「可愛い可愛い、私のシロナ。今のうちにいっぱいよしよししましょうね」

「…もう、ミリったら。あなたくらいよ、わたしをそういう風に接してくるのは……逆ならともかく、わたしもいい歳なんだから…」

「言ったでしょう?大きくなっても私にとって、貴女は可愛い可愛いシロナちゃんだって。……回りの眼が気になるなら二人の時だけ。その時はいっぱい、頑張るシロナちゃんをよしよししてあげちゃうから」

「………………、うん」

「本当に眼が視えないのがこんなにも辛い(本当に眼が視えないのがこんなにも辛い)」







「(私には分かります。今このパウダールームの中には神々しい光景が広がっているんだと。嗚呼、壁になりたい。壁になって美女達の仲睦まじい姿を眺めていたい。お外の警備がこんなにも辛いけど聖域を守る為なら仕事頑張れる。でもてえてえ姿を一度でもいいから拝見したい…壁になりたい……)」

《…この人間、安らかな死に顔したまま動かないんだが大丈夫か…?》





―――――――
――――









ミリとシロナがニシとミナミに化粧室に向かい、戻って来るまで約一時間は経過していた

戻って来たミリは開口一番に「時間が掛かってしまい申し訳ありません」と全員に謝罪をした。ミリの状態はミナミの口から報告を受けていたので全く問題は無いし、むしろ無事回復してくれたのならなにより。「謝らないでくれ」「回復してくれたのならよかった」と各自労いの言葉を掛けながらミリの戻りを歓迎した

誰がとは言わないが「(うおおおおおッこれでおっそろしい沈黙から解放されるぜミリおかえりいいいい!!)」という心の声を響かせていたのは余談である






「ミリ」

「はい」

「ほうれんそうは?」

「とってもおいしい」

「違うよね?」


「はい。報告相談連絡略してほう・れん・そうです」

「僕は言ったよね?社会人の鉄則だって。何か事を起こす前に報告する様にって。実践するにしても…限度があるよね?」

「はい。はい。おっしゃる通りです」

「次はないからね。次もしまた自分を追い込む事をやったら……分かっているね?」

「ぴえん」






とまぁダイゴの当然のお叱りに関しては自業自得として置いておくとして

ミリの休憩もあって時間は予定よりだいぶ延びてしまっていたのは事実で。もう大半の主題は伝え終えたのであとは今後ミリがポケモンマスターとしてどう動く予定でいるのかで今後の動きが決まる。そこは正式に本部からシンオウ支部へ通達が届く事になるだろう






「モニターの参戦組はセキエイリーグの代表でもあるけど、【聖燐の舞姫】が最も親しかった人達よ。今回の事件で色々と手を貸して頂いたわ」






進行役に戻ったシロナは最後の締めとして、カツラとマツバとミナキの紹介に入る

彼等はただここにいるだけじゃない。彼等もまた、貢献者。彼等の具体的な貢献の内容は省くにしても、三人はセキエイリーグで唯一シンオウの状態を知り手を貸す者として、今ここにいる。でなければカツラとマツバはともかく無所属のミナキが参戦出来るわけがないのだから






「そう、なんですね……【聖燐の舞姫】さんが、色々とお世話になっていた方々…」

『記憶がないと話は聞いていたからね…無理に刺激しないよう敢えてあのような自己紹介をさせてもらった』

「…ご配慮、感謝します」

『なら僕達から改めて、自己紹介をさせてもらおう








 マツバおにいちゃんだよ〜』

『従兄弟のミナキ兄だぞ!』

『カツラおじいちゃんだよ』

「「「「「なんて?」」」」」






またしても話が脱線する流れだし、しかもミリが帰ってきて早々に爆弾発言をするなんてセキエイ組は自由過ぎないか

主にシンオウ組の頭にコスモが広がった。おそらきれいである






「いやいやいやいや!お前ら一言もそんなこと言わなかっただろー!?」

『えー、これって身内ネタみたいなものだし?このネタは一番にミリちゃんに言ってみたかったんだよね!』

「マツバ、マツバ、空気読みなさい。今すっごく気の抜けた感じになってしまったぞ」

「おや、ミリさんは知らなかったのですか?お会いした事がないのであくまで想像ですが、【聖燐の舞姫】のミリさんでしたら笑って受け入れそうな気がしますが…」

『マツバが兄役で会話していたから口遊びとして知っていると思うが、私に関しては知らんな。なんせ最初はマツバの友という他人枠だったからな!やっとこさ身内枠になれたんだ、私も兄役として主張しようと思う!』

「清々しいドヤ顔だね……うーん、ちょっと羨ましい気もする」

「自分達だけでズルいぞ!俺達もその枠にいれろ!」

「そうよそうよ!ミリのお姉ちゃん枠は譲れないわ!仲間に入れなさい!」

『いやもうこれ以上入れちゃうと父親枠の扶養が大変みたいだから却下。君達は友達枠ね』

「「「はあああん!?」」」






シンオウ組が驚くのは無理もない。彼等がこうして仲良く会話するキッカケがこの会議で、話題もミリの事だったのもあって仲良くする事が出来たが―――セキエイ組、特にマツバとミナキからは一切そういう話題が出てこなかったから

話題として「ミリとの出会いはどうだったか、また関係性は?」という内容が出た時は、シンオウ及びホウエン組は出会いは各々話した後「ズッ友むしろマブダチ」「一週間の旅仲間」「読み聞かせ友」「ライバルむしろ姉妹」「親友であり部下でもあった」と己の関係性を偽りなく改めて言った。嘘を言う必要はない、しかし少し過大評価しているところがあるかと言われたら否定出来ない部分もあったりするのでまぁ知らぬが仏として

対するマツバとミナキは「ジムリーダーだからね、そこは必然的って感じだよ」「レンの繋がりでもあるが、私はしかとこう言いたい。スイクン繋がりで出会ったと!」と言った。それ以上の言葉は無くそのまま次の話題に移動した為、まさかこんな爆弾を抱えていただなんて誰が思うか







「……そちらにも、父親がいるのかね?」

『マツバ君のノリで出来たという意味では存在していてね…実は一緒に視聴している。訳あって顔は出せないが、しっかりと君達のやり取りを見ていたよ。安心してほしい、父親枠といっても戸籍上の父親がいるなら安心だと本人も言っている。彼女をよろしく頼む、…そう言っているよ』

「そうかね。…機会があれば会わせてもらいたいものだ」

『色々落ち着いたら、是非』

「にしてもそちらはおじいちゃん枠にしたら随分若いんじゃないか?その流れなら私がおじいちゃん枠になりそうなんだが…ふむ、しかし父親枠は譲るつもりはないが、そこら辺はどう考えているのかね?」

『おっとこれは予想外』

「アスランお前は何を言っているんだ……」

「楽しまれてますね……」






正直な話、彼等は「セキエイ組の絆(仲良し度)はその程度、俺達の絆(仲良し度)と比べたら薄いものだ」と思っていた。比較して、関係性がこちらの方が有利だと知り、誇らしくも思っていた

それがまさか、セキエイ組は「家族」だと主張してくるとは。おにいちゃんis何。従兄弟の兄とはなんぞや。おじいちゃんとか逆に笑えない。立ちポジションがいやにリアル過ぎないか。リアルおままごとかよ。そもそも【聖燐の舞姫】公認じゃないのがちゃんちゃらおかしな話である

当然血縁のない言葉遊び程度の関係。けれどその関係を大事にしているから、彼等はこの場に集う。そしてマツバとミナキは言う、今まで黙って言えなかった分まとめてドドンと言ってやるとばかりに。「私達の方が家族だから仲が良いに決まっている!」「なんだったら僕なんて一ヶ月一緒に暮らしてたし!彼女いないから問題なかったし!ミリちゃんの手料理美味しかったよ!」「本当に一人だけ良い思いをしていて羨ましいぞマツバァ!」と目茶苦茶火に油を注ぎまくった。当然結果は大炎上、大ブーイング。目の前に二人が居たら今頃壮絶なポケモンバトルが繰り広げられていただろう。本人達は気にしないでドヤ顔等をしていたが



改めてもう一度言おう

残念な事に【聖燐の舞姫】のミリはこの件に関して全く知らないし、認知すらしていない






―――さて、【聖燐の舞姫】ではないが【盲目の聖蝶姫】であり、事実上【聖燐の舞姫】だと宣告された当の本人はというと








「………………?(?_?)」






憐れにも無限のコスモの中で思考がストップをしていた







「ミリ様、ミリ様、お気を確かに」

「ブーイ」
「ブイブイ」

「まぁ…そうなるよな」

「だから俺は言ったんだ…あの人が言っていた様に、本人預り知らずに話が飛躍して収集着かなくても俺は知らないと…」

「もう手遅れだろうな…特にナズナ、お前も…」






宇宙猫ならぬ宇宙イーブイを背負わすミリをゆさゆさ揺らして正気に戻そうとするゼル、固まった主に首を傾げる白亜と黒恋、やれやれと肩を竦めるレン、大きな溜め息を零すナズナに、そのナズナを同情の目で見るゴウキ

彼等四人も当然マツバの暴走に巻き込まれている為、ミリの反応には「だろうな」という気持ちしかない。会議の為になんだかんだ連絡を取り合っていれば、マツバの魔の手とミナキの悪乗りが当然襲いかかるわけで。少なくても今日の会議でナズナが憐れにも兄発言をしでかしているからお察しである

【聖燐の舞姫】のミリがもし今の話を聞いたら大爆笑しながら喜んで受け入れそうな気もするが、今のミリは【盲目の聖蝶姫】。ポッと出の初対面の男共に突然家族発言されればこんな反応になってしまうのは無理もない話である







『ちなみにね』






テンションを上げたマツバの眼が、キラリと意味深に光る


嫌な予感がする―――と察知した頃には時すでに遅く






『そこにいるナズナさんは僕達のおにいちゃん枠で長男さ!』

「「「「「は?」」」」」

「(全てを諦めた顔)」

『ゴウキさんは次男枠だな!』

「「「「「は?」」」」」

「(頭を抱える)」

『僕が三男枠で、ミリちゃんの下に弟枠もいるんだよね、だから四男長女の五人の兄妹!』

「おいマツバその辺に…」

『そして極めつけが!』







ビシッ!!!!!とマツバはモニターに向かって指をさした







『ミリちゃんの左隣に当然の如くいる男こそ、すっっっっっごく!気に食わないけど!』

『ミリ姫の恋人枠だ!』

『おにいちゃんは許さないけどね!』

『従兄も許さないがな!』

「「「「は?」」」」

『さらにそこにいるゼルは恋人枠のレンの双子、ミリちゃんを虎視眈々と奪おうとする枠ね。おにいちゃんは許さないけどね!』

『断ち切りたくなるぜ!』

「「「「「は??」」」」」

「相変わらず泥沼設定じゃねーかミリに何聞かせてんだ!」

「おいお前等いい加減にしろミリ様に余計な情報を入れるんじゃねえ!」














「こっ………こい、び………







 とぉ…………?」

《大変だ主が処理落ちした》

「「ブイブイ!?」」








だろうね






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