▼ 愛はあまいと知っている3
***
それ以降、皐月の部屋移動の話も無くなり、恋人という関係に落ち着いた俺たちは若干の恥ずかしさに気持ちをどこか浮つかせながら、それでも前と変わらず過ごしていた。
「ねえ!さっちゃん!さっちゃん!」
「うっせえな…なんだよ」
「じゃーん!」
ご飯もお風呂も終えてまったりした時、俺はネットで借りたDVDを皐月の前に出した。それを見た瞬間嫌そうな顔をして部屋に戻ろうとしてたけれど、慌ててその腕を掴んで止めた。
「お前の事だからまた変なホモエロアニメだろ!」
「違う!違うって!それも借りたけど別のも借りたの!!」
以前皐月がいる時DVD観ていいかと聞いたとき、許可が下りたから遠慮なくとあるマンガのOVAを再生したところブチ切れされた事がある。確かにOVAだからやり切った感があってマンガ通りの展開とエロさがあった。そういうもんは誰もいない時自室でイヤホンして見ろ!ってAVを見る時みたいに言われた。OVAはAVじゃない!と軽く口論になったのが懐かしい。
「ほらこれ!この前見たがってた映画だよ〜一緒に観ようよ〜」
「…………観る」
皐月の大好きな動物ものの、感動系のやつ。公開された時すごく観たいという顔をしていた。口にしてないし素っ気ない仕草してたけど、あれは絶対観たいと思っている顔で、レンタルが開始されていたから皐月が喜ぶかなと下心を抱きつつ、借りた。
案の定食いついてきて、DVDをセットしソファーに腰掛け隣をポンポンと叩くと、そっと隣に座ってくれた。距離が、今までと違う恋人の距離で、少しだけにやけてしまう。
映画もクライマックスになると、隣から鼻をしきりに啜る音が聞こえてきた。俺は少し手を伸ばしてティッシュを取り、出もしない鼻水をかみながらさりげなくティッシュの箱を目の前に置く。皐月は泣いてる所を指摘すると恥ずかしくて怒るから、そっとティッシュを差し出すのが俺の役目だと勝手に思っている。やっぱり、涙を見るならこういうのがいい。悲しくて、辛くて、俺が知らないとこで、俺が理由も知らず泣いてるのは胸が苦しい。
「っあー、終わったー感動したね」
「………おう」
テレビの電源を落とす。静かな部屋、隣にはぐずぐずと鼻をかんでいる皐月。涙を隠すようにティッシュで拭っていた。
「目、擦ると赤くなっちゃうよ」
必死に拭っていた手を攫う。そうすると皐月は驚いてこちらを見てくる訳で、俺とバチリと目が合った途端に顔を真っ赤にして顔を逸らした。
それまでの雰囲気がガラッと変わった。今までは映画をただ見ていた普通の空気だけれど、今は恋人同士に流れる甘い空気。
皐月の手を取ったのはわざとだ。この空気に持ち込みたかったから。想いが通じたあの日からキスは何回かした。ちょっとえっちなキスも。だけど、それ止り。俺だって男、色々したいんです。いっぱいいろんな事妄想した。童貞だけど、知識はいっぱいある。経験はないけど。
「皐月、こっち向いて」
「い、やだ…」
片足をソファーの上に上げて身体ごと皐月に向き合う。
「なんで」
「だ…だって、なんかお前…えろい顔してる…」
「…まじか」
そんなに欲求不満そうな顔してるのか。恐るべし童貞パワー。余裕がない。
「……正直に言いますと…俺は皐月を抱きたいと思っています…けどもし皐月が抱かれるのは嫌というなら、心を決めて俺は皐月に抱かれようと思っていますまあそうしたら一生童貞な訳だけど20歳過ぎても童貞だと妖精だか仙人だかになれるらしいしまあそれもアリかななんて思ったりつまり皐月はその辺どのようにお考えでしょうか…」
畳み掛けるように言うと皐月は顔をこちらに向ける代わりに俺に握られていた手をぎゅっと握り返してくれた。
「……俺は、自分よりタッパのある奴を抱こうなんて思わねえよ」
「そ、それはつまり…!」
