今のバトルを一言で説明しろと誰かが言ったらなら、誰が巧く一言でまとめられようか

レッドとブルーは唖然としていた。レンの腕の中にいる白亜と黒恋はあまりの衝撃に目を点にしていて、レンも目を張ってフィールドを見ていた


目の前に広がるのは地面は抉れ、壁は氷付けになっている所がしばし見られる。地面の所々には目を張る程の大きな氷の結晶が佇んでいた

――その中に、氷付けになり無惨な姿になっているポケモンの姿があった





「な……」





グリーンは驚愕の表情を浮かべ目の前の光景を凝視していた


自分の目の前には、自分のポケモン達が氷付けにされたり地面に瀕している姿――そして、目の先にあるのが自分のポケモン達を完封無きまで叩き潰した存在が、優雅に佇んでいた


色違いの、スイクンとセレビィ


レンから話は聞いていたが、まさかあの伝説と幻と言っていい程のポケモンを持っていたとは。マスク仮面時以来、しかも色違い――。だがしかし、レンの読み通り驚く事はあっても特別騒ぐ事は無かったグリーンは持ち前の冷静でバトルに望んだ

しかし、これは一体どういう事だ





「…まさか、アイツらの実力があれほどあるなんてな…」





レンが小さくポツリと呟く

腕にいる白亜と黒恋はもう真っ白にな状態でレンの呟きに素直に頷いた





―――圧倒的だった




蒼華が咆哮を上げる度に震え上がるプレッシャーが猛烈な冷気となって襲いかかる。口から放たれる冷徹な光線は無慈悲にグリーンのポケモンに降り懸かり、大きな結晶と共にソレを閉じ込める。攻撃技など食らっても全然平気とする蒼華に、誰も成す術は無い

時杜がフィールドを踊れば鋭い風の刃が降り注ぎ、ポケモン達を襲う。攻撃型ではない時杜であってもその実力は計り知れない。相手の攻撃を小柄な身体で風の様に軽々と避け、攻撃で押しまくる蒼華のサポートを軽々とこなしていく姿は、まさに蒼華の第二の目と言ってもおかしくない


グリーンの手持ちが、まるで手のひらに踊らされている様に無惨にも戦闘不能になってしまった



青い体毛を靡かせ優雅に佇む蒼華に、淡く赤い光を放ち宙を踊る時杜

伝説、幻にしては――実力が違い過ぎていた





「やったぁあああ!蒼華、時杜お疲れ様!やったやったーー!勝った勝った勝った!!」





沈黙のフィールドで響き渡る、ミリの歓喜の声

満面な笑みを浮かべて腕を広げ、自分の元へ戻って来た蒼華と時杜を抱き締めた。時杜は嬉しそうにミリに頬ずりをし、蒼華はミリにすり寄る。ミリは嬉しそうに微笑み、二匹の頭を撫でて笑った。レンの腕の中にいた黒恋は腕の中から抜け出してミリ達の集合に入り、白亜も続けて入っていく。白亜と黒恋が加わった事で、互いを褒め合う姿は見てて微笑ましくなる。が、周りにいる者達は今だ動けないでいた





「……色違いのスイクンとセレビィだけでもびっくりなのに…強過ぎだわ、まさかグリーンのポケモンがあんなにも簡単にやられるなんて…」

「グリーンの奴、きっと全力だったと思う。控えのポケモンでも充分に強いのは俺やブルーだって知っている。…まさか、だよな。俺達の想像を超えちまっている」





ミリが持っているのはイーブイだけじゃない

そうレンから教えて貰い、ミリはイーブイだけで挑むつもりだ、とも教えて貰った。始めは好奇心だった。イーブイだけであの実力なら、他のポケモンならどう戦うのかと。聞けばミリの家で互いのポケモンを紹介しあった時には既に噂の二匹は存在していたらしい

人に見せたくなくて隠していたのか、それとも最終兵器なのか

本当に、好奇心で、ミリの噂の二匹を見たいが為にグリーンは敢えて「全員が戦闘不能になったらバトル終了」だと言った。実際にバトルして引き分けになり、ミリは素直に負けを認めた。が、グリーンはそれを認めなかった。始めは言葉の真意を理解していなかったミリだったが、レンの言葉で気付き、そしてバトルに望んだ



本当にただの好奇心


それがすぐに、驚愕へ変わった








「一時はどうなるかと思ったが、心配する必要はなかったみたいだな」





レンはフッと笑い、呟く

実はこのバトルはほぼ遠回しでレンが仕組んだ事だった。仕組んだと言っても、ただグリーン達に蒼華と時杜の事を少し伝えただけ。バトル狂だと言ってもおかしくない彼らにこの事を伝えれば、是が非でも戦いたいと勝負を仕掛けるだろう。敢えてポケモンの名前を言わなかったのも、その為だ。完璧にレンはグリーン達の性格を把握しての作戦だった

実際にバトルを見れば、クチバジムバトルよりかなり強くなっている蒼華の実力に驚くが、元々蒼華が自分のスイクンよりずっと強い事は気付いていた。時杜の実力にも舌を巻き、読み以上の戦いをやってくれた






「レン!!」






白亜と黒恋を腕に抱き、満面の笑みでこちらを振り向くミリ

太陽みたいなその笑みは、自然とレンの表情にも笑みが浮かばせた






「お望み通り――勝ったよ!」






全てはその笑顔が見たい為









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