少しだけ、昔話をしましょうか



今宵語るは、六年前


人々の記憶から消され

行方を眩ませた、一人の女の話





その者の名前は、

『  』



又の名を



――盲目の聖蝶姫――




―――――――――
――――――
―――














盲目の聖蝶姫


シンオウとホウエンの者なら知らない人など居ない、有名な存在

何故ならば、彼女はトップコーディネーターでもあり、ポケモンマスターでもあるからだ






蝶の様に舞い蝶の様に戦場を翔け抜け、漆黒の髪を靡かせその七色の瞳は全てを見抜く。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合とも言われる様に彼女は美しく儚げで、手持ち全てが色違いで実力は相当なもの。彼らの前に威風堂々と立ち、また全てのポケモンを従わせるその姿を「聖蝶姫」と。――そして彼女は盲目だった事から名付けられたのは、そう。「盲目の聖蝶姫」だった






彼女は、強かった

ポケモンもそうだったが、彼女自身も







彼女の微笑は全てを包み

彼女の存在は回りに華を咲かす


博識な彼女は皆の人気者

ポケモン達にも、慕われていた







人々が注目するのは彼女の話

テレビ、雑誌等々、マスコミは彼女の姿を追いかけた


しかし彼女は蝶

誰にも捕まらない、囚われない蝶


それが逆に、民衆を熱くさせ、彼女の存在を追いかけ続けた






彼女と共に歩むのは他のポケモンと違った、色違いのポケモン


優雅に歩む空色のスイクン

可憐に翔ぶ紅色のセレビィ

悠然と立つ緑色のミュウツー



彼らの壁は厚く、強く

彼らの牙は鋭く、強い



他にも彼女を守り、彼女の牙となる色違いのポケモンは彼らの後ろで存在を顰める








蝶に魅入られた者は、蝶を追いかける

彼女に魅入られた者は数知れず、彼女を追いかけた者も数を知れない






フラリと現れ、フラリと姿を消した彼女

七年前にシンオウに現れ、偉業な速さでシンオウトップコーディネーターになり、同時期に殿堂入りを果たした彼女は止まる事を知らず――最南のトップコーディネーターにも名を馳せ、そしてチャンピオンとして一年間チャンピオンの座に座った。無敵無敗を突き抜けた彼女は屈強な壁として挑戦者の前を阻んだ

彼女の実力を、知識を評して、ポケモンマスターとしてリーグは認め、人々は認めた



そしてその一年後の六年前、彼女は忽然と姿を消した







彼女は今、何処にいるのか


何故、彼女は消えなくちゃならないのか

どうやって、彼女は人々の記憶から忘れ去られたのか










さぁ、これから話すのは

彼女の事を知り、彼女を慕っていた者達のお話



彼らは何を語り

彼らは彼女をどう思っていたのか

彼女の、本当の姿とは一体…








振り返ってみよう

あの頃の、自分達を


思い出してみよう、彼女の事を












記憶の力は、解き放たれた












Jewelly flower - 3 -

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(さぁ、過去の巡りの旅へ)



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