小説 | ナノ


▼ 靄の中で


榊 由也(さかき よしや)
榊 将也(さかき まさや)




***



 ガチャガチャピコピコ。コントローラーを忙しなく操作して画面の勇者を動かす。スタートボタンを押してマップ画面を開き、辺りの雑魚モンスターを倒し終えたのを確認し、またスタートボタンを押してマップを閉じる。


「将也ー!将也メシ!」
「んー!ちょっとまってー」


 ドアの向こうから兄ちゃんが呼んでる。それに適当に返事をして画面にまた集中を戻す。いよいよボス戦だ。この道をまっすぐ進んで、滝の前で鍵を使ってさっき手に入れた暗号は解読し終わってるからそれを入力すれば道は開くはずだ。


「将也!はやくしろ!」
「ちょっと待ってってばー!今いいとこ!」
「セーブすればいいだろ!」
「んー」


 自分のパーティーの状態を確認する。うん、ばっちり。この面の敵は炎系のボスだから、パーティーは水系重視に組んだ。いざ行かん、ボス戦…ー!

 暗号を入力し、決定ボタンを押せばボス戦だった。だったのだ。なのに、画面はプツンと真っ暗になってしまい某然と画面を見つめた。


「将也テメェいい加減にしろっつってんだろ!」
「あー!」


 声のする部屋の入り口を見ると、兄ちゃんがコンセントを持って俺を睨んでいた。こいつがコンセントを抜いたから!抜いたからボス戦できなかった!ていうかセーブだってしてないのに!


「なにすんのなんで抜くのまだセーブ取ってないのに!」
「うっせえお前が呼んでも来ねえからだろ喚くな」


 兄ちゃんは俺の話なんて聞かずにリビングの方へと戻っていく。悪魔だ悪魔。いつもそう、兄ちゃんは横暴だ。自分の思い通りに事が進まないとキレる。あと少し待ってくれればボス倒せたのに、なにもコンセント抜くことないじゃん。ほんとやだむかつく兄ちゃんなんか大嫌い。4年先に産まれたからって偉そうに。


「……おかーさんは?」
「今日は夜勤だって出る前言ってたろ」
「そうだった…」

 いつもならお母さんが意地悪しないの!って兄ちゃんを咎めてくれるのだけれど、今日はお母さんがいないからそれがなかった。
 うちはいわゆる母子家庭でお母さんは病院の先生をしている。兄ちゃんは大学3年生で俺は引きこもり。家以外外に出ない。だって外怖いんだもん。だから通信制の高校に通ってる。昔兄ちゃんが俺を無理やり外に連れ出した事があったけど、途端に吐いたからそれ以来は連れ出されることはない。外が怖いんじゃなくて、人が怖い。人は簡単に嘘をついて裏切る。それを俺は恐ろしくてしょうがない。今この世の中で俺と会話できるのは、お母さんと兄ちゃんと、お母さんの方のじいちゃんばあちゃんだけ。


「おら、拗ねてねーで座れ」
「……夜ご飯なに?」
「ハンバーグ」
「ほ、ほんと!?」


 それを聞いた瞬間に俺は飛び上がって食卓についた。ハンバーグが大好き。お母さんのハンバーグがこの世でいちばん好き。兄ちゃんもそれを知ってるからそんな俺を見て笑っていた。


「兄ちゃん!はやく!」
「お前ほんとハンバーグ好きな…」
「うん!」


 焼くだけの状態にした準備をお母さんがしてくれていて、兄ちゃんがそれを焼いて、付け合わせのスープも温め直してくれてるんだと思う。テーブルに並べられたハンバーグに目を輝かせながら兄ちゃんが片付け終わるのを待つ。椅子の上で足をプラプラと揺らしていたら疲れたから止めた。




***


「ごちそうさま〜」
「おいちょっとまて将也」
「なに?」
「お前ブロッコリー食ってねえだろ」
「うっ…」


 俺はブロッコリーが大嫌いだ。大好きなハンバーグの付け合わせには人参とブロッコリーが添えられていて、大好きと大嫌いが一緒くたになって出てきていた。だからお皿の端の方に避けて置いたのだけれど、兄ちゃんに見つかる前に片付けてしまおうとしたのに悪魔はそれを目敏く見つけてしまったようだ。


