「おー苗字、お疲れ」
「お、お疲れさまです……」
「あっ苗字さんだ!今日もちっちゃいねー」
「え、あ、その、ごめんなさい……?」
「何で謝るの?苗字さん面白ーい!」


私が何をしたというのだろう。


十三番隊に入隊してからそれなりの時間が経った。先輩方は皆優しくて、社交性があるとはとてもじゃないけど言えない私に親しく接してくれて本当にありがたいと思っている。十三番隊のこの雰囲気は隊長副隊長の人徳なんだろう。やはり隊長達の人柄はその隊に影響しているんだと思う。十一番隊の更木隊長とは道端で会った瞬間命懸けの鬼事が始まるし。更木隊長が瞬歩使えなくて本当に良かった。
……ともかく、先輩方のご厚意には心から感謝しているのだけど、最近明らかに先輩方の態度が変わってきている気がする。新入りに対して、というより、何と言うべきか。


「何をぼーっとしているのだ、名前」
「ははははい!」


突然掛けられた声に心拍数が跳ね上がった。心臓の辺りを押さえながら振り返ると、声の主が呆れた様な表情を浮かべていた。その見知った顔に、心拍が少し落ち着いてくる。


「くち……じゃなくて、えっと、ルキアさん。お疲れさまです!」


ああ、と笑いかけてくれた朽木ルキアさんは十三番隊の先輩の一人で、時折こうやって話しかけてくれる優しい人だ。名門貴族のご令嬢らしいが、名字でなく名前で呼んでほしいと言われてからはそうしている。やっぱり気さくでいい人だ。


「こんな廊下の隅でどうした。何か考え事か?」
「え、と、まあ……」
「……そうか。何か私が力になれるのならすぐに頼れ。遠慮したら容赦しないぞ」
「は、はい。ありがとうございます」


容赦はしてください。そう言うこともできずに曖昧な言葉を返す。
それにしても、ルキアさんは私がぼさっとしていたからわざわざ声をかけてくれたんだろうか。別に大したことは考えていなかったのに。そう考えるとなんだか嬉しくて、無意識のうちに笑みがこぼれた。


「……ルキアさんは、」
「何だ?」
「とても、優しいひとですね」


ルキアさんが、ぱちりと目を瞬かせた。


「私が、か?」
「いつも優しくしてくれて、すごく……その、嬉しいです」


ありがとうございます。そう頭を下げると、一緒の静寂の後、ルキアさんが小さく笑う声がした。


「気にするな。私がそうしたいだけなのだからな」
「そう、ですか」
「ああ。だから、頭なんて下げるな」


そう言われて、恐る恐る目線を上げる。「わっ、」途端、優しく笑ったルキアさんに頭を撫でられる。海燕副隊長のような荒々しさはないものの、ぐしゃりと髪が掻き混ぜられる感覚がした。


「……海燕殿の仰っていた通りだな」
「ふ、副隊長が?」
「名前の頭は撫でやすいと」
「……私の頭はおもちゃですか……」




先輩方の私に対する態度。
小さな子どもに対するそれに思えるのは、私の気のせいだろうか。



まるでおもちゃ
(妹がいるというのはこんな気分なのかもしれんな!)(……ですか)







デフォ名つけるとしたら薄墨・夕陽ちゃん。






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