穏やかな水の流れる音が響き渡る。私の思った通り右側の道には水路があった。アレからずっと進んで行くと結構な大広間に入った。そこは荒れた岩がゴロゴロ転がって、道行く人を阻んでいた。上を見上げると、これまた結構な高さだ。鍾乳洞、と言った方が良いかもしれない。光の球体によって照らされた洞窟内はちょっと見応えがあった

沢山の岩を飛び越えて、沢山の入りくねった水路の水面の上を歩く。黒恋辺り見たらきっと驚くだろうなぁ、としみじみ感じながら先に進む。水面を歩くのは私にとって動作も無い、もちろん壁に立つ事も同じだ。どっかの忍の世界で学んだ事は、本当に色々助かっている(おっと、その話はまた今度で←)

ここら辺で野宿でいいかな〜、と思いながら良い寝床の場所を捜す。丁度岩が無く地面が平らな場所があったので、私はそこで寝る事に決めた





「あー、疲れた」





熱があるせいかどうかは分からない。もう既にこの寒さに慣れてしまっていた

腰を降ろし、バックの中を開けて何か無いかと探す。とりあえず今欲しいのは寝袋とか毛布……あー、無い。仕方無いのでとりあえず私は手っ取り早い毛布を錬成して(材料は揃ってるし)、自分の身体に包む。うん、温かい。光の球体を一ヵ所に集めると、ランプの役目に変わった

次に私はバックから体温計を取り出して、脇の下に挟んだ。体調管理は必要だからね


そう思いながら数秒待つと、ピピピピピ…と音が鳴った。脇の下から取り出して、光の球体を近付けさせて表記された文字を見る



“38.5℃”








…(゜v゜








Σ(゜゜;;







嘘オオ!?


うわー、めっさあるじゃん熱!ちょ、よく私無事だよね!おいおいたった寒い場所にいるだけでこんなに熱が上がるモノなの!?



…もうじき紅い満月だから…?

…しばらくはこの体温のまま!?








「んげっ。着信が凄い数だ…」





時刻を見ようとポケギアを取り出したら、なんと着信がかなりの数でズラッと並んでいた(怖い怖い

しかも名前の相手が『レン』…




こ、こええええ!(゜□゜;;;


これ、確実に怒られるよね

デコピンは必ずだよね

またあのテライケメスな顔で引きつった笑いで怒ってくるよね(ガクブル



ピピピピピピピピ…





「Σひぎゃあ!」





突然ポケギアが鳴り出した

着信はもちろん、『レン』と表示されている。まさか本人の事を言っていたらその本人からタイミング良く電話が鳴るなんて…

…し、心臓に悪い…




ピッ




「もしもし…」

『お前は一体何処で何してんだこの大馬鹿野郎が!!』

「ぎゃああああ!」





キーーンと激しい耳鳴りが

予想通りな反応。どうやらご立腹な様子で←





「ちょ、耳が!いきなり大声出さないでよ!響くって!(しかも熱があるから余計に…!」

『うるせぇ!お前マジで今何処にいやがる!心配かけさせんな!見つけ次第デコピンだ!』

「お、落ち着くんだレン!てかなんか可愛いんだけどデコピンって(いや、痛いんだけどね)」

『…だったらお望み通りお前の口、塞いでやるから覚悟しやがれ!』

「本気なの!?」






口塞ぐ=キs(ry


…あ、それは止めた方がいいヨ。唇はかなりの力が通っているからそんな安易にキスなんて…(ごにょごにょ

いや、普通にキスはアリだけど…

アリだけど…!





「え、それ冗談だよね?冗談でしょ?冗談だと私信じてるから!」

『うるせぇ!こっちは寒い中お前を捜してたんだ、報酬はきっちり貰うからな!』

「!…え、レン今何してんの?」

『軽く一時間、お前を捜して今は上空に飛んでいる』

「はぁ!?」





衝撃が私を貫いた。ポケギアをガン見する程だ。本人は『聞こえたかお前ら。あの馬鹿はどうやら無事だ』なーんてポケモン達に伝えている声が無機質に聞こえる。私はもう、驚きを隠せない


レンが私を捜してる?

あんな寒い中で?

……しかも一時間も!?






「…てっきりカツラさんの所でポケモン達とぬくぬくしているかと…」

『…おい、俺はそんなに薄情な奴だと思ってたのか?』

「いやいや、そんな事は思ってないって。ただ…」

『ただ?』

「私ごときの為にそこまでしてくれるレンに、なんて口に出せばいいか分からなくて」





私が今まで見てきたモノは、こんな優しいモノじゃなかった

【異界の万人】としてではなく、ただの人間としてその世界に足を運ぶのが基本だ。…とにかく色々あった。人間の醜い姿も何度か見てきて、人は利益でしか動かない無関心な奴等ばっかりだと、ずっと思っていた。もちろん始めはそんな事は微塵も思っていなかったけど…こんな考えをしてしまう私も、昔と比べてずいぶん変わってしまった

…だからかな、レンの優しさが眩しく、歯痒い感じを起こしてしまうのは





『…………』

「フフッ、なーんてね」

『………』

「…もしもし?レンさん?」

『…とりあえずお前にゲンコツだな』

「なんで!?」

『さっきの台詞、なんか気に食わなかった。つー事だからデコピン止めてゲンコツに変えてやるよ』

「何その上から目線!ちょっとレン!ただでさえレンのデコピンは痛いんだか…





……………っ!」






今…ほんの一瞬だったけど

何かの、気配を感じた






『…おい、ミリ。どうした』

「ごめん、切る」

『は?何言ってんブチ





何か言おうとしたレンの言葉を遮って、ポケギアの通話終了ボタンを押す

ポケギアをバックの中にいれて、毛布をバックにしまいこむ。丁度良い場所があったのでバックを盗まれない様に隠しておく

私は立ち上がり、パチンと指を鳴らす。集まっていた光の球体が四つに分かれ、私の回りに宙を浮かす





「やっぱり、何かいる」





この広間には入る前に感じた気配と同じモノを感じた

人間でもなければポケモンでもない、なんとも曖昧な存在を

その気配は"下"にあった







「私を待っている、か」






予感だかわからないけど、その曖昧な存在は私を呼んでいるのは確かだ

声が聞こえる訳でもない

ただ、そんな感じがする






「さて、行きますか」






私は光の球体と共にさらに地下に向かった








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -