▼ 噛み合って抱擁
「間宮」
凛と響くその声は振り向かなくとも分かる、先輩のだ。
「遅かったですね、先輩」
そういうと先輩は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらこちらに向かって来た。
「あー…、今日はしつこい奴がいたんだよ」
「さすが、モテる男は違いますね〜」
先輩は、とても有名だ。なぜなら学校1の美形でしかも文武両道という万能人間だから。男女問わず先輩に憧れもしくは恋心を抱いていて、その数も尋常じゃない。
唯一の先輩の欠点というか、汚点は、口が悪いとことなんのとりえもないごくごく平凡な俺が恋人っていう所だろう。
「あの女まじでしつけぇ、くそイライラする」
「女の子に言い寄られるなんて男の夢ですよロマンですよ」
「そのせいで間宮んとこ行くの遅くなっただろなんも嬉しくねえ」
「ハハハ…」
ありがたいことに先輩は俺のことをすごく愛しちゃってくれてる。めちゃくちゃ大事にされてる。まあそういうのが嬉しいと感じるくらいには俺も先輩のこと大好きでフォーリンラブなんだけども。出会いはとても不思議なものだった。長くなってしまうから割愛させていただくが。
先輩がソファーに寝転がる。この空き教室は処分予定の備品置き場になっていて、応接室かなんかのまだ全然使えるようなものが置かれていたりして、中々に快適空間なのだ。もちろん普段は生徒の立ち入りを禁じているのだけれど、どんな入手経路だか知らないがこの教室の鍵を先輩は持っていて、今じゃ先輩との忍び逢いの場になっている。
「間宮、こっちこい」
「?…なんですか?」
座っていた椅子から離れ先輩の元に行くと、途端に先輩に腕を引かれソファーどころか先輩の上に乗り上げるように倒れこんでしまった。眼鏡が押し上げられて鼻あてが食い込んだ。痛い。
「ちょっ、先輩!なんですか急に!」
「なにって…スキンシップに決まってるだろ」
「は?」
「いやあ、他の女の話して妬いてんじゃないかと」
腕を突っ張るようにして顔を上げ、先輩の真意を掴もうと間近に迫った先輩の顔を見る。
先輩は楽しそうにニヤニヤと笑っていて、若干ムカついてくる。
「なに馬鹿なこと言ってるんですか?そんなことで妬いてたらキリがないです」
「へーかわいくねえの」
「うっさいです」
先輩は毎日告白を受けてるんじゃないかってレベルの人間だ。そう毎回毎回頭ごなしに嫉妬していたら疲れる。ある程度の許容も必要だ。
「まあ、嫉妬というレベルではありませんが、聞いていていい気分にはならないですね」
そういうと先輩はニヤニヤ顔を一転、目を見開いてこちらを見てきた。
「……さっきの嘘、やっぱかわいいわお前」
「そうです、俺はかわいいんで余所見とかしないでくださいね」
「上等じゃねえか」
不敵に笑った先輩は恋人の贔屓目無しにもう本当にかっこ良くて、俺も先輩になりたい。純粋にどんな表情仕草も似合ってしまうから羨ましい。
「……先輩?なんか手が怪しい動きしてますけど」
「あ?分かんだろ欲情した」
「は!?ちょっ、ここ学校だから!」
「うっせえちょっと黙れ」
そんな横暴な!という前に先輩は俺の眼鏡を邪魔だというように外して後頭部当たりからグイッと引き寄せられキスをされた。
「ふ……んんっ、ん…」
逃れようとするも痛いくらいの力で頭を固定されているため離れられない。
そして息も絶え絶えになる頃、不意に先輩と俺のポジションが入れ替わり、ぼやけた目には先輩に上から見下ろされているのが映り込んだ。
「あ……やだ、シたくない」
「なんで」
「だって先輩絶倫なんだもん…」
最中どんなに気持ち良くても終わった後の倦怠感が凄まじい。歩けなくなるし。そう言った意味合いで言ったのにも関わらず、先輩は褒め言葉か、とだけ言って容赦無く激しいキスをしながら俺のワイシャツのボタンを外しに掛かった。
「……はっ、あ、んっ…やだって…!」
「いいから」
「よくない!よくない!せ…せめて帰ろ?ね?俺歩けなくなるかもだし…」
「そしたらおぶってやっから」
「そういう問題じゃないって!」
「あ〜はいはい分かったから黙って感じてろ」
そう言うと先輩は頭をずらして俺のむき出しの乳首に吸い付いてきた。
「んんっ!…はぁっうあ、あぁ…ふっくっ、くっうっ!せんぱっ…い、ねえっ!やだっ」
「うっせえ感じてるくせに」
先輩の動きは止まらない。むしろ悪化したように激しく責め立てられる。
焦らすように周りを舐められ、時折ジュッといやらしい音を立てて吸われ、そしてまた気まぐれに突起に軽く歯を立てられる。
空いた手では、反対側の乳首を胸全体を揉むように触れられ、その後に指で摘まんで捏ね繰り回されたり先端に爪を立てられたりでもう、先輩に開発されまくった身体は純粋に快感だけを捉えて頭がうまく働かなくなる。
先輩に抗議したいのに口から出るのは男の聞けたもんではない喘ぎ声ばかり。
「ふっ、はぁ、ふっ……先輩っ、だめ…やばいって…このままじゃ…っ!」
じゅるっじゅるるっと吸われ更には同時に先端の窪みにグリっと爪を立てられればひとたまりもなかった。
「ううぅあ!ああっ、はぁっ」
「ハッ、勃ったな」
「〜〜っ!サイアク!」
乳首を弄られただけでおっ勃ててしまった。しかもそれを指摘され顔に熱が溜まって行くのが分かった。
しょうがない。乳首だけで勃つくらいに開発されてしまったのだから。目の前のこの男に。
「これで帰れなくなったなあ。あ、勃てたまま帰るか?大分不自然だろうけどな」
「も……ほんと最悪…」
「まっ、責任取ってちゃーんと始末してやるから安心しろ」
恥ずかしさでじわりと涙が浮かんでくる。慌てて両手で目を、顔を隠せば先輩が不自然に思ったのか無理やり外そうとしてきた。
「なに、お前泣いてんの」
「泣いてない!」
「やめろよ泣き顔とかいちばんそそるんだけど」
「ほんとクズだな!」
思わず暴言を吐いてしまったけれど、先輩は気にすることもなく俺のズボンに手をかけた。
***
「ああっ!くっ、ふっあ、あ、くっ…あぁっ、ううううっ!」
「……っ、間宮…」
人一人横になれるくらいの狭いソファーの上で男ふたりがなにしているのか。いや、ナニなんだけど。
床には俺の眼鏡と、ズボンと、あと先輩がなんでか持っていたローションのチューブが無造作に落ちていた。
俺の足は片方はソファーの背もたれに引っ掛けられ、もう片方は先輩によって大きく開くように押さえられ、向かい合わせになって俺の中を激しく抉る
熱を受け入れていた。
先輩の空いた手では俺のモノを掴み荒々しく扱く。
ぐちゅぐちゅっ、ずぱんずぱんごしゅごしゅっ!と卑猥な音を立てて先輩に責め立てられて速くも射精感が湧いてきた。
「ああんっ、んんっ、はあっあっあっ…せ、んぱいっ!うぁっあっ、おれいっちゃう、いっちゃう!」
「んっ、イけよ…俺もイく…!」
ずちゅっずちゅっ、ずぱんずぱんごりごりっ!しゅこっしゅこっぐちゅぐちゅっ……
「ああっいくっ!いくっ!」
「…はっ、出すぞ」
「や!なかやだぁっ、あああっ」
どぴゅるるっ、ぴゅるる、ずちゅっぐちゅぐちゅぅう…
精液が胸と腹のあたりにまで飛んだ感触がする。更に中には熱くじんわりとした先輩の出したものを感じた。
ゆるゆると動き続ける先輩に抗議する。
「あっ…やだっていったのに!うっ…はあっ、ああっ」
「間宮、まだ足んねえ」
「あああっ!むりっせんぱ…!とまって!んんっ、んあっ、あっ、くうっ、はあっ」
先輩は俺を無視してずこずこと再び激しくいきり立ったものを出し入れされる。そうしながら乳首を思いっきり吸われ、モノさえも激しくぬこぬこと扱かれれば嫌でもまた勃ってしまう。
先輩は熱く硬いものをギリギリまで抜くと、俺の足と腰を持ってぐるんと上手く反転させられ四つん這いにさせられた。
ズチュウゥウウ……
「ああっ、う、ふっはぁっ、くっ…あぁ、ぐっ……あた、あたる!せんぱいぃっ」
四つん這いになって中の俺のきもちいい所に当たりやすくなり、しかも先輩先輩で動きやすくなったのか先ほどよりも強く速く打ち込まれた。
「あぁっうっ!……あ、あぁあぁううぅあぁっ、ううぅあぁ…」
ソファーには色々な液が垂れてシミになっているに違いない。俺の涙、涎、ローション、お互いの汗と精液。
ぐちゃっぐちゃぁっ、ずちゅうぅ、ぬこっぬこっ、ずぱんずぱんっぐちゅっぐちゅぐちゅっ
「はぁっくっ、ああっ、っふ、うぅあ…あっ、いくっいくいくっ!」
「っあーきもちー」
ぴゅるるふっ、ぼたぼたぼたっ、ぐちゅぐちゅぐちゅっ…
俺の出したものはソファーへ、そしてまたもや先輩は俺の中に出した。俺のは二度目で薄く少ないけれど、先輩は衰えることなくむしろ先ほど以上の熱を中に感じた。
それでも先輩は止まらない。
先輩は俺を抱き起こし腰掛けた。つまり先輩の上に俺が乗っている所謂背面座位と呼ばれる体位になっていて、想像の通り重さで先輩の全く萎えていないものをより奥深くまで咥え込んだ。
「うぁあああっ、あっ、ああ…」
いきなりのことで軽くイきかけた。視界はチカチカとし、なにも考えられなくなる。
「ああぅっ、ふっ…ぐっ、ああっ、あっ、ンんんっ!っぁあ、あんっ、せんぱい、せんぱいっ…!」
「きもちいい?間宮」
「ふぁっああ、んっ、きもち、きもちいいっ!おくあたるっ!せんぱいっあああうぁっ」
ぬちゅっぬちゅっぐちゃぐちゃっずっちゅずっちゅずぱんずぱんっ!
きもちよすぎてつらい。理性とかそんなものは結合部を垂れるローションと先輩の精液ぐらいに溶けて快楽と混ざり合っている。
ソファーのスプリングを利用して大きく荒々しく奥を突いてきて、俺はただただ先輩の腕に縋って喘ぐしかなかった。
「まみやっ…奥とお前が感じるとこ、どっち突いて欲しい?」
「おくっ!おくっ、いっぱいついてせんぱいっ、あっ、あっ、きもちいっんんあっあっ、ぐっ」
「ん…突いてやるからほら、こっちむけ」
言われて先輩を振り返ると頭を押さえ込んでキスされた。グイッと首を曲げているから結構辛くて、でも先輩の俺の口を食べんばかりのキスがきもちよくてやめられない。お互い余裕が無くてぐちゃぐちゃとした荒々しいキスで、先輩に舌を吸われたらし返したり、甘噛みしたり、唾液を啜ったり送り込んだり、どこもかしこもきもちよくてしにそう。
暫くすると流石に辛くなって唇を離す。そうすると先輩は俺の耳を舐めたり噛んだりしてきた。
「っはぁ、好きだ…瑞樹」
「あぁあっ、ず…るい!そんな声で呼ぶなぁっ…!ひぅっ、くっ…んはぁ、あ、あぁ」
先輩が熱に浮かされたように、俺のこと好きで好きでたまらないって感じにえっちの時だけ特別によぶファーストネーム。身体の奥底の芯からじんっと溶けて行く気がした。
「瑞樹も…っ、呼べよ俺の名前」
「ああっうっ!…あ、あぁあぁ
ううぅああっ…すき!いつきさんっ、いつきさんんっ、すき!はあっ、あぁ、だめっ…いくっまたいくぅっ」
***
「ああめっちゃ痛いほんと痛い。先輩のばかーぜっつりーん」
「はいはいすいませんね絶倫でこっちはお前を満足させなきゃいけないんでね」
もう暗い人のいない道路を先輩におぶられて進んでいく。あれから何度付き合わされたことか。俺が出す液はほぼ透明で、けれど家だったら出なくなるまでやられるから想像して鳥肌がたった。
放課後あんなに明るかったのにもうこんな夜だ。鍵しめの先生とかに見つからなかったのが本当に奇跡としか言いようがない。まあ旧校舎だから点検もきちんとしないのかも。
「満足って!先輩が満足するまでじゃないですか!もうほんと…カラダ保たない…最後の方めっちゃツライし…」
「気持ちよすぎてな」
「〜〜っ!」
目の前の頭をバスンと叩く。驚いてバランスを崩した先輩に若干勝った気分がした。
「先輩のばか、嫌い」
「は?なにそれかわいいんだけど」
「きもい〜」
「そんな俺が大好きなくせに」
「嫌いって言ってんの!」
くつくつと笑う先輩を声と揺れる体で感じた。
「俺はそんなお前が大好きでーす」
「……うっ」
「間宮のハートにダイレクトアタック〜」
「ううううっ…むかつく!」
おわり
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