「それに…お前とならなにしても、その、気持ちいいだろうし…」
「〜〜っ、皐月!」
なんて健気でかわいらしいのでしょうか。そんな事いう不良がこの世の中にいますでしょうか。髪の毛金色で目つきもキツくて口も悪い、それなのにとてもかわいい。もう胸いっぱい。
飛びつくようにぎゅうっと皐月に抱きついたら、勢い余って押し倒してしまった。
「かわいい、かわいい、かわいい!」
「も…うっさいわ!」
「客観的に見ても主観的に見てもかわいいよ!萌えだよときめき!トゥンクトゥンク!」
「キモイキモイキモイ」
皐月が顔を背けた。そうしたら真っ赤な耳が目に入って、気づけば思わず口を寄せていた。
「…う、わっ!」
耳の淵を甘噛みするとコリコリとした感触が返ってきた。皐月がビクリと肩を上げて、そして手も上がったけれどそこは慣れであらかじめ握って封じていた俺さすが過ぎ。
マンガとか小説とかではよくある耳舐め。穴にも舌を差し込んで触感も聴覚からも犯すっていうのはよくあるしちょっと興味あるけど、差し込んでどうしたらいいのか分からないからせいぜい淵などを舐めたり噛んだり、また耳の裏の方で思いっきり息を吸い込んで匂いを嗅ぐ事くらいしかできなかった。
「う、あ…ちょっ、颯っ!」
「んー?」
「俺は嫌だかんな!や……やるならちゃんと、ベッド行きてぇ…」
最後の方はもう呟くようにか細く、目を泳がせて言う皐月はこの世で一番かわいいと思う。動画に撮りたかった。
***
「あの…皐月さん…」
「………なんですか」
「俺、こういうの初めてだからその…気持ちよく無かったら言ってね?」
「〜〜っ、いいからさっさと触れ!」
ぐいっと手を引かれ皐月の上に倒れこむ。
優しく暖かい淡いオレンジ色のベッドライトが皐月をぼんやりと照らしていた。ガラリと変わった空気に皐月も俺も戸惑いつつ、恥じらいつつ、お互いがお互いをじっと見つめ、なにか言いたそうに、けれどなんて言ったらいいか分からなくて、相手を思う気持ちだけが膨らんで弾けてしまいそうなくらいに危ういラインを這っていた。ドキドキと、脈打つ鼓動がとてもうるさい。
そっと、皐月が瞼を下ろした。それを合図に俺はゆっくりと顔を寄せて、皐月に影を落として行く。
「さつき……」
「……んっ、」
触れた唇はとても熱くて、触れ続けていたらこちらが溶かされてしまいそうな、それでいて心が満たされる熱さでずっと触れていたいような、相反する気持ちが俺の中を埋めた。
触れては離し、触れては離し。角度を変えて数回感触を楽しむかのように、もちろんそんな余裕など心には無いのだけれど、啄ばむように口付けを落とし、また離れていく際に少しだけ皐月の下唇を口に含んで吸ってみた。薄く開いた唇の先には真赤な舌が存在し、そしてそのまま視線を上にやり皐月をみれば、思わずくらっときてしまうほどの色気が放たれていた。
「皐月…っ!」
「颯、」
ただ本能のままに唇を寄せて、その奥にある先程見た真赤な舌を絡め取る。歯列をなぞったり舌を甘噛みしてみたり。時には唾液を啜ったりもして、やり方なんて分からないからただがむしゃらに皐月にキスをしていた。
「んぅっ、はっ……」
「皐月…皐月っ…」
「ちょっ…がっつきすぎだっつの、はぁっ」
「は、ごめ…俺余裕な、い…!」
上体を浮かせて皐月のシャツの裾に手をかける。お互いに興奮の極みなのか、それとも俺の経験皆無のがっつきすぎた荒々しいキスのせいなのか、はぁはぁと荒く呼吸を乱していて、俺は更に緊張で手が震えてぐいぐいと上へとたくし上げるだけで脱がせる事ができなかった。
「落ち着けよっ…!も、俺自分で脱ぐから颯も脱げよ」
「あ、うんっ、わかった…!」
俺のリードなんて最初からあったもんじゃない。情けなくも皐月に自分のことは任せ、俺は首裏に手を回し自分の着ていたTシャツをバサリと脱いで床に落とした。
