「でんこうせっか!それからもう一度アイアンテール!」

「「ブイ!!」」

「迎え撃て!れんぞくぎり!そしてつばさでうつ!」





ミリの指示で白亜と黒恋は持ち前のコンビネーションでフィールドを駆けて行き、白亜はリザードン、黒恋はハッサムに向かって突っ込んでいく。目にも止まらない、コロシアム以上にスピードを上げた二匹に観戦していたレッドと、隣りにいるブルーも初めて見る息の良いコンビネーションに目を張る

グリーンの指示でそれぞれ向かって来る相手に向かい、リザードンは自分の翼で、ハッサムは両腕で守る。ガギィィイン!とまた大きな金属音が鳴り響き、リザードンとハッサムはそのまま白亜と黒恋を振り払った。振り払われた白亜と黒恋はその勢いを利用して、次の指示であるアイアンテールを二匹に向かって振り降ろす。二匹がすかさず防御をとった為また金属音が鳴り響き、勢いが打ち消し合い今度は双方が吹き飛ばされる




「白亜、シャドーボール!」




休む暇を与えずにミリは第二の攻撃に入る

白亜から放たれたシャドーボールはまっすぐにリザードンの方まで飛んで行く。グリーンの「迂回して避けろ!」という指示でリザードンは避けるが、既にでんこうせっかで駆け出していた黒恋がリザードンに突撃する

と思いきや、ハッサムがリザードンと黒恋の間に入って来てリザードンをかばう。両腕を遣い、黒恋のでんこうせっかを受け止めそのままシザークロスの攻撃に入った。しかし攻撃を予知していたのかその攻撃を避け、反動をつけて白亜の隣りに弧を描いて着地する





「…やはりな」




グリーンは納得した面持ちで呟く

呟きが耳に入ったのか、怪訝そうな顔でミリはグリーンに視線を向ける





「コロシアムで初めてお前のバトルを見た時、違和感を感じた。『何故、あのイーブイは指示無しで攻撃をし、まるで背中に目がある様な躱し方をしているんだ』と」





口を動かしていない筈なのに、指示をされていない攻撃を仕掛ける二匹

イーブイ達が相手のポケモンの攻撃を避ける時もまるで背中に目がある様な躱し方。死角の場所を狙っても難なく躱されてしまう

一瞬だったから、偶然かと思われる

あまりにも自然的で、偶然だった





「指示無しは経験を積んだトレーナーとパートナーがお互いに信頼し合えば出来るとおじいちゃんが言っていた。それを考えるとミリとその二匹の絆は強い事が伺え、ミリが相当な実力者だと納得し、頷ける」

「…………」

「…しかし、俺とレッド、シゲルとサトシはまたある事に気付いた。気付いた時には愕然としたな。『何故攻撃を食らう三秒前には既に攻撃を避けているのか』」

「………」

「遠距離なら三秒もあれば避けられるが、あの時の様に接近戦なら尚更だ」





グリーンの脳裏にはあの決勝戦

ゴウキのカイリキーが四本の腕を使って白亜に攻撃を繰り返しても全然当たらない。いや、当てられないのだ。それもそのはず、二匹は攻撃を食らう三秒前にはすでに攻撃の起動を避けていたからだ


現に今だって、ハッサムがでんこうせっかで突っ込んで来た黒恋にシザークロスを食らわそうとしていた時も軽々と避けていた。まるでその攻撃が来る事を分かっていた様に。ミリ自身が「避けろ」と命令するわけでもない、いわば独断での回避








「俺はその戦い方をする者を聞いた事がある。ダブルバトルでは絶大なコンビネーションを見せ、シングルバトルでも圧倒的な力で相手を倒す。相手のポケモンを瞬時に見極め、その頭の回転力で転機をこちらに向けフィールドを征する者を――




今から六年前にシンオウ地方のチャンピオンに勝ち抜き、その後もホウエン地方のチャンピオンに名を馳せ、ポケモンマスターとして輝いた」






グリーンの言葉にレンがピクリと反応した

黙ってミリがグリーンを見る中、グリーンは言葉を繋げた








「その者は――"盲目の聖蝶姫"」







ミリの目が微かに開かれる

しかしグリーンはそのミリに気付かずに、視線を変えてレンに向ける。不服そうに…グリーンはレンに問い掛ける





「レン、お前なら分かる筈だ」

「…あぁ、盲目の聖蝶姫なら話は聞いた事がある。グリーンの言う通りの実力者で、負けを知らない絶対的な存在。…名前の由来はソイツがまるで聖なる蝶みたいだと誰かが言ったのが始まりだったな。…そしてソイツは――目が見えなかった」

「―――――!」

「そうだ」






視線をミリに戻したグリーンは、ミリを見て言葉を続ける






「まさしく今のお前の戦い方は、盲目の聖蝶姫と同じだ」

「………」

「ミリ、俺とお前が初めて出会った時と同じ質問をする






――お前は一体、何者だ?」






グリーンの言葉が静まったジムの中に木霊する

グリーンと、そして観戦していたレッドとブルーはミリの言葉を待つ。思う事は同じだったり違っていたり、それは様々だが、今のグリーンの問いはまさに三人が今最も聞きたい事だったからだ。レンも視線を向けはしなかったがミリの言葉を静かに待っている

フィールドでリザードンとハッサムと対峙していた白亜と黒恋は戸惑いながらお互いの顔を見合わせ、自分の主を心配そうに見上げる


ミリはただ静かにグリーンをまっすぐ見つめていた。視線を外さずとも、全員がこちらを向いているのは分かっていた。そして全員がその質問を一番に聞きたいのも知っていた――

ミリは心中で小さく息を吐く








「――グリーンの言いたい事は重々分かった。けど私には…何の事だか、サッパリ分からないね」





ミリの手がゆっくりと持ち上がって、パチン――と指を鳴らす

指が鳴ったのと同時に白亜の身体が進化特有の光を放った。全員がハッと白亜を見る中で、光が収まったそこには――真っ白いサンダースの姿があった






「私の名前はミリ。聖燐の舞姫――。盲目の聖蝶姫だかなんだか知らないけど、私は聖燐の舞姫よ」









その瞳は動揺のエメラルドの瞳――






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