人間と同じ姿になれる力

光の屈折を利用し、その姿を変える

時にはポケモン、時には人間

そうやって彼等は、生きてきた












Jewel.56













ホウエンの大空を飛ぶ、二つの光

晴天爽快な大空を、まるで一つのジェット機の様な速さで空を翔ける。雲を振り払い、自由に飛び回る姿はまさに空の支配者と言ってもいい

空高く飛び上がり、螺旋を描きながら空を自由に走り回る。やがては一つの島へと向かって、二つの光は空を切る




二つの光、その一つ

この晴天輝く大空と同色と言っても過言ではない色を存分に輝かせる、蒼空の色

二つの光、その一つ

蒼空の光とは対照的な、柔らかくも色艶輝く可憐な花を連想する、桃の色













「おかえりなさーい、蒼空、愛来。お空の散歩、楽しかったみたいだね」

「ふりぃ〜」

《ただいまですミリ様、風彩さん!》

《今帰った》






サイユウシティに程近い位置にある、アスランが所有している島にて

二つの光が降り立ったのは島の中に建つ豪邸の庭。手の込んだガーデニングもそこそこに、丁度庭には他の仲間達が思い思いに過ごしていて、その中には勿論ミリの姿があった。手にホースが握られている所を見ると、庭の花壇に水を与えていたか、暑さ上昇を防ぐ為に庭全体に水を掛けていたのか。頭の上にはふわふわと柔らかい羽を揺らすアゲハントの風彩の姿も一緒だ

光達はまっすぐに彼女の元へ直行し、彼女の眼前へ降り立つ。笑顔と共に迎えられるミリの言葉に光達はそれぞれテレパシーで言葉を返す



二つの光、この光こそがミリの新しい仲間達

空色の光はラティオス、名は蒼空

桃色の光はラティアス、名は愛来

彼等も他の仲間達同様に、色違いの心優しいラティ兄妹




ラティアスとラティオス―――…ホウエン地方では珍しいポケモンで有名な二匹もまた、ミリの手持ちの中でその腕を奮う

さぞホウエンに住む人々は驚かされただろう。あの二匹、しかもまた色違いだなんて。ラティアスとラティオスは人の前に姿を見せる事は殆ど無く、実は存在されてないんじゃないかと言われているポケモンだ。しかし、それは違う。彼等は確かに存在していた。ただ人間達が、知らないだけで――――…


ユラリと、ラティアスの愛来の空間が歪んだ






「――――ミリ様、私もお花にお水を上げるのお手伝いします!」

「ありがとう。それじゃお手伝いしてもらおっかな。こっち側は終わったから、あっち側をお願いね」

「はい!」

《風彩、お前は主の頭から離れろ》

「Σり゛ー!」






戦闘機に似た桃と白を基調にした身体が、空間が歪んだと共に原形が変わり―――そこに現れたのはラティアスではなく、一人の人間だった

何処からどう見ても人間そのもの。誰もが見ても彼女がポケモンだとは思わないだろう。これは、ラティアスだからこそ出来る能力の一つで、硝子の様な羽毛で身体を包み込み光の屈折を利用させて姿を変える事が出来る。勿論この説を利用すれば自分の姿を眩ます事も可能である

ちなみに抱き着いてみると本当に人間の様な感触を受けれるから余計にポケモンだとバレない。光の屈折を利用しただけだから特別メタモン宜しく身体に変化は生じないはずなのに。うーん、不思議だ←

ザックリ見て歳はミリと同じくらいか数個下か。彼女の趣向かミリの趣向かは分からないが、彼女が基調とする服装が何故かメイド服みたいになっている。フリフリなレースをあしらった、桃色を中心とした服装を着こなす桃色のラティアス、愛来。好きな食べ物はヨーグルトとミリの手料理、好きな事は音楽に合わせてダンスをする事。温厚で頑張り屋な性格を持つ彼女は今日もミリの下で進んでお手伝いをする



一方、ミリの頭の上にのんびりし続けていた風彩を回収したのは空色のラティオス、蒼空。綺麗な花を前に楽しげに水を上げる主と妹の微笑ましい光景を眺めつつも、バタバタと暴れる風彩を首根っこ掴んでポイッと投げる

