詰め合わせ | ナノ
名作くんとはじめまして



名作物語のキャラクターを目指す子供達が通う竜宮小学校…それが俺の通っている学校だ。正直に言うと俺は名作キャラクターなんて目指しているわけじゃない。別になりたくないとまでは言わないが、他の子達のような憧れや熱意はなかった。将来どうなりたいかなんてまだ俺にはよく分からないのだ。今はとりあえずあまり目立たないように、なるべく面倒事に巻き込まれないように。地味にひっそりと平穏な日常生活を送りたい。そんな細やかな願いも虚しく、いつも何かしらの騒ぎに巻き込まれてそんな日々とは無縁なのだけど。

キャラの濃いクラスメイト達のおかげでいつも何かと騒がしいクラスだが、今日は特に騒がしい。というのも今日は転校生がこのクラスにやって来たのだ。松田名作というらしいその転校生は早速クラスのトラブルメーカー達に絡まれているようだった。ああ、お気の毒に。そう思いながらもトラブルメーカー達のターゲットが自分に向けられない事の喜びの方が遥かに勝っていた。ごめんね、転校生。心の中で謝罪して、俺は授業が始まるまで居眠りでもしていようかと自分の机に突っ伏した。


「そうだ、名作。ついでにコイツの事も紹介しとくぜ!」


ちょうど俺が目を閉じたその時…自称ロボのアイツのそんな言葉が耳に届いたかと思えば、足音がこちらへ近付いてくる。嫌な予感。こういう時の予感は残念ながらよく当たってしまうものだ。もちろんそれは今回も例外ではなかったようで、机に突っ伏していた俺の肩を誰かがポンと軽く叩いた。仕方なくムクリと身体を起こすと、俺の肩に手を置いたまま自称ロボことノキオがこちらに向かってウインクをしてくる。


「コイツはソラ。いつもクールで無愛想だし、おまけに無口で無愛想で何考えてるか分かりにくい奴だけど、根は悪い奴じゃないからさ。本当にどうしようもなく無愛想だけど悪気はないから、名作も仲良くしてやってくれよ!」

「無愛想何回言うんだよ。あ、えっと…知ってると思うけど、僕は松田名作。よろしくね、ソラくん」


お前が毎日のように俺の願う平穏をぶち壊しやがるんだから、そりゃあ無愛想にもなるよロボ野郎め。盛大に溜め息を吐きたくなるのを我慢して俺はノキオから転校生へと視線を移す。転校生はノキオにツッコミをした後、少し困ったような笑顔を浮かべながら改めて俺に自己紹介をしてきた。彼と積極的に仲良くするつもりはあんまりなかったんだけどな。内心でそう思いながら、俺はいまだに肩に置かれたノキオの手を振り払って転校生に笑みを返した。


「うん。俺はソラだよ、よろしく。分からない事があったら遠慮なく聞いてね」

「あ、ありがとう…って、いや、ソラくん全っ然無愛想じゃないな!? 無愛想どころか物凄く優しいよ!?」


どうやら転校生はツッコミが得意らしい。このクラスはツッコミのしがいがある奴ばっかりだろうな。ノキオは「何でだよソラ!? オレの時と態度違いすぎだろ!」と俺の肩を掴んで勢いよく揺さぶってくる。そんなの当たり前だろ。自称ロボは日頃の行いを反省してほしい。少しして「あっ、アレか! 照れ隠しか! 何だよ、もう〜しょうがない奴だなぁ〜」と謎のポジティブ思考を発揮して俺の肩に手を回してくるノキオに、俺はとうとう溜め息を吐いた。

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