詰め合わせ | ナノ
レジェンド達に絡まれてる話



俺はシンジケートで働いている下っ端である。基本的には警備を担当としているが、最近はApexゲームのスタッフとして様々な仕事をするようになった。知り合いからはレジェンド達と関わるチャンスがあるなんて羨ましいだとか言われたが、人使いが荒い上司のせいでレジェンドとのんびり話す暇なんてない。というか、俺は彼らの面白い試合を観戦するのは好きだが、試合をしているレジェンド本人には全く興味がないから仲良くお喋りをするつもりもない。

はあ、と小さく息を吐く。今回のApexゲーム参加者の荷物は全てシップへ積み込んだ。あとはゲーム参加者のリストとシップに乗り込むレジェンド達を照らし合わせ、確認していけばいいだけ…なのだが、個人的にはそれが一番嫌な仕事だったりする。仕事自体はリストと搭乗者を照らし合わせるだけの簡単なものだ。それにも関わらず何故嫌なのかというと──。


「よお、アミーゴ!」


そんな声と共に俺の肩に腕を回し、許可もなくパシャリと俺とのツーショット写真を撮ったのは今回のゲーム参加者であるオクタンだ。俺は写真が嫌いだ。自撮りをするなら一人でやってほしい。「上手く撮れたぜ、見てみろよ」と撮ったばかりの写真を見せてくる。「な、最高だろ?」と愉しげに笑うオクタン。最高なもんか、最低だ。──ああ、クソ。だから嫌なんだよな。ただのスタッフでしかない俺にこうやって必要以上に絡んでくる奴等が居るから。無表情のまま俺がオクタンへシップに乗り込むよう促すよりも早く、後ろからやって来た女性が彼の首根っこを引っ掴んで俺から引き剥がした。


「いつも迷惑かけて悪いね、ソラ。ほら、行くわよシルバ!」

「別に迷惑なんてかけてねえよ、アネキ」


俺に向かってニコッと笑いかけ、オクタンの背中を叩いてシップへ乗り込んでいったのはライフライン。オクタンもそれに続いてシップへと駆けていった。助かった…ああ、写真を削除するように言うのを忘れていたな。しまった。俺は内心溜め息を吐きながらリストにあるオクタンとライフラインの名前の横にチェックを入れる。その後はハイタッチを求めてくるパスファインダーに仕方なく応じてやったり、こちらへ軽く手を振ってきたワットソンへ渋々手を振り返したりしながら搭乗者のチェック作業を進めていった。


「ソラじゃねえか、久しぶりだな! 会いたかったぜ?」


次にやって来たレジェンドはミラージュ。ミラージュは「お前もしばらくこのイケメンに会えてなかったから、きっと寂しくて堪らなかったろ! …な、なあ、ソラ? そうだろ? あー、そのはず…だよな?」と、無反応を貫く俺の顔色を窺ってくる。こんな無愛想なスタッフなんか無視してさっさとシップへ乗り込んでくれればいいのに、ミラージュは必死に話しかけてきた。俺はそれを聞き流しながら黙々とチェック作業をする。ちなみにミラージュに絡まれている間に通っていったレジェンド達は誰も助け船を出してくれる事なく、シップへ乗り込んでいってしまった。


「──そうだ、ソラさえ良ければ今度俺の店に来ないか?」

「お? 何だよ、ウィット! まーた懲りもせずにソラのこと口説こうとしてんの?」


しばらくしてミラージュから自分の店に来ないかと誘いを受けた時、風船ガムを噛みながら現れたのはランパート。彼女は俺とミラージュを見比べ、「どうせ誘うんだったらベッドにでも誘ってみろって!」とニヤニヤ笑みを浮かべてみせる。ミラージュは「ま、待て待てお前、何言ってんだ!?」と焦ったように言い返した。


「いいか、ソラ。今のは気にすんなよ? 俺はただ、お前ともっと親友を…あー…そう、親睦を深めたいだけだからな?」

「そんなのベッドに誘えば一発で深まるだろ? 意外とソラも乗り気になるかもしんねーじゃん」

「あ、あのなぁ…俺は別にそういうつもりじゃ…!」


…そろそろ搭乗してもらいたいんだが、この二人はいつまでここでお喋りを続ける気なのだろうか。こちらにもいろいろと段取りがあるから早く乗り込んでほしい。なかなか此処から離れようとしない二人に痺れを切らし、俺は丁寧な口調で嫌味っぽく「出発の時刻が迫っているので早くシップへ搭乗して頂きたいのですが」と声をかけた。


「あーあ、フラれちまったなウィット! ドンマイ!」

「フラれてねーから! あーもう、行くぞ! ソラ、また話そうぜ。いつか飲みに来てくれよ?」


ようやく二人がシップの中へと消えていくのを確認し、俺は彼らの名前にチェックを入れる。チェック作業はこれで完了…と。それにしても、レジェンドっていうのはどうしてこうも揃いも揃ってクセのある奴しか居ないんだ。今後は彼らと直接関わる仕事がもっと減ってくれるといいんだけどな…いや、そうなると今度は試合を近くで見るチャンスが無くなるのか。俺は再度溜め息を吐き、さっさと次の仕事へと取り掛かる事にした。

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