スイクンの背に乗って現れたレンは怒りと寒さに息を切らす。再会直後にいきなり放たれた拳骨がかなり痛烈で強烈だったのか叫びにならない声を上げながら頭を抑えるミリ。高熱な状態な為ダブルパンチでさぞ痛いだろう。スイクンの背に降り、スイクンをボールに戻したレンはつかつかとミリの元へ歩み寄り、痛みで蹲るミリの前に立つ

仁王立ちする姿は見上げなくても恐怖を感じた。そんな気迫を持つレンは相当に…いや、目茶苦茶怒りのマークが分かりやすい程に怒っていた。引きつった顔でミリを見下ろすレンの顔は…いつぞやのマサラ名物に怒っていた時を思い出させる

ミリは意を決心して恐る恐るレンを見上げる。完全に見上げる前にはレンがグイッとミリを立たせた事により、嫌でも視線が合う事になってしまった






「…今まで、何処にいた」






普段より声のトーンが低い

月光で光るピジョンブラッドの瞳が鋭くミリを刺し、ミリは初めてレンに恐怖した

視線を逸らそうとすれば、させないぞとでも言う様にレンの手が顎を掴みクイッと上に持ち上げた。完全にミリは逃げ場を失った





「もう一度言う。今まで何処にいた」

「…洞窟の、中に」

「こんな寒い中、一人で洞窟にいたのかお前は」

「………」




コクンと素直に頷いたミリ

対してレンの方は…素直に答えたのが仇だったのか既に切れていたのか、ミリの肩をがシッと掴んだ


我慢の限界だ、とレンは零した





「…本当に危機感がなさすぎだ!」

「!」

「言った筈だぞ、何があるか分からない…そんなご時世な中でいつ襲われてもおかしくない時にどうしてお前はそんな無茶が出来るんだ!野生のポケモンだって凶暴で…此所はまだ野生の名残だって残っているんだ!その中で野宿するなんて何考えてやがる!しかもこの夜は極端に気温だって下がるんだ!そんな格好で野宿なんて死にたいのかお前は!!」

「…っ」





ミリの肩を掴み必死になって怒り叫ぶレン。ミリは目を張ってレンを見る事しか出来なかった。ミリの肩を掴む手は力強く、むしろ痛みを感じさせる程で身動きが取れない。瞳はとても真剣で、口答えなんてすれば逆効果に違いない

それくらいレンはミリを心配し、叱っていた。ミリはその事にやっと気付くと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった






「俺がどれだけ心配したか…」

「…レン、…」

「頼むから、自分は平気だからって言う考えは捨てろ!お前が何者かはともかく、お前が膨大な力を持っていようがお前は一人の女だ!か弱い女だ!こんな細い腕で何が出来る!?」

「…っ」

「頼むから!」

「……」

「頼むから…もう、心臓に悪い事をしないでくれ…」






怒りから安堵に変わり、安心に変わったレンの表情がいつもの表情に変わった。疲れたのか、言いたい事が言えて満足したのか、ミリの肩を掴んだまま顔を下に向き大きな溜め息を零した

ミリは込み上げる何かを堪える様に視線を下に向ける。そうだ、自分は何者であれ力を持っていようが一人の女…レンの言い分は、確実にミリを突き刺していた





「レン…ごめん」

「………」

「本当に、ごめん…」

「…………」

「…だ、だからその…口を塞ぐとかそんな冗談は言わないで…」

「……………」

「……レン?」





肩を掴み、微動だにしないレン

ミリが謝罪と明が主旨が違う事を言っても全く持って反応しないレンに、ミリは頭を傾げる


…レンの様子が、おかしい


そう思い、恐る恐る手を動かしレンの頬に触れる。そしてミリは驚愕した。頬が物凄く熱かったからだ。以前触った時よりもかなり熱を帯びていた。慌てて額に手を当てると、やはりかなりの熱がレンにあった。額に手を当てたのがきっかけか、事切れる様にミリに倒れこんだレン。なんとか支える事が出来たが所詮は男と女、ミリも熱を持っているのでいつもみたいに軽々受け止める事が出来なかった。結局ミリとレンは地面に倒れ込み、レンに多い被された状態になってしまう

甘い展開はこれっぽっちも無かった

耳元からはレンの息遣いが荒く、辛そうな声が聞こえた。倒れこんだ身体は体温は熱くて服はとても冷たくて、ミリは顔を真っ青にした





「レン!しっかりして、レン!」

「っ……」

「レンもまさか熱が…。は、早くレンの熱を下げなきゃ…あ、でも力使うときっと私が倒れちゃう…じゃなくて!えーとえーと!白亜と黒恋と蒼華と時杜は爆睡しちゃてるしレンのポケモン達も…寝てた!あーとえーと!あ、そうだカツラさぁあああん!」











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