「ブーイ…Zzz」 「ブー……Zzz」 「…Zzz」 《この異空間…寝心地最高ですね…Zzz》 「…爆睡してるよこの子達」 ――――――― ――――― ――― ― 満月が燦々と照らす夜空に塵の様に輝く星達。そのの中に、一つの流れ星が夜空を流れていく。時は先程から流れてもなお、輝きを失わずにふたごじまを照らし続ける。昼間とまではいかない優しい光は、山や枯れ木を包む様に光を伸ばしていく そのふたごじまの山頂に、ミリとミュウツーがいた。山頂から見える景色をただ無心に眺める二人の上を満月は慈悲の如くに見守る。露になったミュウツーの肢体は洞窟の中よりも一段と存在感を増し、色違いだと示す緑色の尻尾が揺れる。隣りに並ぶミリの漆黒の髪が月光で反射され、髪と腰に付いている帯が流れる様に靡く。虚空を見つめる瞳は何処か儚げで、憂いのある姿はまるで一枚の絵の様だ 「貴方はこれから何処へ?」 《一つの光を導いた。また私は散った光を見つけだす》 一つの光――それは【記憶の光の欠片】で、レンが一番に捜しているであろうナズナ本人の記憶――今はビー玉位の大きさに止どまっているソレは、ミリの手の中で月光に反射されキラリと光る 記憶の光の欠片はまだ他にもある。ミュウツーはこの一つをミリを授け、また別の欠片を捜し出し、またミリの前に現れるだろう。それは口に出さなくとも、互いに理解をしていた 《それはお前が持っていろ。欠片と欠片は惹かれ逢う。その時が来たら、それが示してくれるだろう》 「…えぇ」 何故、ミュウツーが記憶の光の欠片を捜し、ミリに授ける理由は分からない。何故、持ち主であるナズナから記憶が解き放たれた理由も定かではない 全てを知るにはまだ時間が掛かるだろうし、実際にミュウツー自身が口に出し語るのは欠片を全て見つけた時だろう。それまではけして何も語らないに違いない 「ねぇ、ミュウツー」 《その名は私ではない》 「なら、なんて呼べば良い?名前が無いと貴方を呼ぶ事が出来ないじゃん」 《名など、無いに等しい》 「ナズナさんからはなんて呼ばれていたの?」 《ミュウツーと呼ばれていた。その名を拒否していたが奴は変わらず呼んでいた。『新しい主が見つかるまではそう呼ぶ』とな》 「新しい主?」 《……いずれ分かる》 フッと笑うミュウツー もしかしたら出会って初めての笑いを見たミリは目を張る 「…そうだ。なら私が付けるよ」 《…お前がか?》 「呼ぶにも困るからね。私は貴方の主ではないけど、名前を付けるだけでも違ってくるよ。名前は人を個体として見る最大の力だから。私が付けた名前を気に入らなくても、確実に別として見れる筈」 そう答えたミリはミュウツーの意見を聞かずに早速何を付けようか考え出す。少し楽しそうに考えるミリをミュウツーは何も言わずただミリの言葉を待つ。何処か楽しみにしている様に見えるのは、やはり性格からだろうか 良い名前が浮かんだのか、ミリはパチンと指を鳴らしてミュウツーに振り返った 「これから貴方の事は"刹那"って呼ぶね」 《…刹那、か》 「そう。これなら同じ同胞さんの名前を言わなくても大丈夫でしょ?」 《あぁ。良い名前だ…ありがとう》 「フフッ、どう致しまして」 また笑みを一つ零すミュウツー、もとい刹那にミリは満足そうに微笑した 満足だとでも言う様に刹那の身体はフワッと超能力で宙に浮かんだ。重力を関係無しに浮かんだ刹那は、一度ミリを振り向くがすぐに正面を向いて遥か彼方まで飛んで行った。振り返った時、また再会を望むとでも言っている刹那にミリは自然に笑みを零し自分もまた同じ気持ちで刹那の姿が見えなくなるまで見送った 時刻はもう次の日が経っていた 「…記憶の光の欠片、か」 手の平に転がるビー玉は月光で反射し、ミリの顔を写す とんでもない物を預かり、とんでもない者にも出会ってしまった。正直ミリの中は整理がついていなく、困惑中だ。表情には出していないが、動揺をしていたのは事実。刹那が去って何かが解かれたのは大きな溜め息を零した 詳しい話はカツラが知っている、と刹那は言う。知っているのはナズナか、刹那か。どの道…彼に聞かないと何も始まらない。それにミリは安堵を感じ、焦りも感じた。この欠片を集めれば全てが分かる――しかしナズナ本人の安否が心配だ ミリにある決心がついた 「…………」 最後に未だ照らす満月を、睨み付ける様に見上げるミリ 満月はまだ、紅く無い 気温はかなり低くなっていた。高熱を持つ身体は、幾ら力が補助してくれようが危ない。踵を返し、その場から立ち去ろうとした その時だった 「――ミリ!!」 「!!レン!?」 「こんの…馬鹿野郎がぁぁあ!!」 ゴチーン → |