爆豪勝己

※爆豪がひどい


ガチャリと、玄関の鍵が開けられる音がしてテレビを見ていた顔を玄関の方へと向ける。昔からこのマンションに住んでいて、去年親が地方に転勤になって、でも私は雄英に受かったからここから離れたくなくて、父親だけが地方へ行く予定だったんだけど母が父ラブで母までついて行っちゃって、現在一人暮らしをしている部屋の鍵を持っているのは、私が合鍵を渡した大好きな緑谷出久しかいない。お?出久くん!!彼氏のお出迎えは基本だな!勢いよく立ち上がって玄関へと向かう。



「いず...く?」



今日の放課後ぶりの感動の再会!小走りで玄関へと向かうけど、途中で足を止めた。違う。そこに突っ立っているのは出久じゃない。出久や私と同じ学校の制服を着ていて出久よりは背が高くて、ツンツン頭、片手にはビニール袋、もう片手の人差し指で鍵をくるくると回している。その鍵についているオールマイトのストラップ、あのオールマイトのポーズ、そして形、プラスチック、間違いないアレは確実に出久に渡した私の部屋の合鍵だ。何で、何で彼が持っていて、そんで入ってきてるの。



「デクじゃなくて悪かったな」



ほくそ笑む爆豪は、鍵を握ってズボンのポケットへと入れる。その鍵を今すぐにでも取り返したいけど如何せん私は彼が苦手だ。横暴で絶対的自信家でよく人を見下していて強くて、その上頭も回るから色々タチが悪い。正直近付くのも怖いくらいだ。



「それ、何で爆豪が持ってるの」
「あ?取った」
「出久から?!」
「あたりめーだろ、他に誰が持ってんだよ」



後ろ手でガチャリと鍵を閉め、何食わぬ顔で靴を脱ぎ始める彼を見て本当にヤバイと思い始める。鍵を強奪された出久は無事だろうか。髪がチリチリになってたりとかしてないかな、すごく心配だ。今すぐにでも玄関を飛び出して出久の元へと走りたい衝動に駆られるけど、目の前に立つ爆豪が邪魔で行けない。どうしよう。

彼が一歩、家の中へと上がる事に私も1歩後退していく。走るどころじゃないことは分かった。でも何故彼が出久から鍵を奪ってまで私の部屋に入りたかったのかが分からない。爆豪が去らない限りいつまでも後退し続ける私は今、どういう動きを取れば正解なのか。色々なことを考えすぎて思考が鈍ったのか、彼が大きな1歩を踏み出したのにも反応できずに一気に間を詰めてきた彼に肩を掴まれ壁に押し付けられる。



「ほらよ、土産やる」



怖い顔で何を言われるかと思ったら、え、土産?至近距離で中心部にどこぞのコンビニの名前が書かれた袋を差し出されて戸惑う。このタイミングでお土産を渡す意図が分からない。しかもあからさまにコンビニ袋だし。怖くて受け取れんそんなもん。いつまでも袋を受け取ろうとしない私を見て、彼は痺れを知らしたように1回浅く息を吐いあと自分で袋の中を漁る。ほら、と突き出してきたのは、私がコンビニに立ち寄った際にはいつも買う大好きなジュースだった。



「これ、私の好きな...」
「これも。お前甘えの好きだろ」
「おおありがとう」
「あと、ゴム」
「おお.........ん?」



...ん?なんつった?
よく理解出来なくて爆豪の手元を見てみると、なんとまあ0.02mmなんて書いてあって反応に困る。一体誰とヤる気でここへ...ん?あれ?...もしかして私か?いやいやバカ言え。私の彼氏は可愛い可愛い出久だ。



「そういえばテメー、デクとヤったらしいな」



何でここでそんな恥ずかしい話題を出されなくちゃなんないの。確かにヤった。ヤったけど、爆豪が持ち出す話題でもなかろうに。誰だこいつにそんな情報を流した奴は。まあ、私は誰にも言ってないし必然的に出久になってくるんだけど、出久もそんなことを言うキャラじゃないしなあ。もしかして爆豪、出久を脅して言わせたな。くそ、適当にヤってないで済ませて欲しかったけど判断能力が鈍ったか。



「なあ、気持ちよかったか?」



私の顔のすぐ横に肘をついて、そう問いてくる彼をはっ倒したい。私と出久の間の性事情なんて言えるワケがない恥ずかしすぎる。唇を噛んで目線を逸らす私を見て何が楽しいのか、爆豪は短く鼻を鳴らして笑った。こんな奴に侮辱されてものすごく悔しい。が、私はここで爆豪に絡まれるよりも先にやらなくちゃいけないことがあるんだ。



「どいて。出久んとこ行かなきゃ」
「アイツなんかに構うなよ」
「出久は私の彼氏だもん、どうせ爆破で出久いじめたんでしょ」
「まあ、今頃路地で寝そべってるだろうな」
「...手当しなきゃ」
「待てって」



彼の肘の下をくぐろうとしたら肩を強く掴まれてまた壁に打ち付けられる。彼は私を逃がさない気らしい。ギチギチと押さえつけられている肩が悲鳴を上げてる。



「お願いだから離して」
「なんで自分からチャンスを逃すような真似しなきゃなんねぇんだよ」
「は、なにチャンスって...」
「俺がテメーとデクのくだらねえ行為のためにコレ買ってきたと思ってんのか?」



お、思ってないっす。やば、冷や汗が。どうすればいい出久。はやく戻ってきてくれ。あ、戻ってきたとしても鍵は爆豪が持ってるわけだから中側から開けない限り入れない。どうしよう、さっき完璧鍵かけてたもんなあ。どうにかして逃れたい。けど爆豪を目と鼻の先にして、恐怖で足が震える。これから何されるんだろう。薄々勘づいてはいたけど、認めたくはなかった。



「ガキつくんのが一番手っ取り早えけど、まだ養えねえしな。そこらへんはちゃんとしねぇと」
「待って、え、私と、...ヤる気?」
「あー安心しろ。アイツんときより気持ちよくしてやっから」
「バカ言うなっ、私は出久だけしかっ、!」
「黙れ」



肩に腕を回されて、そのまま抱きしめられたらもう逃げ場がない。仮にこのままヤられたとして私はどんな顔で出久に会えばいいんだろう。絶望だ。

とりあえず一瞬だけでも私に愛おしそうな目を向けた爆豪は死んどけばいいと思う。

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