お役に立ちたいと言う妹

妹の頑張りを見守る兄

新しい居場所、新しい仲間

温かい場所で彼等は笑う











Jewel.57













…――――あ!兄さま兄さま!ついに私達の出番がやってきましたよ!あわわどうしようまだ心の準備が出来てないですうぅぅぅ


少しは落ち着け愛来。何を慌てる必要があるんだ。何も緊張する事はないだろ、ただ問われた事を答えていくだけだろう


そ…そうですよね!無駄に緊張してしまったら言いたい事がちゃんと伝わりませんからね!分かりました兄さま、精一杯頑張って落ち着きます!


フッ、それでいい。それではまず始めに自己紹介から始めよう。私の名は蒼空、種族はラティオスだ。名の由来はそのまま、と言っておこう。そして私はこの子の兄でもある。…ま、宜しく頼む


私の名前は愛来と言います!この名前は主でもあるミリ様から頂いた大切な名前で…由来はどんな事においても慈愛の気持ちを持てる子であって欲しい、です!そんな立派な人になれるように、ミリ様の下でお勉強中です!よろしくお願いします!









Q.何故今まで人間の前に姿を現さなかったのか





…なるほど、今まで私達種族の存在を今まで認知されなかった故の質問という訳、か。理由は至ってシンプル、人間達の前に姿を見せる必要性が無いからだ。私達は人間と違い地上ではなく上空を範囲とし、様々な土地を飛び回る性分としている。そして空は無限に広い、その中で私達を見つけ出す事の確率は限り無く低いだろう


それに私達は地上に降りる時はなるべく姿を消す事を心掛けています。たとえ姿を消さなくても、皆さんの気配を感じたらすぐその場から離れていましたので…そう考えると今まで皆さんが私達を見つける事が出来なかったのが説明着きますね、兄さま


フッ、そうだな






Q.何故人間の前に姿を現したのか






何故、と言われたら答えはただ一つ


ミリ様のお仲間に加わらせてもらったからです!


主の仲間になったのなら、必然的に公に姿を現す事になろう。無論、頂点に君臨する主に求められるのは常に戦闘競技の勝利。仲間になった以上、私達も主の為に貢献するのは当たり前だろう?


今まで私、バトルというものをあまり好きじゃなかったんですけど…ミリ様と出会って、バトルに挑戦して。ミリ様だから、でしょうか…ミリ様の指示の元で動くバトルを、とても楽しいって思えるんです!まるで私もミリ様と一体になってバトルしているみたいで!


お互い心夢眼でシンクロし合えば、そう思うのも無理は無い。現に私も、愛来と同じ気持ちでいる。不思議な話だ…今までは争い事を好まなかったのにな


そうですね、兄さま。けど、全てのバトルにはちゃんとした意味がある事に気付きました


ほう


バトルは闇雲に戦うものじゃなくて、楽しんでやるものっだって…一緒に競いあって出来る友情とか、バトルを通じて学べる事もあるんだって!だから皆さんがバトルをして自分達を極めつつも友情や絆を育みあうんですね。そう考えたらバトルに対する抵抗感がなくなりました!


フッ、お前がそう考えたのならそれでいい。しかしバトルが嫌いだったお前が、な…随分と成長したものだ、愛来


はい!この調子で精一杯頑張ります!


そうなると、お前の考えでいけば朱翔と轟輝の場合は些か意味が違ってきそうだな


あのお二人はミリ様を守る為に頑張っていますから、きっとバトルに対する面持ちも私と違って立派なものに違いありません!


私からしてみればバトル狂でしか見えないがな







Q.何故ミリの手持ちに加わったのか






それは私がお願いしたんです。あなたの元でお手伝いさせてくださいって!そしたらミリ様が快く引き受けてくれたんですよ!なので私は人間になってミリ様の身の回りのお世話をさせてもらってるんです!


…愛来、それだけでは説明不十分だ。相手はお前に、どういった経緯で主を知り、何故主の元へ世話係りを志願したのかを問いているんだぞ


うぅ…でも意味は合ってると思うんですけど…

意味は、な。しかしこの場合、もっと詳しく説明した方がいいだろう。他の者達も詳しく話を済ませているんだ、私達だけ簡単な説明ではあちら(読み手)も納得がいかない。まずは一つずつから説明していこう

はい、兄さま






Q.どういう経緯でミリを知ったのか





ミリ様の存在を知ったのは半年ほど前からです。強くて偉大で、清らかで…けど何処か優しいそんな力を北の方角から感じ取ったのが始まりです

今まで感じた事が無い力、しかし本能が何処か懐かしんでいる様な不思議な力。そしてこの力を持つ存在は敵ではないと何処か安堵するも、逆にこの存在に従わなくてはならないと、やはり本能がそう囁いてくる。今ではこの意味を理解しているが、六ヶ月前の私達はこの強大な存在に随分と驚かされたものだ

この力を感じた私達は、北の大地に飛びました。確かそれが…ミリ様達曰く、丁度リーグ大会が始まっていた時でした

私は姿を消し、愛来は人間の姿へ。互いの眼を写し合いながら、ポケモンリーグ大会の中へ潜り込んだ

たくさんの人間やポケモン達がいました。皆さんとても楽しみにして…全員が皆、中央にあるバトルフィールドを注目していました

沸き起こる歓声、音楽、パレード…フィールドで最初に現れたのは、金麗妃と呼ばれていたトレーナーであり、現シンオウチャンピオンでもある、我が主の宿敵

そしてその方の声に導かれる様に…―――蒼華さんと時杜さんと刹那さんのお三方を従えて、ミリ様は姿を現しました。それが、私達にとって初めてミリ様というお方をこの目で確認し、ミリ様というお人を知った瞬間でした







Q.その時、何を感じ、思ったか






素直に言いますと、皆さんがとっても綺麗に見えました。綺麗でいて、輝いていて…美しかった。………これくらいでしか、今の私には表現しきれないのが残念です…けど、口で説明する以上にミリ様達の存在が私達に大きな衝撃を与えて下さいました

…今となれば誇りを持てて言えるが、知っているはずだ、私達は…色違い。同じポケモン、同じ種族、同じ仲間でも色が違うだけで顰蹙を買われ、忌み嫌われる。他の者達の話を聞けば…もう、言うまでもない

どんなに珍しくて数がないって言われてますが、私達ラティ族はちゃんと家族を持ってます。この場合…家族は群れ、といった方がいいのかもしれませんが…やはりその中でも、ありました。私も何度かイジメにあった事があります。それを兄さまが見兼ねて、私を連れて家族から離れたのです…その日から、私達はずっとふたりぼっちでした

先程の一番最初にあった質問に付け加えて答えるなら、やはり私達の身体が色違いだったからだ。フッ…しかし、他の種族や人間からしてみれば私達家族の存在すら知らなかったのだからな、ある意味で潜りやすく普通に過ごせる事が出来ていたのが幸いだったが

けど、色違いにはかわりありません。だからこそ、ミリ様の存在は大きかったんです

同じ色違いの仲間を見て喜びを感じ、

皆さんを率いて輝くミリ様を…救世主、ううん、女神様だと思いました






Q.では、どのようにミリと接触し、仲間になったのか






その前にまだ先程の問い、愛来はまだ全てを答えてはいない

はい。私は皆さんの一生懸命に戦う姿や、ミリ様の元へ歩める皆さんの誇りを感じ、慈愛の抱擁で包み込んでくれるミリ様の優しさを感じて…私も、皆さんと一緒に仲間に、家族になりたいと思いました

フッ、色違いの事もあって消極的だった愛来の主張に随分と驚かされたものだ。しかし主の存在で愛来が変わり、成長してくれるなら本望。…それに私も同じ気持ちだったからな、異議は唱えなかった

それで私、さっそく考えたんです。他の皆さんはバトルという形でミリ様の夢のお手伝いをなさっているから、私は私が出来るお手伝いがしたいなぁって。そう考えて、気付いたんです。ミリ様の目が見えないって事に。それで私、ピンときたんです!こんな私でもミリ様のお手伝いになれる方法があるって事に!

愛来は他の者達と違い、人間の姿になれる事が出来る。主の身のお世話が出来るとなれば他の者達と違い、生活において常に大きな主戦力になってくれる。バトル嫌いな愛来にはぴったりなポジションだといってもいい

それが、メイドさんです!

随分と気に入ったみたいでな

今着ているこのフリフリの可愛い服、これミリ様がわざわざ作って下さったんですよ!他にもいっぱい服を作ってくれてて!どれもこれも、大切に使わせてもらってます!

摩訶不思議な光を駆使しながら素早く服を作れる主に色々と謎…いや、感服だな






Q.それでは先程の質問の一つ、どのように接触を試みたのか





主が大会を優勝に納め、マスコミに追われ、そしてこの地に降り立つまでずっと上空から様子を伺っていた

本当だったらすぐにでもお仲間に入れてもらいたかったんですけど…そこは様子を見るべきだって、兄さまに言われて

もう少し相手側を知り、突破口を見つけてから行動に移した方が利口だと思ってな

けど、そうこうしていく内にミリ様のお仲間に炎妃さんや轟輝さんが加わって…気付いたらまた大会に出場して、優勝してしまうんですもん。ヒヤヒヤ、ううん、ハラハラしましたよ

メイドとやらのポジションを考えればすぐに仲間に入らなくてもいいと思ってな。ま、流石の私も焦りを感じたが…まあいいだろう。………で、実際に私達が主に接触を試みたのが、主達がチャンピオンになった数日後だ

落ち着いた頃を見合わせて、皆さんが住むあの大きな家にいる、お仕事を終えたばかりのミリ様に会いに行ったんです!

安心しろ、人間の礼儀に沿ってインターホンを押したぞ

あ、勿論姿を変えましたよ!もし別の方が扉を開ける場合がありますからね!…ってこれも兄さまが言っていたんですけどね

案の定、扉を開けたのは屋敷の持ち主のアスラン。人間の姿になった愛来を少々驚いた様子だった。フッ、それもそうだろう。時間帯は夜で、あの島の来客は中々そうはいないらしいからな

アスランさんに私、言いました。「ミリ様、いらっしゃいますか」って

分かっていたが…突然そんな事を言われれば誰だって警戒をし始める。無理もないが…そんな時、丁度アスランの後ろから―――風彩が飛んで来てな

《キミ、ミリの知り合い?》って聞いてきましたから、「私達は知っていますが、皆さんは私達の事は知りません」と答えました。そしたら風彩さんは《ミリの事はともかく、ボクらの事は知ってるんだ》と言ってきましたから「北の大地の大会、とても素晴らしいバトルでした」と返しました

その言葉の後に何か気付いたんだろう。心夢眼で繋がっていた風彩の目を通じて、アスランの後ろから主が現れた。蒼華と時杜と刹那を連れて、主が私達に言った。「私に、何かご用ですか」と

初めて対面できた嬉しさも押さえつつも、私はミリ様にお願いしました。「私達も、仲間に入れて下さい!」って。その言葉の後に私は姿を元に戻し、兄さまも姿を戻しました

フッ…その時見た奴等の顔は見物だったな






Q.仲間になったのはその時でよろしいか





はい、そうです。その日を境に私達はミリ様のお仲間の一員になれたんです

続きの話をするが、やはり我が偉大な主といったところか…前々から、私達の気配を感じていたようだ。いつから感じていたのかは分からなかった様だが、気付いたら私達の気配があったらしい。ポケモン、だとは分かっていたらしいが…それが私達ラティ種族だった事にあちら側はえらく驚いていた

ミリ様が言ってくれました。「いつから私達を見てきたのかは聞かないよ。仲間になりたいと言ってくれるなら、私達は君達を歓迎します」と

その後に続いて蒼華が《人間に姿を変えれるその力はお前だけにしか出来ない事だ。お前なら、より一層主の手と足になってくれるに違いない》と愛来に言い、時杜は《また新しい仲間が増えて僕は嬉しいです!》と主に言い、《こうして自ら主の元へ志願してきた事は評価に値するな》としみじみ刹言う刹那に《よかったね〜》とふよふよ飛ぶ風彩に「ハハッ、なんだかよく分からないがさっそくミリ君の新しい仲間の歓迎会でもしようじゃないか」と言ってきたアスラン―――…反応は様々だったが、私達は歓迎を受けた。勿論、他の仲間達にもな

楽しかったです。あの時の夜は

確かにな。久しく感じなかった温かさに、胸を踊らせるばかりだった―――――…あの日の出来事は、今でも忘れられない





Q.その後、仲間になって何を思った?






