DBH | ナノ
コナー



目を開ければ、視界に映ったのは白一色…染み一つない真っ白な天井だった。ここは…病院か? どうしてオレは病院のベッドに寝かされているんだ…? 目覚める前の記憶が朧気で、ハッキリしない。しばらくぼんやりと天井を見つめていたら視界の中に誰かが映り込んできた。


「チェイス、刑事…」


それはコナー刑事だった。コナー刑事は目覚めたオレを見て情けなく眉を下げ、それから恐る恐るこちらへ手を伸ばしてくる。震える指先でオレの頬に触れ、オレの存在を確かめるようにその指先を滑らせる。コナー刑事の表情と一連の動作が、何だか…本物の人間のように思えた。


「…どうして、あんな事をしたんですか」


あんな事、とは何だっただろうか。そんなオレの疑問に答えるように、コナー刑事は「どうして私を庇ったりしたんですか!」と声を荒らげる。…ああ、そうだ。思い出した。確か、オレは事件の捜査中にコナー刑事を庇って撃たれたんだ。


「…アンドロイドを庇って死にかけるなんて馬鹿げています。二度とあんな事はしないでください」

「それは約束出来ないですね。コナー刑事に危険が迫ったら、きっとオレは同じように庇いますよ」

「そんな事をして死んでしまったらどうするんですか!? アンドロイドの私とは違って、貴方は人間なんですよ! 死んでしまったら生き返る事はないんです!」

「アンドロイドなら怪我をしてもいいんですか? 死んでもいいって言うんですか? オレはそうは思えませんね」


コナー刑事は納得がいっていないのか、眉間にシワを寄せて何か言いたげな様子だったけれど、ゆっくりと口を閉ざした。こんな張り詰めた空気の中、コナー刑事に平然と話しかけられるほどの勇気はオレにはない。しばらく気まずい沈黙が続いたが、先にそれを破ったのはコナー刑事だった。


「貴方が私を庇って撃たれた時、私は…言い様のない恐怖を感じました」

「…え?」


アンドロイドには感情がないはずだ。もちろん、恐怖なんて感情も彼らには存在するはずがない。ただ、それは…変異体という例外を除けば、の話だけれど。


「理由は分かりません。ただ、チェイス刑事が死んでしまう…貴方を失ってしまうと思ったら、どうしようもなく恐ろしくなったんです。…私は変異体になってしまったのでしょうか」


アンドロイドが感情を抱くのってそんなに悪い事なのだろうか。今まで変異体が起こした事件だって、人間に原因があるものばかりだったじゃないか。…不安げに、縋るようにこちらを見つめる彼にオレは何て告げればいい?


「例え変異体でもそうじゃなくても、オレは貴方が好きだよ。コナー刑事」


何か言わなきゃ、と焦って口から出たのはそんな言葉だった。違う、そうじゃない。いや、そう思ってるのは事実なんだけど、今伝えるべき事じゃなかった。…ああ、怖くてコナー刑事の顔が見れない。最低最悪のタイミングに口を滑らす形で想いを告げてしまい、オレは頭を抱えたくなった。

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -