刀剣乱舞 | ナノ
山姥切国広からの仕返し



山姥切国広はオレの初期刀であり、ここで一番付き合いの長い刀だ。彼には多大な信頼を寄せているし、だからこそ衝突してしまう事もある。衝突してしまう内容は戦の作戦から日常生活における些細な事まで様々。オレが真っ向から意見をぶつけられる唯一の相手…それが国広だ。オレはそんな関係に不満はないし、変えたいとも思わない…んだけど。


「ほら、どうした。食わないのか? 俺があんただけの為に特別に用意してやったのに」


…いつものように些細な事でオレと国広は口喧嘩をした。例え口喧嘩をしたとしても、次に会った時は普通の態度で何事もなかったかのようにお互い接している。それがいつものパターンだったのに。
喧嘩をしたその日の夜、国広はわざわざオレ一人の為に特別に夕食を作ってくれた。…オレの嫌いなおかずばかりが揃った夕食を。


「国広、これは…」

「何だ」

「…」

「まさか食べられないなんて言わないよな。食べ物を粗末にするな、といつも俺達に言っているのはあんただろ」


それは、そうなんだけど。おかず全品嫌いなもので出されるとさすがにちょっときついんだけどな…。昼間の口喧嘩のこと、そんなに怒ってたのか。お前も好き勝手オレに言ってたくせに…。
まあ、仕方ない。オレの嫌いのおかずとはいえ、国広がわざわざ作ってくれた料理だ。残すわけにもいかない。オレは箸をとり、夕食を食べ始めた。


「……国広」

「何だ」

「…お前、怒ってないだろ」


とりあえず味を確かめる為、全品一口ずつ食べてみたが…どれもオレが食べやすいように工夫がしてあり、美味しいと思えるものもいくつかあった。オレの言葉に国広はほんの僅かに口角を上げてみせる。


「俺は別に、怒ってるなんて一言も言った覚えはない」


…ああ、もう。やられたな。こんな事をされたら誰だって怒ってると思うじゃないか。「味はどうだ?」と問いかけられ、「ありがとな。すごく美味いよ、馬鹿国広」と返すと彼は小さく笑った。

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