詰め合わせ | ナノ
赤血球(AE3803)先輩、大好きです!



運悪く通り魔に刺されて死んでしまったと思ったら、俺はどういうわけか誰かの身体の中の細胞として生まれ変わっていた。どうやら俺は赤血球になったらしい。どういう事だ。ラノベとか漫画でありがちな"転生したら何とかになった"っていうアレか。転生ものも最近はいろんな設定であふれかえっているようだが、転生して細胞になったっていうのはまだないんじゃなかろうか。いや、そんなに詳しいわけでもないから実際はどうなのか知らないけど。

しかも驚く事に、ここは俺が生前愛読していた"はたらく細胞"の舞台となっていた体内なのである。そこで俺は新人赤血球として、教育係の赤血球(AE3803)ちゃんから色々と教わっているのだ。まさか、はたらく細胞の中で俺が一番好きなキャラクターである赤血球ちゃんの後輩になれるだなんて…! 前世で心残りが全くないわけではなかったし、はたらく細胞の赤血球に転生するだとかいうよく分からない状況に陥ってしまったわけだが、俺は"赤血球ちゃんと一緒に働けるのなら何でもいっか!"と細かい事を考えるのはやめる事にした。


「後輩くん、今日も頑張りま…頑張ろうね!」


俺は赤血球ちゃんから"後輩くん"と呼ばれている。個体を識別する為の番号はあっても、俺達赤血球に名前なんてものはないからな。それにしても気を抜くと敬語になっちゃいそうになる赤血球ちゃん可愛い…。ニコッと俺に微笑みかけてくる赤血球ちゃんはまるで天使のようだ。いや、天使そのものと言っても過言ではない。こんな風に赤血球ちゃんの後輩として働けるとか、もう俺死んでもいいかも…まあ、既に一度死んでるんだけど。


「はい、頑張ります! 今日の配達先は何処ですか?」

「えっと、まずはね…肝臓の細胞さんに―――」


と、赤血球ちゃんが話し始めたその時だった。突然地面が大きな揺れと共にひび割れ、そこから不快な笑い声をあげながら何かが飛び出してきたのは。チッ、思わず舌打ちをしてその場に荷物を置き、俺はソイツ――細菌に向かって勢いよく飛び蹴りを食らわせてやる。


「後輩くん!?」

「テメェみたいな細菌ごときが赤血球先輩の鈴を転がすような美しいお声を遮ってんじゃねえよ!」


思い切り飛び蹴りを食らわせたところで、俺は細菌にこれっぽっちもダメージを与えられない。赤血球だからな、俺。戦闘能力なんてないんだ。もしも白血球とかに生まれ変わってたら赤血球ちゃんを狙う細菌達をこの手でぶっ倒してやれたのに…。ダメージは与えられなかったが、細菌も赤血球が攻撃してくるとは思っていなかったんだろう。ソイツが怯んだ隙に「今のうちに逃げましょう、先輩!」と赤血球ちゃんに声を掛け、荷物の入った箱を小脇に抱える。赤血球ちゃんも両手で荷物を抱え直し、大きく頷いて…肝臓とは別の方向へ走り出した。うん、予想はついてたけどちょっと待って赤血球ちゃん!


「先輩そっちじゃないです!」

「あっ、ご、ごめんね!」


先輩の服を掴んで引き戻し、俺が先導するように肝臓へ向かって駆ける。細菌が追い掛けてきたが、走っている際に白血球とすれ違ったから彼らが何とかしてくれるだろう。後ろから罵声と悲鳴が聞こえたが、俺達は振り返らずに走った。赤血球ちゃんが不幸体質だからか細菌やウイルスによく狙われるけど、俺は何だかんだで充実した細胞ライフを送っていたりする。今日も赤血球ちゃんが可愛くて幸せです。

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リクエストBOXより
『はたらく細胞』で、赤血球の知識有りの無敵最強(チートな)転生新人後輩男主で『はたらく細胞』の漫画を読んだ以来から赤血球が大好きであり、転生してから大好きな赤血球の後輩になれて幸せで赤血球の前では心優しい後輩として振る舞い、大好きな赤血球を狙う細菌に対して(殺意を出しながら)素手や隠し刃物で即殺る。それ以来から他の細胞達に興味を持たれる話。

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