再び皐月に目をやれば、脱ぎ終えていて、綺麗に割れた腹筋と、おへそと、それと…ー
すっと割れた腹筋の筋に指を走らせてみる。ビクッと揺れた身体を愛おしく思いながら徐々に上へと指を持っていく。
「っあ、」
「乳首、感じる…?」
「なんかっ…むずがゆいっ」
やはり二次元とは違い、乳首で快感を得るようになるにはそれなりに開発というものをしていていかなければならないのだろう。けれど俺は、皐月から思わずと言ったように出た喘ぎ声がもう一度聞きたくて、片方は手で乳首を弄り、そしてもう片方には口を寄せた。
「んんっ、ちょっ、やめろ…吸うなっ」
「はあっ、なんで…やらせてよ皐月」
小説の描写を思い出しながら、それを反映させる。片方では舌で突起を転がしたりじゅるっと唾液と一緒に吸ってみたり、また片方では摘まんで指をこすり合わせるようにコリコリと弄ってみたり先端に軽く爪を立ててみたりと色々試してみた。
皐月はどうやら先端が弱いようで、そこを責めると耐えきれないと言ったように小さく掠れた低い喘ぎ声が口から零れていた。
「あ…んぅっ、はぁ…はぁ…」
「皐月…めっちゃかわいい……」
「っ、かわいくなんかねえ!」
そんな言葉さえも逆にかわいいと思ってしまうのはなにかの病気なのか。
俺は再び上体を起こして皐月のスウェットと、それとパンツにも同時に手をかけ何か言われる前に一気に下ろした。
「よかった…ちゃんと反応してる!」
「ぎゃぁあああ!ふざけんななにいきなり脱がしてんだよクソ!見んなハゲ!」
足で数回緩く太ももを蹴り込まれる。曝されたそこはゆるゆると勃ち上がっていて、拙い愛撫に快感を感じている事、またついに身体を触っている訳だが、嫌悪感はなさそうで安堵した。
「触るよ?」
「わっ、やめ…!おい話し聞けよ!あっ、ンんっ」
「……は、勃ってきた…」
「ふっ、う、んっ…そんな嬉しそうな顔すんなばかっ…!」
皐月のものをごしゅごしゅと扱き続けるとそれは立派に固く勃ちあがり、先端には卑猥な粘液が浮かびそれを親指でぐりぐりと先端を刺激してから全体へと塗り込むように手を動かす。
手は皐月自身への愛撫を続け、きつく目を閉じて快感に顔を歪めている皐月をじっと見る。
そこで俺はある事に気づいてサイドテーブルの引き出しから箱とチューブを取り出した。
「はあっ、はっ…ゴ、ム?と…なんだそれ…」
「ジェルだよ」
ビニールを破ってキャップを開け中身を手に取る。出されたジェルはひんやり冷たくて、あ、確かにこれはいきなり身体に触れたらびっくりするよな、これを手で温めてやる攻めはさすがだな、あ、でも冷たさに飛び上がる皐月も見てみたいかも、なんて邪な考えを張り巡らせいる間にジェル温くなっていたのでそれを片手で両手に広げまた皐月のものに触れた。
粘度を増したそこはぬちゃぬちゃと卑猥な音を響かせ、その音は皐月の耳にも届きより一層顔を赤くして、手元にあった枕で顔を隠してしまった。
「皐月っ、顔隠さないでよ…!」
「うっせえ!見んな!」
ふぅっ、と息を吐いてまたジェルを手に取った。今度は皐月のもののもっと奥、一つに繋がるために使う小さな蕾に手を滑らせた。
「う……んっ、はぁ…」
「どんな感じ…?」
「…わかんねっけど、はあっ、違和感しかねぇっ…!」
ジェルを纏った指を一本、皐月のナカに埋め込んだ。ゆっくりと、時間を掛けて。一本くらいだと割とすんなりと埋め込むことができ、初めて触れたナカはとても熱くギチギチとしていて、どうしようもなくなって熱を持った息を吐いて胸に溜まるモヤを吐き出した。
指を抜き差しして、頃合いをみてジェルを足して。奥へ奥へと行き渡るようにジェルを塗り込む。
