友といえば、もう一人いたね

私と同じトップコーディネーターで、

強くて頼もしい、優しい友人を











Jewel.46













休憩の時間を使ってダイゴの元へ訪れて、約三十分位が経過した頃

ダイゴが提供してくれた紅茶をそこそこに、ふかふかなソファーにぬくぬくと皆と癒されていた時に(ダイゴはお仕事中)(ハッハッハ気にしない!)、ピーンポーンと家の中にインターホンが響き渡った

たかだかインターホンの音だけど、私にとっては一番耳に痛い音なだけについ身体をビクリと強張らせてしまう。耳を抑えて小さく唸る私に、時杜が心配そうに顔を覗いて来る。ダイゴも私が音に敏感なのは知っていた為、心配そうに表情を曇らせて頭を撫でた後、「出てくるから少し待っててくれ」といって部屋を後にする

ダイゴが階段を降りる音、玄関の扉を開く音、そして聞こえてきた声に一体誰が来たのかが瞬時に察知して―――つい笑みを浮かべてしまう。私の顔を見て皆も一体誰が来たのかが想像出来たみたい。少し言い合いをしながら階段を登って来る足音を耳にしながら、飲みかけの紅茶に口を付けつつ新たな来客を待つ

ガチャリとドアノブが捻り、開けられた扉から現れた―――もう一人の友人に、私は笑みを浮かべて歓迎をした






「やっほーミクリ!久し振りだねー」

「…」
「キュー!」
「……」

「やあミリ、ご機嫌様!お仕事お疲れ様、会えて嬉しいよ。耳の方は大丈夫かい?いつもの癖でついインターホンを押してしまってね、さっきダイゴに怒られてしまったよ。来るんだったら連絡の一つでも寄越せって」

「普段なら構わないけどミリが家にいる時だったら連絡は欲しいものだよ、ミクリ。彼女の耳を無理に刺激させない為にも」

「配慮したい気持ちは分かるけど一体いつミリがこっちに来ているのかが予測不可能なのが本音だったりするんだけどね、ダイゴ」

「あはー」







彼はミクリ、ルネシティのミクリ

優雅でエレガントという言葉がピッタリでお馴染みのキャラクターと知られている彼は、ルネシティに鎮座する祠の守護者でもあり、水使いを専門とするこのホウエン地方のトップコーディネーター






「けど良かった、ミリが此処に来てくれているならこのケーキは無駄にならなかった」

「……!」

「ケーキ!」

「それは有り難い土産物だよ。こっちはお互い色々とヘロヘロだったからさ。何処で買ったんだい?」

「ミナモシティさ。コンテスト会場に用があってね、数時間前にミリが来ていた事を耳にして、もしやと思ってケーキを買って顔を出してみればビンゴさ。神出鬼没なミリでもパターンを掴めば予測は可能ってね。今回は当たってくれてラッキーさ」

「そんなに私って神出鬼没?そんなつもりなんてないんだけどなぁ」

「ミリの場合はチャンピオンでもあるからね、しょうがないさ。…でもそのわりには結構離れている場所でもいつの間にか現れるその不思議さは一体何なんだろうね」

「さーてケーキ食べよっかー」

「…(ペシッ」
「キュッキュー」
「……!」






彼と出会ったのは、チャンピオンになったばかりの頃。丁度あの時莫大な量のお仕事にヘロヘロになっていてぶっちゃけ自暴自棄したくなりかけた(←)時に掛かってきた電話が、彼を結ぶキッカケだった

彼こそは、こちらではかなり有名なトップコーディネーター。水タイプを専門とするミクリの繰り出す水のパフォーマンスは目を見張るもので、同じトップコーディネーターとして、そして水タイプを持つ蒼華と水姫の水のイリュージョンを使う私にとって最も注目したい相手でもあり

その実力と容姿からファンクラブ続出、絶大な人気を誇っているトレーナーで(本当に私の回りってイケメンや美人ばかりだから困ったよね!←)。コンテスト大会のニュースで度々耳にした名前だったから、まさか出会えるなんて思ってもみなかった。しかも友達にもなれただなんてね、今でも振り返る度にしみじみ驚かされるよ。人の縁は伊達じゃないね

貴重なお休みを利用しつつ、ダイゴの紹介で私と彼は出会った。私の事は既に噂で聞いていたみたいらしく、彼は(興奮をそのままに)その純粋で透き通る様な綺麗な水色の瞳を輝かせて「会えて嬉しい」と言った。同じトップコーディネーターとして、そしてチャンピオンであるこの私に、という意味だろう。私も彼というトレーナーに会ってみたかったのが本音だったから、彼との出会いを喜んだ。ダイゴの紹介の手前、コーディネーターとして話が合う事から私達はすぐに打ち解けて、仲良くなれた

今となれば―――オーバーとデンジと一緒にいる感覚を思い出してしまうくらい、三人一緒にいるこの空間が心地好く感じていた






けど、うん。黙っているつもりはなかったけど、まさかダイゴがあんなに驚くなんてなぁ(チート戦法絶賛攻略中だったから説明を省いていたとかそんな事はなry









「ケーキうまーい癒されるぅぅぅ…!!最近食べる間も惜しんでお仕事ばっかしてきたから、もう幸せ…!ケーキ幸せ…!」

「……!」←つまみ食い

「見てくれダイゴ、あの幸せそうな顔を」

「そうだね、可愛いね。あの顔を見ると色々と癒されるよ」

「…」
「キュー!(もぐもぐ」

「もうあの量の書類もこの後ある会議なんて放棄してこのまま満たされた心地良さの中でお昼寝したい…むしろ永眠したい…このソファーが心地好い…ケーキうまー」

「…(ペシッ」

「でもでも、あの書類が片付ければ大丈夫なんだよ…私の時代がやってくるんだよ…その為にはマジで頑張るよミクリが買ってきてくれたケーキの力を借りて…ケーキうまー」

「……今まで愚痴を零さなかったミリがそれほどまでぼやくくらいだから、やっぱりチャンピオンって大変なんだね…」

「今は前任チャンピオンの引継ぎが終わってないらしいから色々と仕事が被って大変みたいだよ。よしよし、ミリ、新しい紅茶どうぞ。あ、ミクリ紅茶に角砂糖何個入れるかい?軽く三つくらい入れる?」

「いや、私は要らないからね。三つとかもうリ○トン並みの甘さになってしまう」

「ケーキうまー紅茶うまー幸せー」

「キュー!」
「……!」

「…」








彼も本当は多忙な人間だ。ルネシティの祠を守る守護者としてルネの平和を守る者として、そしてトップコーディネーターとしてコンテスト出場やGF・K協会本部直属の人間になって仕事をこなしていかなくちゃいけない。シンオウでトップコーディネーターになった数週間の間、短い期間でもそれなりの仕事をこなしてきたから、本職の皆さんの忙しさは簡単に想像が付く

私達は皆、毎日忙しい予定の中で生活している。忙しくても、私達はこういう時間を欲した。三人で、一時の些細な時間でも充実に、笑いあえるこの時間を。だから私も、ミクリも、同じ時間を共有する為にダイゴの元へ足を運ぶ

何せトクサネシティは良い中間点だしね!位置的にはルネシティの方が中間点だけど殆ど、ミクリってミナモシティ中心に動いているから此処が一番会いやすいんだよね〜←







「(本当、あのお仕事終わって落ち着いたらコンテスト大会に出よう。負けてられないもんね)」








ミクリのコンテストのお話を聞いたり、たまに(心夢眼で)見るテレビ中継に映る彼のパフォーマンスを見掛けたりすると――――…自分があの極寒の土地でパフォーマンスを披露してきた日々を思い出す

今はまだ、状況が状況だからコンテストに出場とかは考えてない。あまり主張してこないけど、コンテストに出場したい水姫達には少し我慢してもらって、とにかく今は目の前の事を専念しなくちゃさ。後々後悔する事になるかもだし

ミクリのパフォーマンスを見てると、またコンテストに出たい気持ちに駆られてしまう。ミクリの繰り出す水のイリュージョンと私達の繰り出す水のイリュージョンのどちらが強いか競いあってみたいと思うし――――…あの時戦ったメリッサとの試合の時みたいに、熱いバトルを繰り広げたい。それこそミクリといつか大舞台で競いあってみたい

同じトップコーディネーターとして、大舞台に立つライバルとして―――…





その前にまずお仕事だよね!(泣









「がんばろっ」

「ん?何がだい?」

「ううん、こっちの話!へへっ」

「気になるなぁ」

「うっふー。あ、ミクリ、ケーキご馳走様でした!次も美味しいケーキを期待してます!(シュビッ」←敬礼

「キュー!(シュビッ」←敬礼
「……(シュビッ」←敬礼

「ははっ、お粗末様。頑張るミリの為にもまた良いところを見つけておくから楽しみにしていたまえ」

「わーい!」

「良かったねミリ。それじゃ便乗して僕も期待してるよ(シュビッ」←敬礼

「君の場合は自分で買いなさい」

「えー」

「あはははっ!」











三人でいる時は、まるでデンジとオーバーと一緒にいるみたいに

ダイゴには、シロナを見守ってきた様に最後まで

そしてミクリには―――メリッサと戦ってきたあの輝かしく相応しいステージに立てる様な、ライバルに



昔を思い出させる様な、それでいて様々な可能性に秘めたこの二人を、大事にしていきたい







(色々と楽しみが増えていくばかりだよ)


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