「ミリの奴、本当に行っちまいやがった」




ミリの後を追って部屋から出たレンが眉間に皺を寄せて戻ってくる。ミリを止めに部屋から出たは良いが、すぐには出ないだろうと慌てて追いかけてもミリの姿は何処にもいない。探し様もなかったので渋々戻って来たレン。その表情はかなり心配しているのだろう

気温はかなり低くなっている。迎えに行った時はあんな格好でも平気と本人は一点張りだったが、本当に大丈夫なのか




「…どうやら、怒らせてしまったみたいだね」

「悪かったな、アイツはああいう奴じゃないんだ」

「あぁ、勿論分かっているさ。…むしろ彼女の言っている事は正しい。私は、彼女を充分に怒らせてしまった」





彼女は私とバトルがしたいがためにわざわざこの地に足を運んでくれた。けど、私は断ってしまったのと同じだ。とカツラは頭を振う

確かに、とレンは思う。自分だったら気分を損なうに違いない。けどそれはバッチを貰えなかった話であって、今回はバッチを無償で貰える話だ。自分だったら遠慮なく貰う、そこまで考えたレンはフッと笑う





「アイツは真面目な奴だ。いや、生真面目か?流石にそこまでとはいかないが、アイツの中でバッチを取る定義があって、それを達成してこそ受け取れるバッチだと思っているんだろうな」





そこまで言った後、レンは持っていた荷物を抱えてドアの方に向かって行く

どうやら出て行くらしい。カツラは慌ててレンを呼び止める





「…君は何も聞かないんだな」

「聞いてどうする。俺もミリが言っていた台詞と同じ気持ちだ。そんな奴に、色々聞く程俺は図々しくない」

「…君はナズナの話を聞きにきたのだろう?」

「あぁ、そうだったな。…だが、気が変わった。とりあえずこの話は保留にする。どの道お前の『錠前』役を話して貰うにはミリが必要なんだろ。別に逃げやしないんだ、気長に待つぜ。そうだろ?」





ドアノブを捻り、ドアを開ける。ドアを開けると廊下から冷たい風が部屋の中に入って行き、近くにいたポケモンが身震いした

それに、とレンは口を開く




「いくらポケモンがいても、あんな寒い所にアイツを置いたままには出来ないからな」







* * * * * *







その頃、ミリは....






「寒っ!!」





ふたごじまの麓の近く、荷物を片手にただ黙々と歩くミリは嘆く様に叫ぶ

外の気温はかなり低くなって、寒さが痛さになってミリの身体を襲う。保温状態になってみたは良いが、さっきまで温かい場所に居たものだから、先程の温度に慣れてしまった。そのせいか、むちゃくちゃ寒さを感じてしまう。研究所から出てから、くしゃみが止まらずミリを襲う。風邪、ひいたな。ミリは冷静に思った

なんで格好付けて研究所から出たんだろう、今更になって後悔した





「くしゅん!この時に限って羽織るものないってマジ私ドンマイじゃん!」





なにせふたごじまでジムを探すだけで時間を潰してしまったのだ。ミリの頭の中では夕方には決着が着いていた筈だった。ジムがあんな所にあったなんて、それさえ分かればこんな寒い思いはしなかった

この際バッチを貰っても良かったかもしれない。またもや自分の真面目を呪い、後悔した





「白亜と黒恋は寝てるでしょ〜、蒼華と時杜は…あー、寝てる。マジでか。私も早く寝たい」







ボールの中にいるポケモン達はおやすみタイム。そんな状態で皆を出す程鬼ではないミリは仕方なくボールを異空間の中にしまいこんだ

その時、ミリの視界にある物が写った





「…洞窟?」





人気がない所にある、地面を裂いた様な洞窟が目の先にあった。ミリは足を止めて洞窟の方に近付く。まるで引き寄せられている様で、ミリは洞窟の前に立ち止まる

中を確認してみると、どうやら奥に続いているらしい。風の音が微かに聞こえてくる。危険な物は特になさそうだ。そう判断したミリは、吸い寄せられる様に暗い洞窟の中へ入って行った












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