尊厳をどこかでお見かけしませんでしたか




「あぢっ!!」
「あー!すまん!それアツアツだって伝え忘れてた!」
「………いひゃい…」
「だ、大丈夫か?舌火傷しちゃったか?」
「…う…」
「うちの家族みんな飲み物熱々で飲みたがるからさ、当たり前すぎてすっかり忘れてたんだ…夏野猫舌だもんな、やっぱり無理だったかぁごめんな」
「…とおうちゃ、いひゃい」
「…おう、すまん夏野…」
「、いひゃい」
「……夏野…?」

コーンスープの入ったマグを握りしめて、夏野は舌を出して小首を傾げて何度もいひゃい(痛い)と繰り返し繰り返し言うわけで最初はああやっぱり火傷したのか可哀想だと思っていたんだがあんまり繰り返し言うので夏野の真意が読みとれなくてじっと見つめていたら夏野の痛みに少し潤んだ大きな目とか辛そうに少し寄せられた眉とかちろりと赤く覗く小さな舌とかほんのり赤くなった頬とかがやけに扇情的で背中がぞわりと粟立つ感覚がしてよくよく冷静に考えてみたらあのいつもは小言のひとつと言わずふたつみっつよっつたくさん連ねてくる夏野がただ俺の名前を呼んで痛いと舌を出しているだなんて考えられない何か意図があるに違いないそしてこの煽るような姿とその隠された意図を結びつければ結論を導き出すのは容易いああなんて!回りくどいけれど可愛いお誘いをするんだ夏野可愛い夏野その小ぶりで慎ましやかな唇を君のお望み通り奪って癒やしてあげよううおおお夏野なつのむぐぐぐぐなんで両頬引っ張るんだ夏野よいたいいたい

「い、いひゃいんだってあ!」
「??だからこうやって癒やそうとしてるんだろぉ」
「っだかあ、火傷ひたから何かひあすもの持ってこいお、ばきゃ!」
「………」
「いひゃい!」
「………氷でよろしいですかね」
「ひゃやく!…っうぅー…!」
「………夏野、涙目可愛いな」
「っ!!!」


バキッ





「あれっ兄貴、氷なんて持って何に…あぁ、その頬冷やすの?ナツに殴られたの?どうせまたナツの嫌がることしたんでしょ、ばかねー!」
「…あおひ、うるひゃいぞ…」
「ぶはっ!兄貴、威厳ねぇなぁ」
「たもふ…にいひゃんは悲しいぞ…」
「「いいからナツに謝ってくれば?」」
「………」


知ってるか、おれ、最年長なんだぜ?






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