「アルフォンスさん、という方にはお世話になっていまして…よく気に掛けてくれたんです。ポケモンマスターになった時も真っ先におめでとうと連絡を頂いて……うん、やっぱり似ています。アルフォンスさんは珍しいオッドアイでした。…カシミヤブルーとピジョンブラット、その白銀色の髪色は彼ならではの特徴でしたから」






闇夜の眼を借りながらミリは、ほわほわした笑みを浮かべながら言う

アルフォンス―――まさかミリの口からその名が出るとは思わなかったレンと、ミリの隣りにいたゼルは小さく言葉を詰まらせた

勿論それは回りにいた全員にも該当するわけで、






「シロナ、アルフォンスさんは元気?」

「ッ…」

「ユリさんと相変わらずラブラブしている?」

「……ミリ…」

「アルフォンスさんってね、すっごくユリさんの事が大好きなんだ。あ、ユリさんっていうのはアルフォンスさんの奥さんで……って流石に六年同じ仕事していたら知ってるか。あの二人面白いんだよ〜ぶわっと薔薇の花が背景に咲いているじゃないかっていうくらいイチャつき始めるの。それは今も変わらないかもね〜」









「ユリ…」

「あなた…!」



ぶわっっ





《喧嘩して最後この流れになるのはこの二人には日常茶飯なのか?飽きないのか?》
《写真に薔薇が写らないのが悔やまれるね…》
《いつか写真を加工するのもありだな》
「…」

「仲良いねぇ。でもなんだろう、このデジャヴ感…私は何処かで見たのか…もしくはノリでやった事ある様な妙な気持ちになるのはなんでだろ…?」







懐かしいね〜闇夜、と久し振りの友を思い出しながら言うミリに、シロナはただただ沈痛な面持ちでミリを見返すしかない



ミリは知らない

二人の末路を


知らないからこそ、ミリはシロナに話題を振る


――――当時の、楽しかったあの頃を








「…………頃合、か」

「…そうだな。十分休憩は堪能できただろう」

「……ダイゴ、次の話を進めてくれ」

「…いいのかい?」

「あぁ。…ゼルジース、ダイゴに二人の件を言ってもらう。構わないよな?」

「…………いいだろう」








嗚呼、せっかくミリの気持ちが持ち直してくれたというのに


自分達は更なる絶望を、ミリに伝える事になるだろう



レンとダイゴとゼルとやり取りと、全員のピリついた雰囲気に気付いたミリが「?」と首を傾げる中―――レンは改めて、ミリの前に対峙した






「改めて自己紹介だ、ポケモンマスター。俺はレンガルス=イルミール。お前の察しの通り―――ユリ=イルミールとアルフォンス=イルミールの、息子だ」

「!」

「そっちのゼルジース=イルミールは俺と双子の兄弟だ。訳あって生き別れ、再会したら総監たァいいご身分だよなマジで」

「おいテメェふざけた事をミリ様に言うなこっちだってなぁ色々大変だったっつーのにこの野郎」






レンはミリの事を、ここで初めて「ポケモンマスター」と言った

つまりそれはこの休憩時間が終わった事を告げ、次の話があるのだとミリを気付かせた。先程のほわほわした笑みを無くし、ユリとアルフォンスの友人だった顔を隠し―――ポケモンマスターとして、すぐさま気持ちを切り替えた


しかしそれでも―――闇夜の眼を借りながら、ミリは嬉しそうにレンとゼルに言った






「ユリさんと、アルさんの…息子さん。それが、貴方達………そう、やっぱりそうなのね。波動やオーラが似ているのも納得……ならユリさん達は、念願の…家族四人で、再会が出来たんですね……フフッ、よかった………」

「………お前と両親がどういう関係だったかは知らねぇが、友人だった事は知っている」






嗚呼、嗚呼

なんて世界は残酷で出来ているのだろう






「俺達の両親―――アルフォンス=イルミールとユリ=イルミールは、」






こんな言葉、

言いたくなかったし、

―――聞かせたくなかった






「五年前に『彼岸花』の手によって―――殺されている」









「………………、……………………………………………、…………………………………………、










………………、は?」








嗚呼、また


絶望を知らせる亀裂が走る





* * * * * *










『……ついに、彼女に話す時がきたか…』






誰かの声がした






『さて、彼女に話す事で彼女が次に起こす行動は大体予想がついている』






声は言う


声は思案する


声は―――現在起こっている出来事を、静かに見守る






『………ゼルジース、お前がどれだけ聖蝶姫の手綱を握れるかによって、今後の展開に大きく影響していくだろう』





この声は何処から聞こえるのか


一体誰なのか、






『しかし、彼女はお前が手綱を握れるほど……お淑やかな子じゃないぞ』






その答えを知るのは、まだ少し先の話






『レンガルス……』






声は言う



声は――――呼ぶ







『早く、こっちに気付いてくれ』



『お前には既にアクセス権利を与えている。随分と前だがな。気付いていないのなら、忘れているのなら、お前は…そこまでの男だったという事だ』






声は、気付いてくれるのを待っている


声は、とある人を待っている


声は――――






『なによりもこの力は、聖蝶姫の隣に立てれる"唯一の武器"。俺が唯一渡せられる、唯一の能力。それが持てない限り、お前はこのまま本当に――――離れ離れになってしまうぞ』










(そうして声は)(ただただ静かに待っている)


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