詰め合わせ | ナノ
御幸一也にサプライズ



御幸は部屋で意気消沈していた。どうにか綾瀬と別れるのは免れたし、御幸が何度も必死に謝ったおかげで綾瀬も許すと言ってくれた。だが、きっと綾瀬はまだ心の何処かで怒っているのだろう。そう思ってしまうのは今日が御幸の誕生日なのにも関わらず、綾瀬から"おめでとう"の一言もないどころか、夕飯を終えて部屋に戻ってきた今も一向に御幸の前に現れる気配がないからだ。

御幸の誕生日を知らない、なんて事はないだろう。結構前から今日が誕生日だと御幸自身がアピールしてきたし、綾瀬も誕生日は祝ってやると約束してくれたのだ。綾瀬が祝ってくれる事を楽しみにしていた御幸にとって、その約束を破られたのはかなりショックな事だった。


「…あんな馬鹿な事しなきゃよかった」


綾瀬と付き合って初めて迎える自分の誕生日だったのに。御幸の誕生日を祝う言葉を掛けてくれた奴も居たのだが、綾瀬以外に祝われたってちっとも満たされなかった。こうなったら自分から綾瀬の元へ突撃しようかとも考えたが、綾瀬が怒っていると思うと尻込みしてしまう。今更後悔したってどうしようもないのは分かっていたが、悔やまずにはいられない。深く溜め息を吐いたところで、部屋の扉が開いた音が御幸の耳に届く。ルームメートが帰ってきたのかとそちらに視線を向けた御幸は目を見開いた。


「え…っ、せ、先輩…!?」


現れたのは待ち焦がれていた綾瀬だった…のだが、綾瀬は不機嫌そうに口元を"へ"の字に歪ませ、眉間にシワを寄せて御幸を睨み付けている。やはり怒っているのだろうか…。そう思って少し悲しくなったが、会いに来てくれた事は素直に嬉しかった。御幸が「どうかしたんスか、綾瀬先輩」と問いかけると、綾瀬は呆れたような顔で御幸のベッドを指差す。


「…え、なに? 何スか?」

「枕元、見てみろよ」


枕元? 何で…? 綾瀬の言葉を不思議に思いつつも御幸はそれに従って枕元を確認してみる。すると、そこには一輪のバラとメッセージカードが置いてあった。驚きに目を瞬かせてバラとメッセージカードを手に取る。メッセージカードには"誕生日おめでとう、御幸。夕飯食べたら俺の部屋においで"という言葉と共に綾瀬の名前が綴られていた。


「せん、ぱい…これ…」

「お前、いくら待っても全然部屋来ないし…気付いてないのかと思って訪ねてみて正解だったな」


「まさか、本当に気付いてなかったとは思わなかった」と綾瀬はケラケラと笑った。…怒って、ない? 綾瀬はこっそりとこんなサプライズを仕込んで誕生日を祝おうとしてくれていたのに、ただ単に御幸が気付いていなかっただけらしい。御幸は綾瀬にタックルする勢いで飛び付き、力強く抱き締めた。


「いてーよ、馬鹿」


そう文句を言う綾瀬の声はとても優しかった。御幸は綾瀬に甘えるように頬擦りをして、耳元に唇を寄せる。「先輩、あの事でまだ怒ってるから来てくれねーのかと思った」と小さな声で呟くと、綾瀬は「許すって言っただろ、そこまで根に持ったりしない」と呆れながら御幸を抱き締め返す。


「綾瀬先輩…」

「ん?」

「枕元にバラとメッセージカード置いとくとか、洒落た事するんですね。結構ロマンチスト?」

「ロマンチストってわけでもないと思うけど…ただ祝うだけじゃつまらないだろ? まあ、いくら洒落た事しても気付かれなかったら意味ねーんだけどな」

「すんません」


綾瀬に抱き締められたまま乱暴に頭を撫でられ、思わず笑みが溢れる。綾瀬は怒ってなんかなかったし、しかもこんなロマンチックなサプライズをして誕生日を祝ってくれたのだ(御幸が気付かなかったせいでサプライズは失敗してしまったのだが)。安心したと同時に胸の奥がじんわりとあたたかくなる。嬉しくて、幸せで…綾瀬への愛しさが込み上げてきて、御幸は衝動的に唇を重ね合わせた。


「ん…こら、待てって、御幸。続きは俺の部屋で…な?」


綾瀬は御幸を引き剥がし、「俺の部屋においで、先に行って待ってるから」と御幸の唇を人差し指でそっとなぞった。そして優しく微笑んだ後、綾瀬はさっさと御幸の部屋から出ていってしまう。一人残された御幸は「…先輩、やっぱ好きだわ」と緩みきった顔で呟き、慌てて綾瀬の後を追って部屋を出た。

--
リクエストBOXより
・御幸一也は〇〇シリーズの続編。御幸君のBD。前から祝ってもらうのを楽しみにしてたのに、いつになっても祝ってもらえず忘れられてると部屋で落ち込む。そこに夢主が訪れて、今日の御幸君の反応から枕元にバラとメッセージカードを置いたのを気づいてない事を教える。(カードには、おめでとうと、日中は皆から祝ってもらうから夕飯後に逢引のお誘い)それから就寝時間までイチャイチャ。
・御幸一也くんの続きが読みたいです...

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -