「相変わらずモテモテですね、ソラは」
"俺に微笑まれたから"という変な言い掛かりをつけられ転校生はボルトの暴走に巻き込まれている。ボルトに肩を揺さぶられて助けを求めている転校生を横目にむすびがそんな事を言ってきた。「お前の方がモテるだろ」と返せば、むすびは前髪の海苔を軽く掻き上げて笑う。モテている事についての否定はしないようだ。
「俺はアイツらにしかモテないからモテモテとは言えないよ。それにアイツらにモテても面倒なだけだ」
「ソラは面倒事に巻き込まれるのが何よりも嫌いですもんね」
「嫌い。だからあんまり俺に構わないでほしい」
別に孤立したいわけではないけれど、この学校は個性豊かすぎる奴らばかりで面倒事に巻き込まれそうだから関わりたくないんだ。お察しの通り友人は少ないが、そんな俺の数少ない友人の一人がむすびだったりする。むすびは近すぎず遠すぎず、ちょうどいい距離感を保って俺に接してくれるのだ。
「"アイツらにモテても面倒"って事は、面倒じゃない人からならモテたいとか思ってたりします?」
「…何でそんなこと聞くの?」
むすびのその問いかけはどこか引っ掛かる言い方をしているように思えた。具体的にどこがかは分からないけど。思わず問いを返すと、むすびはニコニコと笑みを浮かべたまま「ソラはノキオとボルト以外からもモテてますよ。ソラが気付いてないだけです」とだけ答えた。答えにはなってなかったが、むすびの言葉と表情から俺は何となく察した。…どうやらこの距離感をちょうどいいと思っていたのは俺だけなのかもしれない。むすびとの今後の付き合い方を考えた方がよさそうだ、と俺は頭を抱えたくなった。
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