私はその後、ミリ様にお話を着けてメイドさんとして付き添う事になりました。ミリ様の力や技量は素晴らしいものですが、しかし不便な事には変わりません。だから私がミリ様の手足となって、ミリ様に尽くしていきたいと決心しました

主の元にいれば、きっと愛来は立派に成長してくれる。私は愛来の兄として、主の存在に期待をした。そして私は主という存在に興味を持った。人間であるが、人間ではない存在を。それに主を通じて人間を知るにはいい機会だしな。人間の手持ちになるのも悪くはない

お陰様で今、とっても幸せです。こんな幸せ、滅多にありません。ミリ様に出会えて本当に良かった。そうですよね、兄さま

…ま、そういう事にしておこうか

(ふふ、兄さまったらミリ様の事になるとツンになっちゃうんだから〜。ミリ様が褒めるとツーンするんだもん、誤解されちゃいますよ…ってもう手遅れですけど)

何か言いたそうだな

なんでもないでーす!












――――…さて、そろそろ切り上げるとしよう。主達が仕事を終えて帰って来る

はい!そうですね!行きましょう兄さま、疲れたミリ様の為にもとびっきり美味しいご飯を作らなきゃ!

また慌てて皿を壊さない様にな

分かってますって!






―――――――――
―――――――
――――
――







―――――…私達はずっと、ふたりぼっちでした

元々家族が少なかった事もあるんですけど、色違いだった事で家族から離れる事を余儀なくされました。まだ私には兄さまがいました。兄さまがいてくれなきゃ、現実を受け入れ、立ち向かって行く事が出来なかったのかも知れません…

でも、今は違います。昔みたいに寂しい思いをしなくなりましたし、何より皆さんがいてくれます。同じ境遇を経て集った私達仲間は、ミリ様の救いの手によって救われました。色違いの自分達に、自信が持てて、誇れる様になりました。私達色違いに光を差してくれたミリ様…そのミリ様を守る為なら、なんだってします。それこそ命を掛けて御守りする覚悟があります

だって皆さん、ミリ様の事が大好きなんですから!







「いやー、愛来も随分慣れてきたね。あの食品コーナーのタイムサービス、人がいっぱいいる中に負けじと割り込んで商品ゲットしてくるなんて。おねーさん愛来の成長っぷりにびっくりよ〜」

「はい!せっかくのタイムサービスなんですもん、ミリ様の代わりに精一杯頑張ってきちゃいました!」

《そこは防御に特化した愛来だからこそ出来る偉業だな。人間より確実逞しいはずだからな》

「ふりぃ〜」






―――――…突然、遥か遠くの大地から感じた強き力。今まで感じた事が無い力、しかし本能が何処か懐かしんでいる様な不思議な力。敵ではないと何処か安堵するも、逆にこの存在に従わなくてはならないと、本能に直接囁いてくる。こんな力は今までに感じた事がなかった。この世界には私達の常識を超えた力を持つポケモンがいるのは確かだが、この力はそれ以上と言ってもいい。制御している、と主は言うが制御しているだけでもこの影響力は凄まじいほどだ

そして私は知る事になる。主の、本当の正体を。蒼華と時杜から、まるでおとぎ話の様な内容を聞かされる事になるが、しかしこれで納得した。主の秘めた力を、内なる存在を

かと言って、私は特に主に態度を変えるつもりはない。むしろより一層主に興味を持った。主の力は強大で影響力がある、勿論その影響力に私達が影響されたのは事実と認めよう。その影響力で、世界がどう変わっていくのかこの目で確かめてみたい

その影響力で、是非とも愛来を正しき道への道標になってもらいたいところだ







「さてさて、それじゃせっかく頑張ってくれた愛来の為にも今日のご飯はとびっきり美味しいものを作ろうね〜」

「はい!」
《しっかり手を洗っておくんだぞ》
「ふりり〜」










兄さま!私、頑張ります!ミリ様の為にも、兄さまの為にも、皆さんの為にも、自分の為にも!ミリ様を通じて立派なポケモンになってみせます!

頑張れよ、愛来。私も主も仲間達もお前を応援しているからな

はい!







(兄妹の、本当の居場所)


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