Undertale | ナノ
ぼくが家族に捨てられた日



ぼくは生まれつき他の人と少し違った容姿をしていました。そんなぼくを見て、村の人達は気味が悪いと石を投げ付けてきます。両親もぼくの事が嫌いなようで、いつもぼくを蹴ったり殴ったりしてきます。何故こんな目に遭うのか、ぼくには理解出来ませんでした。泣きながら「どうしてこんな事をするの」と問いかけてみたけれど、何も答えてくれません。ぼくの言葉は誰にも届かないみたいでした。ぼくに出来る事といえば、皆の視界に入らないようにしたり両親に逆らわないようにする事くらいで、それでも暴力を振るわれる時は身体を丸めて耐えるしかありません。

何が切っ掛けだったかは覚えていませんが、ぼくはいつからか外に出してもらえなくなりました。狭くて薄暗い、窓もない部屋に一人きり。いくら泣いて懇願しても出してもらえなくて、その内泣くのは無意味だと悟りました。その部屋の本棚には本がたくさんあったので、ぼくは一日一度与えられる僅かな食事をとりながら、毎日毎日ただひたすら本を読み続けました。何かしていないと気が狂いそうだったのです。日に日に体力が減っていく中、知識だけが増えていきます。

部屋にあったたくさんの本を全て読み終えた頃、ぼくは両親に連れられて久しぶりに外に出る事が出来ました。久しぶりに見る外の景色でしたが、ぼくは何とも思いませんでした。どうやら両親はエボット山に登るようです。筋力が衰えたぼくには険しい山道だったので、両親はぼくを半ば引き摺るように山を登っていきます。何度も転んでしまって擦り傷や切り傷が出来ましたが、今更多少の傷が増えたところで大して変わりません。前までは傷が一つ増える度に怯えていたのに、もう何も感じませんでした。

エボット山の頂上に辿り着くと、そこには巨大な穴がありました。どれくらいの深さなのでしょうか、真っ暗で底が見えません。体力が尽きかけていたぼくは座り込み、ぼんやりとその穴を見つめていました。そんな時、母親が「アーク」と優しい声でぼくの名前を呼びました。そんな優しい声を聞いたのは初めてだったように思います。ぼくは顔だけ振り返って母親を見上げました。

母親に「アークはお母さんの言う事は何でも守る、いい子なのよね?」と笑顔で問いかけられ、ぼくは無表情で頷きます。そうしたら次に父親が「そうか。それなら、その穴に飛び込みなさい」と穴を指差しました。ぼくはそれにも無表情で頷きます。こんな深い穴に落ちてしまっては恐らく助からないでしょう。それは両親も分かっているはずです。分かっていてそれを望んでいるのです。両親がぼくをどうしたいのかは薄々気付いていたので、それに対しても何も思いませんでした。両親は「これで幸せになれる」と喜んでいました。

両親が幸せになろうがなるまいが、それはぼくにとってどうでもいい事でした。ぼくはただ両親の言い付けを守っていればいいのです。例えそれがどんな言い付けであろうと、ぼくに拒否権なんてありません。ぼくの意思なんて、もう存在しないのですから。ぼくは穴に向き直り、両親からの最後の言い付けを守る為…死ぬ為に、その穴に自ら身を投げました。

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