「話は済んだみたいだな。ジムトレーナーがいない代わりに、俺が審判を勤める」

「何でお前なんだ」

「不満を言う前にそもそも一人位ジムトレーナー雇っとけよ」

「チッ」

「あ、あはは…」





審判を名乗り出たレンに、目の前のグリーンは険悪な表情を浮かばす

…本当にレンが嫌いなのね。ここまでくると本当に苦笑いしか出来ない

レンも被害が被らない、フィールドが描かれていたら多分審判が居そうな場所に立っていた





「これよりジムリーダー・グリーン対挑戦者ミリの、グリーンバッチをかけたバトルを始める



お前ら、準備はいいな?」

「あぁ」
「えぇ」

「なら先攻は挑戦者からだ」

「了解!」





レンがこちらを振り向く

審判を勤めるのは、公平な立場にいなくちゃいけない。しかし、こちらを振り向いたレンの口元はいつもの笑みを浮かべていた

そしてゆっくりと口が動き、小さく「頑張れよ」と――




私はフッと笑った






「さぁ、カントー地方最後のバトル!ここまで来た私達の成長を見せつけてあげなさい!


真白き光、漆黒の闇


白亜、黒恋!



Dancing like the butterfly!!」





手に取り出した白と黒のボールを高らかに大きく投げ出した

二つの白と黒のボールは大きく弧を描く。パァァアッとボールの二つが開き中から色違い特有の白と黒の光が放たれた。放たれた光は地面の上に止どまり、ある形へと姿を変える

光が収まり、白と黒の色違いのイーブイ――白亜と黒恋の姿がそこにはあった

元気良く「「ブイ!」」と鳴き声を上げ、目の前に立つグリーンを見上げ、構えた。今すぐこい!とでも言う様な姿に私は不敵な笑みが漏れる



修業で私は出来る限りの事をこの子達に全て叩き込んだ

後はこの子達次第

今思えば昔よりも、充分に成長してくれたと痛感する。初めて出会ったあの頃は強いけど脆かった白亜と黒恋が、こうして最後のジムリーダー…グリーンの前に威風堂々と立っている姿に…私は言葉に出来ない何かがつまり、静かに感動した

この子達はここまで頑張ってきた

次は私の番

私はこの子達を信じ、私が持てる全ての知識を持ってグリーンを倒す。それが、私が二匹に送る勝利のプレゼント






「コロシアムの時と、以前お前の家で見た時より格別に成長しているのは分かる。――が、俺は他のジムリーダーとは違う事を教えてやる



行け!リザードン、ハッサム!」





グリーンも高らかにボールを投げると二つのボールは弧を描き、ボールが開かれた

光と共に現れたのは、グリーンの初めてのポケモンにして相棒であるリザードンに、ジョウト地方のシジマ直伝の「心」で見えない相手を見切るグリーンの戦法に最も通じているであろうハッサム

リザードンを繰り出したのは相棒でパートナーだから、ハッサムは初めて出会った時のリベンジのつもりらしい。大体は予想していた。グリーンに手持ちを紹介してもらったあの時、特にこの二匹の瞳の色が違っていたから

フィールドに出たリザードンとハッサムは立ち憚る壁の様に白亜と黒恋の前に咆哮を上げる。そちらもいつでもかかってこいやぁ!と言っている様で、リザードンは天井に口から灼熱の炎を吹き、ハッサムは両腕を振り上げシャキッと空を切る

リザードンとハッサムを前に、白亜と黒恋は臆する事なく威嚇する。以前だったら絶対にビビっていた筈の二匹が、今では頼もしくてしょうがない




「(とうとうこの日が来た)」





小さく身震い

久々の――武者震い


何時ぶりだろう、こんなに嬉しくて…こんなにも燃え上がる気持ちになるのは。むしろ武者震いだなんて普段はしないのに――










「白亜、黒恋。――勝とう!」

「「ブイ!」」





「それでは―――試合開始!!」






(光は輝き)(闇は忍び寄る)(私達は、もう何も怖くはない)


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