今日はハロウィン…島の皆が仮装をしてこのイベントを楽しんでいる。俺もその一人で、ヴァンパイアの仮装をして島中を歩き回っていた。実際にこうして仮装をしてハロウィンに参加するのは初めてだったけど、とても楽しい。島の住人達とお菓子の交換をした後、俺は飛行場へと向かった。
「トリック・オア・トリート!」
飛行場の受付にいるモーリーさんに怖いポーズをしてお菓子を要求する。モーリーさんは笑顔で「はい、どうぞ」とロリポップをくれた。よし、後でパンプキングにあげよう。…ロドリーさん、今は忙しいかな。俺がチラッと飛行場の奥に視線を向けると、モーリーさんが「お呼びしましょうか?」と俺に声をかけてきた。
「え?」
「キャプテン・ロドリーに会いに来たんですよね?」
「えっ、あの…そうなんです、けど…し、仕事中ですよね? 忙しいなら大丈夫ですから!」
「せっかく素敵な仮装をしているんですから、見せてあげないと勿体無いですよ。それに…きっと自分だけニンゲンさんの仮装を見られなかったと知ったら、彼も拗ねるでしょうから」
クスクスと笑って、モーリーさんは無線でロドリーさんを呼び出してくれた。…まだお仕事中なのに、なんか申し訳ないなあ。少ししてやって来たロドリーさんは俺の姿を視界に入れると、口元を緩ませた。
「その仮装は…ヴァンパイアですか? とてもお似合いですね、ニンゲンさん」
「あ、ありがとうございます。えっと…トリック・オア・トリート!」
皆に仮装を誉められた時は素直に嬉しかったけど、ロドリーさんに誉められると嬉しさよりも恥ずかしさが勝ってしまって、俺はそれを悟られないようにハロウィンお決まりの台詞を口にする。すると、ロドリーさんは「あっ…すみません」と何故か謝ってきた。
「どうしたんですか?」
「実は…お菓子を用意するのを忘れてしまって」
「あ、そうなんですか」
「はい。ですから…悪戯をしてくださって結構ですよ」
「え"」
い、悪戯!? ロドリーさんに!? そ、そんなの出来ないって…! 「遠慮せず、どうぞ」と笑顔で両手を広げるロドリーさん。なんか楽しんでない!? もしかして、わざとお菓子を用意しなかったとか…!? 俺は迷いに迷った挙げ句、ロドリーさんの胸に飛び込んだ。そしてロドリーさんにハグをして彼の顔を見上げる。
「お…お仕事が終わったら、俺の部屋に来てください。そ、その…そこでたっぷり、悪戯しますからっ」
…ああああ! 顔が熱い! めちゃくちゃ恥ずかしい台詞言ってるよ、俺! 俺はロドリーさんの反応を見る前に、彼からパッと離れて逃げるように飛行場から出ていった。うううっ…ああ言ったからには、悪戯の内容を考えなきゃ…!
(…わたしの恋人が可愛すぎるんだが)
(ニンゲンさんにどんな悪戯をされたのか、明日たっぷりと聞かせてもらいますからね、キャプテン・ロドリー。…それはそうと、ニンゲンさんの為に用意した高級そうなお菓子はどうするんですか?)
(明日にでも渡すよ。今日渡さなくて良かったな…)
prev / next