「緑谷先輩って雄英志望なんですよね?」
雄英。プロヒーローを目指す者は誰もが憧れる高校だ。緑谷先輩は誰よりもヒーローに相応しいのだから、きっと雄英なんて簡単に受かってしまうだろう。もし万が一緑谷先輩を落とすような事をするのなら、雄英は見る目がないよな。
「うん…皆には笑われたけどね…」
緑谷先輩は少し寂しそうにそう言って笑った。…笑われた? は? 緑谷先輩が雄英志望な事の何がおかしいんだよ。笑うとか信じられない。
「は? 誰が笑ったんですか。緑谷先輩は絶対ヒーローに相応しい器の持ち主なのに…先輩、それが分からないような馬鹿の言う事なんて気にしたら駄目ですよ」
「あ、ありがとう! そう言ってくれたのは朧くんだけだよ…」
笑われた事で落ち込んでいたのか、緑谷先輩は涙ぐんでいる。緑谷先輩を泣かせるなんて…笑った奴ら全員シバく。
「当然の事です、緑谷先輩は俺のヒーローですから。爆豪先輩なんかよりずっとずっとヒーローに相応し…痛っ!」
緑谷先輩を慰めようと必死になっていたせいか、背後から近付いてきていた人物に気が付かなかったらしい。俺はそいつに思い切り背中へ蹴りを入れられ、危うく転けそうになってしまった。
「俺よりデクの方がヒーローに相応しいだと? クソガキが…!」
背後から聞こえた声。ああ、振り返りたくないな…。嫌悪感を露にして振り向けば、予想通りの人物…爆豪先輩が立っていた。
「かっちゃん、蹴るなんて酷いよ! 朧くん大丈夫!?」
「大丈夫ですよ、緑谷先輩。…急に後ろから押された気がしたんですが、何だったんですかね?」
「てめェ、クソガキ! 俺を無視してんじゃねえよ!」
わざとらしく爆豪先輩の存在を無視すれば、短気な先輩はすぐにキレたようだ。そこでようやく爆豪先輩に気が付いたフリをしてやる。
「ああ、いたんですか爆豪先輩。相変わらずヒーローに相応しくなさそうな顔してますね」
「…死ね!」
「爆豪先輩ごときに俺を殺せるわけないじゃないですか。そんな事も分からないなんて…ほんと、馬鹿ですね」
「上等だ…やってやろうじゃねえか、このクソガキィ!」
「やれるもんならどーぞ。じゃあ緑谷先輩、また後で!」
俺は緑谷先輩に笑みを向け、その場から全力疾走。後ろから聞こえてくる怒号と爆発音に追われながら、今日はどう逃げ切ろうかと考えるのだった。
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SSSリメイク
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