 闇に消え去った橙色の蝶 『盲目の聖蝶姫』 一つのページが、捲られた ――――――――― ―――――― ――― ― 何処かのリーグにある資料棚 その資料棚にあるのは今まで数々の使ってきた資料又はトレーナーの情報など、使われてきた内容様々に、重要資料と言われてもいい資料が陳列している その内、とある箇所にある資料はリーグ関係でも中々閲覧する事が叶わない資料でもある。資料を拝見したい場合、リーグ協会の幹部に申請をしないと手に取る事も出来ない。つまりこの資料棚には世間に知られる事の無いリーグの裏事情が隠されている カツン―― 沈黙を守る資料部屋の中に、一つの足音が響き渡る 部屋の中に誰かが入ったのだ 人影はゆっくりと歩を進み、静かな部屋に足音を響かせていく。人影はまっすぐと――とある資料棚までたどり着く 腕が伸び、資料棚に陳列されているファイルを取り出す。パサリとページを捲り、ペラペラと紙が擦れる音を響かせる 捲られる音が止まり、あるページが開かれた それは―――――……‥ 「『盲目の聖蝶姫』 ‐個人情報‐ 出身地 マサラタウン 誕生日 7月29日 T.C登録日 20XX年〇月〇日 T.C番号 No.0000 T.C色 GOLD(最終登録 ‐経路‐ 20XX年〇月〇〇日※ シンオウ地方マスターコンテスト優勝 同時期にシンオウ地方特別特設リーグ大会に優勝 20XX年〇月〇〇日 トップコーディネーター及び殿堂入りの登録を行う [※彼女がシンオウで活躍してから六ヵ月の歳月で二つの頂点を取得する] 20XX年〇月〇〇日※ ホウエン地方ポケモンリーグ大会に優勝 20XX年〇月〇〇日※ ホウエン地方チャンピオンに君臨 20XX年〇月〇〇日 ホウエン地方マスターコンテストに優勝 20XX年〇月〇〇日 ポケモンマスター認定試験合格 全ての栄誉を称えポケモンマスターとなる 20XY年○月〇〇日 ホウエン地方ポケモンリーグ大会開催 同時日にチャンピオンを辞退する [※二週間でバッチを取得] [※チャンピオン期間は一年] 盲目の聖蝶姫の存在が明らかになり、名を馳せ続けた期間は一年と六ヵ月 ホウエンチャンピオン引継ぎを終えリーグ送別会(同時期の〇月〇〇日)を終えたその後、彼女の消息がつかなくなる 事件性を見て捜索するも行方が分からず。〇月〇〇日より、捜索を打ち切り。リーグ協会の内部事情を良く知る重要人物として、彼女の事は闇に葬る事となる 彼女の名前は―――…‥」 カサリ、 ファイルに閉じられていた紙を黒い手が掴み、取り出す 他にもファイリングされてある数枚の紙を取り出していく。それは今までの盲目の聖蝶姫の経路などを事細かく説明してあるものや、彼女の顔写真が掲載されている物もあった ペラリ… 黒い手がファイルの中に埋まっていた一枚の写真を取り出す ポケモンマスターとして登録されたであろう顔写真。そこに映るのは紛れも無い盲目の聖蝶姫。資料を取り出し、写真を取り出した黒い影は写真を見て歪んだ笑みを浮かべ――愛しそうにキスを落とし、その写真を懐の中に仕舞い込んだ カツン――…‥ 同じ部屋の、違う場所 そこの資料棚に陳列してあるのは、数多くあるビデオテープやカセットテープやディスク。これらはリーグ大会のバトル映像だったりマスコミで聴取したテープだったり会議で使われたディスクもあったり、種類は様々。どうやら特別幹部長に申請しなくてもいいらしい。この棚にも何十年分の記録物が陳列していた 黒い影はその棚の前までゆっくりと歩を進め、やがてある位置に着くと足を止める カチャ… 数あるビデオやテープがある中で、黒い手はビデオやテープ等を根こそぎ掻き出せば静かな部屋に擦れる音が響き渡る。黒い影の片方の手には黒いバックがあり、物が沢山しまえる程の大きなバックは何処か不自然だ。チャックを開け、取り出したビデオやテープ等をバックの中にぶち込んでいく 全てを仕舞い込んだだろうブツを、黒い影は歪んだ笑みを浮かべながらゆっくりとチャックを閉まっていく。チャックが完全に封を閉じる前に見えたビデオの縁には「盲目の聖蝶姫と現シンオウチャンピオンのバトル」と書かれていた 「―――――…‥」 黒い影は相変わらず歪んだ笑みを浮かべたまま この黒い影は一体何者で、何故こんな事をしているのだろうか。これは、泥棒とも言える行動でもあるのに、何故… 「――…‥」 黒い影は棚に残された二つのカセットテープの存在に気付く 腰を上げ、ゆっくりとした動作でそのカセットテープを取り出し、顔の前まで持っていく。そこに書かれているシールには「盲目の聖蝶姫を語る者達(北)」「盲目の聖蝶姫に贈る言葉(南)」と記されていた 黒い影は暫くテープを眺めていると、視界の隅にラジカセが置いてあるのに気付いた 今の時代には少し年期の入ったラジカセが埃を被っていた。何故、こんなモノがこんな所にあるのだろうか。黒い影はラジカセを手に取り、何を考えたのかラジカセのボタンを押し蓋を開け、手にしたカセットテープを中に入れたではないか 埃を被り、人々に忘れられていても機能は正常なラジカセは電源のボタンを押せば起動を始める。黒い影が音量調整を行い、誰にも聞こえない音量までセットすると、躊躇する事なく再生ボタンを押した カチャ…―― 静かに録音された言葉が流れ出した → |