「綾瀬さん、そろそろ転職を考えてみては?」
ハン・ジュンギからそんな提案をされたのがついさっきの出来事…そして今、俺はハン・ジュンギに連れられてハローワークまでやって来ていた。「別に今のままでいい」と言っても全く聞く耳を持ってもらえず、強制的にここまで連行されたのだ。
「はあ…ここまで来たなら仕方ない。用心棒にでも転職しておくか」
「何を言ってるんです? 綾瀬さんの次のジョブはもう決まっていますよ」
「…何でお前が俺の職を決めるんだよ」
せめて俺に決めさせてくれ。他の人ならともかく、ハン・ジュンギに選ばせるのは怖い。変な職を勧められるのは間違いないだろう。…ホスト、とかだろうか。別にホストが変な職という意味ではないが。「何をさせる気だ?」と問いかけると、ハン・ジュンギはゆっくりと口を開いた。
「決まっているでしょう。アイドルですよ」
「…は?」
「ご不満ならナイトクイーンでも構いませんが」
「どちらも嫌なんだが?」
思った通り…いや、思っていた以上にハン・ジュンギの脳内は手遅れだったらしい。というか、アイドルもナイトクイーンも女性専用のジョブだろうが。転職出来ない職を勧めるんじゃない。
「アイドルになって是非、私にメロメロタイフーンをお見舞いしてください」
「味方にやる技じゃないだろ、それ。お前の欲の為に転職するなんて絶対に嫌だ」
俺は転職する事なくハローワークから出た。「綾瀬さん、考え直してください!」と追いかけてくるハン・ジュンギ。…コイツがこんな残念な奴だったとは誰が思っただろうか。第一印象と違いすぎないか、お前。
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