詰め合わせ | ナノ
太宰の元へトリップする



オレが帝國図書館で本の整理をしていた時の事だ。他の本とは違う"何か"を感じる本を一冊見つけた。その"何か"は上手く説明出来ないが、何処か奇妙な感じがする本だった。表紙に何も書かれていないその本に触れると…オレは悲鳴をあげる暇もなく、吸い込まれるようにその本に引き摺り込まれてしまった。


「それにしても、あの時は驚いたねぇ」


笑いながらそう話すのはオレが本の中に引き摺り込まれた後、オレを最初に見つけてくれた人物だ。本に引き摺り込まれたかと思えば、次の瞬間にはいきなり空中に放り出されていて…今、オレの目の前に居るこの男はちょうどオレの着地地点となる場所に居たのだ。…まあ、ぶつかる寸前にこの男が避けたからオレは地面に激突したんだけど。


「まさか空から人が降ってくるとは思わなかったよ」

「…オレも平然と避けられるとは思ってなかったです」

「女性だったら抱き止めていたけれどね。残念ながら私に男と抱き合う趣味はないのだよ」


男の名前は…太宰治。けれど、オレの知っている太宰さんとはまるで別人だ。オレはこの本に引き摺り込まれた後、こちらの太宰さんの所属する探偵社でお世話になっている。その探偵社には太宰さん以外にもよく知る名前の人物が多く居るが、皆オレが知っている姿とは違っていた。早く帝國図書館へ戻りたいが、戻り方が分からない…とりあえず、戻る方法が分かるまで探偵社で手伝いをする事になったのだ。


「さて…そろそろ虎探しを再開するとしようか。国木田君に怒られてしまうからねぇ」

「そうですね。さっきから太宰さんが何か見る度に自殺方法を考え始めるせいで、虎探しが捗ってませんし…」

「おや、私のせいにするつもりかい? …あ。見たまえ、あの川――」

「入水はさせませんよ」

「ちぇっ」


前言撤回。さっき、オレの知っている太宰さんとはまるで別人だって言ったけれど、死にたがるところは同じだ。パッと見た感じは違うが、根っこの部分はやはり皆オレの知っている"彼ら"と同じなのかもしれないな。国木田さんや江戸川さん達も含めて。…そんな事よりも、早く虎探しをしなければ。オレは川に入りたがる太宰さんの首根っこを掴み、引き摺るようにして歩き出した。

--
アンケートリクエスト
文豪ストレイドッグス

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -