詰め合わせ | ナノ
御幸一也は調子に乗り過ぎた



今、御幸一也は絶体絶命のピンチに陥っていた。そんな状況に追い込まれてしまったのは全て御幸のせい…それは御幸自身が一番よく理解している。キッカケとなったのは一週間ほど前…綾瀬が御幸のすぐ隣にいるにも関わらず、とある女子生徒が御幸に告白をした事だ。もちろん、綾瀬にしか興味がなかった御幸はその場で断ったが、綾瀬は妬いていたのかしばらく拗ねたように不機嫌そうにしていた。

綾瀬が嫉妬してくれている。その事実が嬉しくて堪らなくて、それから御幸はわざと綾瀬の前で女子生徒と親しくしたり、女子生徒に思わせ振りな態度をとったりもした。その度に綾瀬は嫉妬心を露にし、御幸はそんな綾瀬を見ては満足感を得ていた。もっと綾瀬に嫉妬してほしい。そんな思いから御幸の行動はどんどんエスカレートしていき…そして、今日。御幸はとうとう綾瀬をぶちギレさせてしまったらしい。


「お前が何考えてんのか、全然分かんねーよ」


綾瀬は冷めきった瞳で御幸を見据え、淡々とそう話した。続けて「もういい、別れる」と一言告げ、綾瀬は御幸に背を向けてさっさとその場から立ち去ろうとする。突然告げられた言葉を理解出来ずに御幸は呆然としていたが、ハッと我に返って慌てて綾瀬の腕を掴んで引き止めた。


「ちょっ…先輩待ってください!」

「何で引き止めんの? 俺より女の子の方がいいんだろ」

「違いますって! 俺は綾瀬先輩しか見てねーし、先輩以外に興味ないっスよ!」

「はあ? じゃあ、興味もないのにいろんな女の子に手を出してたっていうのかよ。…最っ低だな、お前」


自業自得でしかないのだが、綾瀬にそう言われた御幸は泣きたくなった。そして自分は何て馬鹿な事をしたのだろう、と悔いる。綾瀬に嫉妬してもらえたのが嬉しかったあまり、綾瀬の気持ちも考えずに軽率な行動を繰り返してしまった。綾瀬をやっと振り向かせる事が出来たのに…このままでは今までの努力が水の泡になってしまう。…綾瀬と、別れる事になってしまう。それだけは避けたい。


「し…嫉妬、してほしかっただけです。先輩が嫉妬してくれるのが嬉しくて、俺…」


変に言い訳をしたって綾瀬には逆効果だろう。御幸は綾瀬の腕を掴んだまま、「すみませんでした」と頭を下げる。綾瀬がどんな顔で自分を見ているのかが分からず、怖くてなかなか顔を上げられない。どれくらい経っただろうか、頭上で綾瀬が呆れたように大きな溜め息を吐いたのが聞こえた。


「御幸。俺はな、お前が沢村とかと話してるだけでも本当は嫉妬してたんだよ」

「…え?」

「お前は俺のこと鈍感だって言ってたけどよ、お前だって人のこと言えないっての。…お前の馬鹿な行動で俺も女の子も傷付いたんだ、罰としてしばらく口聞いてやらないからな」


御幸が驚いて顔を上げると、綾瀬は御幸の手を振り払って逃げるように走り去ってしまう。…まさか沢村相手に話しているだけでも綾瀬が嫉妬していたとは、知らなかった。とりあえず最悪の事態は回避出来たようだったが、綾瀬としばらく会話出来ないのも御幸にとっては耐え難い事だ。許してもらえるまでひたすら謝るしかない、と御幸は大急ぎで綾瀬の後を追いかけた。

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リクエストBOXより
ダイヤのA 御幸一也は嫉妬深いと同じ主(続編?) 御幸がモテ(告白などされ)過ぎな事に主が嫉妬してくれたのが嬉しくて調子に乗りあらゆる方法で嫉妬させ過ぎてキレられる。その後、必死に謝るヘタレ彼女御幸。

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