「食え」
「やだ、まずいもん」
「まずくない」
「まーずーいー!やだー!」


 兄ちゃんは実力行使に出て、俺を容易く片手で抑え込み、もう片方の手で箸を持ちブロッコリーを俺の口に押し付けてきた。それに頑なに拒んでいたら鼻を摘ままれて、息ができなくなって、ギリギリまで粘ってみたけど苦しくてほんの少しだけ、ほんの少し口を開いて酸素を取り込もうとしたら悪魔はその僅かな隙間から器用にブロッコリーをねじ込んできた。
 悪魔は鼻を離してはくれたけど、今度は口を塞がれ、吐きたくても吐けなくてしょうがないから唸りながらブロッコリーを食べた。にがい、くさい、もしゃもしゃする、まずい。


「うーっ、まずいー…」


 飲み込んだと分かった兄ちゃんが口から手を外した。口の中はもうまずい味でいっぱいで、気持ち悪くて涙が出てきた。


「泣くなよ、ちゃんと食ったか?」
「うんっ、うんっ…」


 口開けろって言われたから、涙を拭いながらかぱっと大きく口を開いて見せた。


「ん、偉い」
「…んぐっ」


 突然口の中に何かを放り込まれた。ゆっくり噛むとそれは大好きなハンバーグで、俺はもう食べ切っていたか、兄ちゃんが一切れくれたんだと分かった。珍しい。
 もぐもぐと口直しに味わって食べていたら兄ちゃんが俺の頭を乱暴に撫でて、俺の分と纏めてお皿を片付けてくれた。


「あ、お皿ありがとう」
「おー。風呂入ってくるわ」
「うん」


 兄ちゃんがご飯の準備をしたから俺は片付け。といっても兄ちゃんはほとんど片付けてくれているから、使った食器を洗うだけ。再びごちそうさまをしてからキッチンに立った。





***



「兄ちゃん」


 お風呂から出て、兄ちゃんのお下がりのジャージとTシャツを着てリビングに向かう。ソファーでビール片手にテレビを見ている兄ちゃんに声をかけると、兄ちゃんはすぐに気づいて手招きをした。
 俺は招かれるままに近寄って行って、ソファーに背を預ける形で兄ちゃんの前に体育座りで座った。そうすると兄ちゃんはビールを置いて、テレビを見ながらもドライヤーで俺の髪を乾かしてくれる。めんどくさがって髪を乾かさない俺を見兼ねていつのまにやらずっと兄ちゃんが乾かすようになった。俺はそれに甘んじている。


「将也、寝るなよ」
「うんー…」


 暖かい風が気持ちいい。うとうととしていたら軽く後ろから兄ちゃんに肩を叩かれた。






***


 電気を消してもそもそと布団の中に潜り込む。そうすると瞬間後ろから手足が絡みついてくる。兄ちゃんだ。一人で寝るのが嫌で兄ちゃんと一緒に寝ているのだけれど、兄ちゃんはいつも俺を抱き込んでくる。それだけじゃない。


「…んっ、兄ちゃん、当たってるっ…!」
「当ててる」


 太ももの辺りに熱く硬いものが当てられている。兄ちゃんのちんこだ。兄ちゃんは見てくれはすっごく整っていてかっこ良くてモテるのに、なんでか俺を抱き続ける。選り取り見取りなはずなのになんで引きこもりもやしの俺を抱くのか疑問だ。


「あっ…んんっ、やだ…擦り付けないでっ」


 兄ちゃんが手足を身体に巻きつけ俺をぎゅっと抱きしめ、おしりに兄ちゃんのちんこを擦り付けられた。兄ちゃんはずりずりと腰を動かして俺で気持ち良くなってるみたいで、時折後ろからはぁっ、と熱い息を吐いていた。


「あ、やだっ…兄ちゃんっ…」
「将也…」


 兄ちゃんの手がロングTシャツの裾を捲って身体を撫で上げてくる。おへそを通って脇腹を沿い、そして乳首に触れた。


「兄ちゃんっ、あっんんっ…ちくびさわんないでぇっ…」
「なんで、乳首立ってんじゃん」
「さむいからぁっ」


 ぺったんこな胸を揉まれて、乳首をクリクリと親指と人差し指で挟んで擦るように弄られたり押しつぶしたりされて、寒さからじゃなくて気持ち良くて乳首が立ってきた。
 俺のちんこも熱くてむず痒くなってきてもじもじと足を擦り合わせていたら兄ちゃんの手が下に降りてズボン、更にはパンツの中にまで侵入してきた。


