「ねーねー」「夏目くん、どうしたの?」「どうして蜻たんのこと好きになったの?」

手に持っていたシャーペンが、ノートの上に落ちた。
ストレートな質問に、一瞬遅れてぼっと心拍数と顔面温度がはね上がる。

「な、ななな何で夏目くんが知って…!?」「んー?ボクは何でも知ってるんだよ」

にこりと、いつも通りの笑顔を浮かべてみせる夏目くん。(そうでした彼は百目の先祖返りでした!)頭で理解しても心臓はまだ激しく自己主張をしている。落ち着け私!あと私の心臓!

「で、蜻たんを好きになったきっかけはー?」「そ、それも視れば良いんじゃ」「ボクは君の口から聞きたいんだけどなぁ」

(いじめだ……!)視線を彷徨わせるけどラウンジには二人しかいなくて、私に逃げ場はなかった。誰かいたとしたらそれはそれで困るけど。特に、今ちょうど妖館に帰ってきているあの人、とか。あああ良かった誰もいなくて!いや良くない!誰か助けて!
少しの間無言で抵抗してみたけど、もちろん勝てる訳なんてなくて。自分の膝を見つめながら、おそるおそる口を開く。

「……初めて会ったときには、凄くびっくりしたんだよね」

いきなり現れた見知らぬ仮面姿の人に呆気にとられていたら「貴様はMだな!」と大声で楽しそうに宣告されたことは、今でも中々忘れられない。

「私は……その、意志表示が少し苦手だから、凄いなぁって思って。あんなに自由な人、今まで見たことなかったし」

その強すぎる個性に圧倒されるのと同時に、素直に憧れた。
あの自由さ、真っ直ぐな生き方に。

「それからなんとなく目で追うようになって、お話する機会もできて……根は優しくて、良い人なんだって分かったりして、その……」「好きになっちゃった?」「……うん」

ああ、今、絶対茹でタコ状態だ。耳まで熱くて、目の前に青鬼院さんがいる訳じゃないのに顔を上げられない。
どうすれば良いのか分からなくて、黙ったまま俯き続ける。暫く無言が続いたあとに、夏目くんが小さく笑う声がした。

「……残念だなぁ」

なにが、と問い掛ける前に。

「本当のことだから、あんな奴止めちゃえって言えないじゃん」

思わず顔を上げた。

こちらを射ぬく銀色の眼に、時間が止まる。
夏目くんはすぐに口の端を持ち上げて、冗談めかすように笑ってみせた。

「なーんてね?」「……え、と」「ああ、でも」

腰を浮かせて、夏目くんがこちらに身を乗り出す。固まって動けない私の耳元に口を寄せて、低い声で囁いた。



「ボクは君のこと、絶対諦めないから」



どきりとするくらい、真剣な響きで。



(そこで何をしているのだM奴隷共!)(えっ、て、きゃああああっ!!)(ふははは悦い声で鳴くではないか!)(しょ、青鬼院さん……え、っていうか、夏目くん、今の、)(んー、秘密?)(ええ!?)







捏造三角関係第三段、妖館Sコンビと書こうとしたけど双熾くんがいらっしゃいましたね駄目だSばっか。
さっき残夏→主→蜻蛉と打とうとして残夏→主↑蜻蛉と打ち間違えてなんかもう色々脱力しました。最早壁作ってるし。
あ、むしろ上に誰かいるのか。
しかしそうすると蜻たんの存在意味が迷子な件について。

拍手ありがとうございました!







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