蒼空はどちらかといえば妹の頑張りを遠くで見守っている兄ポジションと言ってもいい。まあ実際に兄妹だから表現は間違えてはいないが。そんな彼は愛来みたく姿を人間に変える事はせず(姿を消す事は可能)、この島の上空の警備などを担当している。腕を折り畳み、ジェット機の速さを持つその姿はまさに空の支配者と言ってもいい。それ以外は基本的に他の仲間達とのんびりと過ごしていたりいなかったり。そんな彼の好きな食べ物はチーズ。乳製品を好む辺りやはり兄妹と言うべきところでしょうか







「うーん、今日のご飯は何にしよっか〜。冷蔵庫に材料残っていたっけ?夕方になる前にミナモデパートで食材買いに行かなきゃ」

「あ、ミリ様確か今日のミナモデパートでは5%デーらしいですよ!」

「あらー、それは嬉しいお話!今の内に一週間分の材料を揃えておいてもいいね。なんせ此処には育ち盛りの子達がたくさんいるからね〜。これが終わったら買い物に行こっか」

「はい!精一杯頑張りますっ!」

《買い物に行くのは構わないが、ミナモデパートの中で迷わない事だ。商品も落とさない事もな。人間の前に堂々と歩けるのはお前だけだ、分かっているな?》

「分かってますって兄さま、皆さんの代わりにこの私がミリ様の眼になってミリ様をお助けします!」

《フッ、それでいい》

「頼もしいね〜」

《主、それはお前にも言えた事だぞ。いくらこちらと同じ幻術と呼ぶ能力が使えたとしても用心を怠ってはならない。そもそも主は仕事の疲れが溜まっている身だからあまり無理をすると次の日に支障が出てしまうだろ》

「あ、あはーまさか私にまで矛先が…(うーんまるで蒼華に言われてる感が。水色なだけに)でも、ありがとう蒼空。そうやって気を掛けてくれて。おねーさんは嬉しいよ〜」

《…別に、私は本当の事を言ったまで。主の身を案じるのも、我等の努めだ(プイッ》

「(うーん、水色なだけにこのほどよい感じにツンを示すも内容は真っ当しかし言葉の裏には細やかなデレが含まれるツンデレ具合。まさに蒼華、まさに水色←)」

「そうですよミリ様!無理は禁物なんですからね!」

「ふりぃ〜」







ラティオスとラティアス、蒼空と愛来――――目撃情報が滅多に少ない為に、その存在はある意味で幻と言ってもいいほどの稀少種。噂では何処かに存在する南の島に生息している等の説も耳にする

しかし、御覧の通りこうして和気藹々と平和に過ごす彼等の姿を見てくれたら分かるだろう。確かに彼等は存在していた。誰も何も、気付かないだけで

彼等は他のポケモンと違い、高い知能を持ち合わせている。無論、中には人間をも越すくらいのレベルまで達する固体値もいる。彼等は高い知能を持ち、人間の言葉を理解し、姿を消す能力を持つ。争いを好まない性格も含めれば、何故今まで姿を見せてこなかったのか説明が付くはずだ

愛来の様に、人間の姿に変えて人間の輪の中に紛れ込めたり

蒼空の様に、姿を消して本当に存在しない様にする

この二匹の事を学者達は「色違い」だと答えたという事は、他にも同じラティ種族が存在している事になるがその事も含め、そうやって彼等は誰にも姿を感知される事なく過ごしてきた――――…そして、遂に彼等の姿がミリの手持ちに入る事でホウエン全土に知れ渡る事になり、また世界にもその姿を脅かす事となる


世間はミリという盲目の聖蝶姫もとい、ホウエンチャンピオンを注目している。それと同時に彼女が従えるポケモンにも注目している。色違いという存在を始め、伝説と幻に未発見の【三強】に彼等に負けない実力を持つポケモン達に――――愛来と蒼空の、新たに判明した幻の存在を。実際に彼等を直に研究したいと声を揃えている学者や博士達も中にはいるくらいだ(しかしそんな事を言ったとしてもミリは華麗にスルーをするだろう)。彼等の存在を明かした事は、まさに世間様々に大きな影響を与えてくれると注目されている




といっても、本人達は世間からの注目などサラッサラ関係ないとばかりに自由気儘にのんびり過ごしているが、まあいいでしょう









「それじゃ他にも暇な子達に荷物運びを頼んで皆で一緒に行きましょうか、愛来、蒼空、風彩」

「はい!」
《仕方が無いが、手伝おう》
「ふりぃ〜」








さて、次はこの二人に語ってもらおう

この兄妹は何故、ミリの元へ集い、慕い

今までその身を隠してきたのにもかかわらず、世間の前に姿を現したのかを――――…










(君達は、何を考えてる?)


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