そうしているうちに皐月のナカにある指は三本となっていた。もちろん、皐月の気持ちいいポイント、いわゆる前立腺というのを探した。見つけたソコを弄ると、ビクッと皐月の腰が浮くのに、ゴクリと唾を飲んでまたそこを目指した。
「はぁ…っ、すご…ぐじゅぐじゅ…」
「あぁっ、んん、ふっ…そ、う…!颯!やだっ、やめろ…なんか変っ…!」
「変…?気持ち良くない?痛い?」
視線をソコから上へ上げると、瞳に涙を浮かべて真っ赤になってぎゅっと唇を噛む皐月が目に入った。
「皐月っ、皐月っ…噛まないで、痛い?なにが変なの?」
「はぁっ……ふっあ、なんか、あついっじんじんする!…ふっううあ、あぁあ、やだ…ぁ」
「あ…このジェル催淫効果もあるやつだから、かも」
「ンんっ、あっ、やっ…そう、そうたっ、はぁ…ぁん、中っ、あつい…っ、ちんこもじんじんするっ、ふざけんな…やだ、たすけろっ…!そうた!」
初めてなので、皐月が痛がることなく快感だけを感じて欲しかったから、気休め程度にと催淫効果のあるジェルを選んでいた。まさかこんなに、逆の意味で苦しむとは思っていなかったけれど、皐月が必死に俺の名前を呼んで、助けてって、腰を揺らすから俺の興奮もピーク。
慌てる必要もないのに、はぁはぁと息を乱して急いで指を抜き、パンツと一緒にスウェットを脱ぐ。俺のソコは痛いくらいに腫れ上がっていて、下ろした時にパンツのゴムに引っかかってぶるんと揺れたのが恥ずかしかった。
「皐月っ、いれてい?へいき?」
「あ…はやく、しろっ…」
「皐月うつ伏せになれる?」
「なんでっ、」
「後ろからの方が受け入れる時の負担少ないって…」
「いいっ…やだ、お前の顔見れねえじゃん…っ、だから」
「うん、うんっ…!」
箱からゴムを取ってモノに被せる。それからジェルもまた手に取ってその手で自身を数回扱いた。そしてそれを皐月と繋がるべく場所に宛てがう。
「力抜いて、息はいてね」
「うっ、んんっ…は、はぁっ…んっ、ん」
キツイ。
ぎちぎちと、ぎゅうぎゅうに締め付けてくるソコは快感よりも今は痛いくらいで、息を吐いてそれをやりすごす。俺以上に辛いのは皐月だ。
「くっ……さつき、皐月ごめん、あと少しだからっ…」
「…う、く……いってぇ…」
「ごめんっ、抜いた方がいいよねっ」
「ふ、ざけんな…っ、こんくらい平気だっつの…は…ぁ、」
少し元気を無くした皐月の自身に手を掛け、気を紛らわせるようにそれを弄った。すぐに皐月はジェルの効果もあってか再び快感を得て、声色にそれを滲ませていた。
「んんっ…」
「っ、入ったぁ…」
皐月の臀部に俺の腿が当たる頃にはお互い息も絶え絶えで、俺に至っては興奮だとか焦りだとかで色々とこみ上げてくるもんで、それが涙となって目に溜まっていた。
「はぁ…なに泣いてんだよ」
「あ、はは…なんでだろ、分かんないけどなんか…胸いっぱいで…」
「やめろよ俺まで泣きたくなるだろ」
「そんな、皐月だってもう泣いてんじゃん」
「えっ」
確かに皐月は泣いていた。それは前戯中の快感からくるものもあって、それでも今皐月の目から垂れている涙はきっと、俺と同じ思いから流れる涙だろう。皐月と、一つになって、胸が幸せでいっぱいだ。
「夢みたい、皐月とこうしてることが」
「颯…」
「好きだよ皐月」
皐月の手を取り布団に縫い付けて、ぐっと身を屈めてキスをする。
「あっ…そ、う…はあっ…」
「ん、皐月っ…すき」
「……っおれも、おれもすきだ…!」
今なら死ねるかもしれない。なんかもう、このまま繋がったまま溶けてしまいたい。小説ではよくある表現だけど、本当にそう心から思えてくる。これが幸せなんだなって、思った。
「あ……んっ、ほら、はやく動けよ…もう中、かゆくてしかたねえんだっ…」
「ん、動くね」
そこから先は、壮絶だった。
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