「将也、勃ってる」
「だって兄ちゃんが触るからっ」
「そうだな」


 兄ちゃんは、俺の頭で枕になっていた腕をちんこの方まで下げて、それで俺のちんこをぐにゃぐにゃと揉み、芯を持ったそれを扱いてきた。もう片方の手は再び乳首に戻り、更には耳をべろべろと舐めてきて、それをいっぺんにされて俺は声を止めることができなかった。


「ああっ、やだぁ…兄ちゃんっ兄ちゃんんっ、はぁ…ううっ、やだってばっ」


 耳の穴に舌を入れられぴちゃぴちゃじゅぼじゅぼとえろい音がして、乳首は相変わらずぐりぐりされるしちんこは先走りが出てて兄ちゃんが扱いて先端を親指でいじめてくるたびにぐちゃぐちゃってしていて、パンツの中がむわっとして熱い。腰を捩って逃げようとしてもベッドの上だし後ろには兄ちゃん前は壁で、足で押さえつけられていて離れられない。


「ううっはぁっ…くっ、んっ…ぁ、あっ、ンんっ」
「すっげえびくびくしてる。…イきそ?」
「やだぁ…にいちゃんやだよ…ふっ、ぁあっ…」
「なにが嫌なんだよ」
「ぱんつ、脱ぐっ…出ちゃうから…ねぇっ脱がしてよぉ…!」


 もうイってしまいそうで、このままパンツの中に出すのは嫌で後ろの兄ちゃんに懇願しても兄ちゃんは笑って「だめ」と言ってがしゅがしゅと扱く手を速くした。


「もうパンツもなにもかもべちゃべちゃだっつーの」
「ああっ!やだっ、やだってばぁ…!いく、いっちゃうよっ…ねぇっ、んっ、はあっはあっ、あっ、あっ、」
「ほら、我慢しねえでイけ」


 最後の方はひっきりなしにイくイくとずっと言っていたら兄ちゃんが俺の耳朶を噛むという決定打を与えてきて、俺は呆気なく精を吐き出してしまった。

 暫くは何も考えられなくて、息をはぁはぁと吐きながらぼーっと壁を見つめていたらいつのまにか、暑いと布団を剥いで起き上がっていた。


「将也、見ろこれ、お前の」
「あぅ…やだ、なんでそんなの見せんのっ」


 あろうことか兄ちゃんは、掌にベッタリと付着していた俺の精液をわざわざ見せてきた。暗闇でハッキリとは見えないけど幾分か目が慣れているから、兄ちゃんの手に付着しているものがうっすらと分かって顔が熱くなって慌てて顔をそらした。
 兄ちゃんはその俺の恥ずかしっぷりに鼻で笑って、俺の精液を指先に集めなんと俺の口にそのどろどろの指をねじ込んできたのだ。俺の舌に精液を擦り付けると指を抜かれ、俺は慌てて唾と共にそれを吐いた。


「うぇっ、ちょっ…やだ…にがいー…」
「おいおい出すなよ」


 一体全体、どこに自分の出した精液を好んで飲む奴がいるのだろうか。恨みがましく兄ちゃんを睨むと、兄ちゃんは出すなと笑いながらもそばに置いてあったティッシュで精液の垂れる俺の口元とあと自分の手を拭いていた。




***


「ううぁっ、あっ、にいちゃ…兄ちゃんっ、ああっ!ふっ…く、ぁ…」
「まさやっ、大丈夫か?」


 大丈夫な訳ない。もう何回中出しされたのか分からないくらいにどろどろにされていた。絶対結合部は兄ちゃんの精液がぐちゃぐちゃに泡立ってるに違いない。
 いわゆる正常位で身体を兄ちゃんのちんこで貫かれて、兄ちゃんの硬くて太くて、そいでいて長いズル剥け大人ちんこで俺の奥の気持ちいいとことか、ちんこの裏側あたりにあるらしい前立腺とかいう気持ち良くなっちゃうとこだとかをごっつんこごっつんこされる。俺の口からは、ごっつんこされる度に押し出すようになんか甲高い声が出てしまって、恥ずかしくて手で塞ぎたいのに兄ちゃんが握ってベッドに押さえつけているから叶わない。


「あぁっ!あっ、はぁっ…きもちっ、兄ちゃんっ、うーっ、やだぁっ、またイッちゃうよぉ…!」
「何度でもイけばいいだろっ…はぁっ、っく…」
「兄ちゃんっ…にいちゃっ、キスして!ねぇっ!兄ちゃんっ」


