「なぁ、ミリ」

「何?」

「今回のバトル、やっぱり白亜と黒恋でいくのか?」

「えぇ、もちろん。あの子達はグリーンとのバトル、楽しみにしている。私はあの子達の勝利への手伝いをするだけ」





上空を飛行中に不意にレンが質問を投げ掛けて来た

振り落ちない様レンに支えて貰っている為、顔を向けはしないがその質問に当たり前だと答える





「蒼華と時杜は出さないのか?」

「…あの子達は伝説と幻。あの三人はただでさえ様々な経験をして伝説のポケモン達と出会って来ている。…そう安易に見せられないよ。それに蒼華と時杜は古株なだけあって強い。…きっとすぐにでも決着が着くでしょうね」





これは本当の事


蒼華は強い、むしろ強過ぎる

私には分かる。レンと組んだ初めてのバトル、アレは実力の半分も出してなんかいない。伝説だから強い、のもあるかもしれない。でも蒼華は昔の【私】の手持ち…あの殺伐とした時代を生き抜いた実力は相当なものに違いない



時杜ももちろん強い

時杜が仲間になってから戦闘に出していないから詳しくは分からない。でも強いのは分かる。図鑑で色々見てみれば読み通り、どの能力がかなり優れていた。技を見ると、押せ押せな実力行使の蒼華と違い専ら回復系になっている。やっぱり時杜も蒼華と同じで殺伐とした時代を生き抜いた強者で、実力も相当なもの

そんな二匹が揃ったら、きっと凄い事になる。トレーナーで強さは変わるって言われているが、あの二匹には関係ないでしょう。むしろ今の私に合わせて実力を調整してくれている…もし、私がトレーナーとして本気を出したら、多分大変な事になりそうだ





「ブルー!俺の腕が既に限界に近いんだけどー!」

「我慢しなさいよそれくらい!」

「(うるさい…)」






そんな二匹を、あの三人が見たらどう反応するだろうか





「きっとレンのスイクンを出したらびっくりするでしょうね。だってあの三人とスイクンは顔見知りみたいだし、そのスイクンの色違いの蒼華、そしてセレビィね時杜が出てきたら…面白い事になりそうだね」

「アイツらが俺のスイクンを知っているなら、別に出しても平気だろ。お前が言う様々な経験をしてきたなら、いちいちそんな事で驚かないだろ。隠す必要は何処にもないぜ」

「…でも私は今回も白亜と黒恋でいくよ。そのつもりで此所まで来た様なものだから」





レンの言う事もごもっとも

今更三人に見せた所で、驚くだけでそれ以上はない。なら見せても大丈夫、だと思えてしまうけど…





「(最終手段、かな)」





あまり使いたくない手だけど





「にしても…どうしていきなり?」

「いや、別に。ただ気になっただけだ。敢えて言うなら…蒼華と時杜は、本当にそれでいいのかと思ってな」

「え…?」

「アイツらだってポケモンだ。ずっとボールの中だと退屈だろ?」

「そりゃ…まぁ、そうだね」

「たまには一発バトルさせてやるのもいいんじゃねーか?あの二人がどれだけ力を秘めて、お前がどれだけの実力者にしてみても、グリーンやレッドなら良いバトルでもしてくれる筈だぜ」

「その選択にレンは入っていないのかな?」

「さて、知らないな」





ククッ、と視線を逸らし笑うレンに私もつい笑ってしまう

異空間に意識を集中させてみると、二匹は見た限り普通そうだったけど何処か退屈そうにも見えた。確かにレンの言う通りで一度はっちゃけさせた方がいいのかもしれない。特に時杜の実力も分かる良いきっかけにもなるし、二匹がどういった戦いが出来るかが見れるはず




「着いたーー!」




レッドの疲れた様な声が耳に入る

下を見てみると、町があった。どんな町だかは視力のせいで良く見えない。でも、緑が沢山あるその町はトキワシティだとすぐに分かった

ジムに向かってグリーンが乗るリザードンの後に続いて降下をする


ジムの前に降り立ち、レンの手を借りて地面に足を着ける。此所までありがとう、とトゲキッスに頭を撫でて私は目の前にそびえ立つ建物を見上げた





やっと此所まで来た、トキワシティ

そしてカントー最後の、トキワジム






「ミリ」




リザードンと並ぶグリーンが、私の後ろに立っていた

振り返った私に、グリーンはフッと笑った





「よくここまで来た、ミリ

いや――聖燐の舞姫

ようこそ、トキワジムへ」

「この時を待っていました。貴方に挑戦を申し付けます、カントー地方最後のジムリーダー、グリーン」






お互いに火花が散った






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