詰め合わせ | ナノ
ノキオの勘違い



それは名作が竜宮小へ転校してきてから一週間ほど経った、ある日のこと。毎日のようにソラへ熱烈なアプローチをしているノキオへ向かって、名作は「ノキオって本当にソラくんのこと好きだよね」と呟いた。"そんなの当たり前だ"と即答されるかと思っていた名作だったが、ノキオから返ってきたのは意外な言葉だった。


「はぁ? そんなわけないだろ。オレは別にソラなんか好きじゃないぜ」


まさか否定されるとはこれっぽっちも思っていなかった名作は「えっ、違うの?」と目を丸くする。照れ隠しのつもりかとも思ったがノキオにそんな様子はない。もしもソラが嫌がるのを楽しんでからかっているというのなら怒ってやろう。そう思った名作は問い詰めようとしたが、それよりも先にノキオが口を開いた。


「オレがソラを好きなんじゃない…ソラがオレを好きなんだよ」

「…は?」


ソラはノキオに絡まれる度に露骨に迷惑そうな顔をしているのに、何故ノキオはそんなに自信満々なのだろう。「それは絶対にないでしょ」と呆れながらツッコミを入れる名作だったが、ノキオは「いーや、絶対になくない! ソラはオレの事が好きで好きで仕方ないんだ!」と声を荒らげる。


「どうしてそう思えるんだよ。いつも迷惑そうな顔されてるじゃんか」

「あれは照れ隠しだ、オレには分かる」

「ソラくんからはノキオに一切話しかけてこないじゃない」

「ソラはああ見えてシャイだからな。好きな奴には恥ずかしくて自分から話しかけられないんだよ。だからいつもオレから話しかけてやってるんだぜ?」


「まったく、困った奴だよなぁ〜。早く素直にオレの事が好きだって言えばいいのに」と続け、ノキオは肩をすくめてみせる。本当にソラがノキオの事を好きだと勘違いしているのか、それとも素直になれずにそう言い張っているだけの困った奴なのか…ノキオがそのどちらなのか、名作には分からなかった。どちらにせよソラにとってはいい迷惑だろう。ソラがしつこくノキオに絡まれている時は止めてあげよう、と名作は心の中で誓うのだった。

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