 そう願えば兄ちゃんはすぐに腰を屈めてキスをしてくれた。その首に腕を巻きつけてもっとと言うように引き寄せる。べちゃべちゃ舌を絡めて、歯列をなぞられて、じゅるるって舌を吸われると気持ち良くて少し意識がぶっ飛んでしまう。けれどすぐにお尻が気持ち良くて意識を引き戻されて、今度は俺が兄ちゃんの舌を、唾液と一緒にじゅるると吸う。そうしたら兄ちゃんは気持ち良さそうにはぁって息を吐いて、それでいてナカのちんこもびくびくってして、俺のやったことで兄ちゃんが反応する、それが少しだけかわいかった。
 兄ちゃんは俺の背中に手を入れて持ち上げると俺を太ももに乗せて、重みで兄ちゃんのちんこが奥の奥にまで届いて衝撃で叫びそうになったのだけれど兄ちゃんの口の中に吸われてしまった。


「ひっ、んんっ…兄ちゃんっ、俺もうむり…疲れたイきたい…これで終わりにして…」
「しょうがねーなあ。おら、最後しっかりな!」


 言葉と同時に兄ちゃんはベッドのスプリングを利用して大きくバウンドするかのように下から突き上げてきて、それに合わせて上に乗ってる俺も大きく揺れる。


「っく、んっ…あっあっひぃんっ…ぁあっ」


 次第に大きい揺れから細かく素速い突き上げに変わって、息する間もない位に快感を与えられる。気持ちよすぎて逆に苦しいくらい。


「まさや…まさやっ、イきたいか?」
「うああっ、あンっ、はぁ…はぁっ、イきたいっ、イきたいっ!」
「じゃあほら…あれ、言えよ」
「ああっ、んっ…にいちゃんっ…にいちゃんおねがいっ、イかせてぇっ…にいちゃんっすき、あぁっ、にいちゃんすきぃっ…!」
「ーー…将也っ!」


 ぎゅっと兄ちゃんにしがみついて叫ぶように言えば、兄ちゃんががつんがつん奥を抉るように突いてきて、しかも片方の手で俺のちんこの先っちょをぐりってしてきたから俺は声も出さずにイってしまった。ナカでは兄ちゃんのちんこがびくびくと揺れながらじわじわとナカを濡らして行くのが分かって、その感覚にぶるっと震えながらゆっくり目を閉じた。






***


 ちゃぷちゃぷと水の音がする。重い瞼をあげて周りを確認するとここはお風呂で、兄ちゃんね向かい合わせで抱かれて湯を肩からかけられていた。


「兄ちゃん…?」
「おー、起きたか」


 酷い声だった。あれだけ喘いだのだ、しょうがない。兄ちゃんは後処理のためにまた風呂を温めて入れてくれた見たいだ。手足の何もかもを動かすのさえ怠くて、それでいて兄ちゃんが俺の身体にお湯をかけその手が身体を撫でて行くのが心地よくて、擦り寄るように兄ちゃんの首元に頬を当てた。


「……なー」
「なんだ」
「兄ちゃんはなんで俺を抱くの?」
「…………」


 一度、ピタリと手が止まったかと思えばまたお湯を掛ける手が動いて、兄ちゃんは「お前が俺に抱かれる理由と同じだ」と言った。
 俺が兄ちゃんに抱かれる理由…。なんだろう。断るとキレてめんどくさいから?でも兄ちゃんえっちの時に怒ったことないし、それに断ってもなんだかんだヤってるきがするし、それも違うような気がする。なんだろ。でも俺、兄ちゃんとえっちするの嫌じゃない。気持ちいし。横暴で意地悪な兄ちゃんは嫌い。だけどそれと同じくらいに、いやそれ以上に、兄ちゃんはかっこ良くて勉強もできるし、今日俺がブロッコリー食べた後のためにハンバーグ一切れ残してくれたり、お皿下げてくれたり髪乾かしてくれたり、実は優しいとことかあるのだ。気持ちい事してくれるから好きだ。
 なんで俺兄ちゃんに抱かれてるんだろ、わかんない。


「…どういうこと?」
「今はいい、そのうち分かるだろ」


 兄ちゃんは俺の頭をそっと撫でて「寝ちまえ、あとやっとくから」っていうから、俺は考えることをやめて促されるままに目を閉じて意識を飛ばした。




おわり
お読みいただきありがとうございました!
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