3「はぁ、はぁ····」






自身の荒い呼吸を整え
額から流れる汗を右手で軽く払った

小走りに近付いてくる友達は
首から下げたストップウォッチを手に
喜びながらそれをあたしの顔に近付ける。





「凄いよ3!新記録出した!!」





3「ま、まじぃ·····?」


「やっぱり3に頼んでよかった!」









人気(ひとけ)の少ない学校、
まだまだ夏休み


何故帰宅部の自分が汗だくで
走っていたかと言うと、
陸上部の友人に試合の助っ人を
頼まれたからである。






「でも、3がこの記録出しちゃったら
怪我で休んでる副部長がちょっと気の毒だよね〜」



3「たまたまだって」



「あんた本当頭脳が足りない分
体力に全力注いでるよね。
よし、この調子なら勝てる!
今日改めてアンカー宜しくっ!」




さらっと毒を吐き満面の笑みを浮かべ
彼女はそのまま次走の記録をとる為去って行く。














ーーーーーーそれにしても日差しが強い。















汗を含んだ髪の毛はとにかく不快である。

水道まで早歩きで移動をし
近くに人が居ないのを確認した後
豪快に頭から水をかけた





3「うへぇー!さっぱりんりんっ!」







すっぴんだからとそのまま調子ずき
顔にも直で水をかける、が
全身まで既にびっしゃり

後の事を考えずに行動するのは
よくある事で先程友人に言われた
頭脳が足りない、とはまるで今の自分に
とても適した言葉であった。








3「.......まぁ、乾くよね!
それにしても、あーきっもちいー!!」














「よう、」



3「·····ん?」







顔についた水滴をパッと払い中腰の体制で
声の主へ顔を傾けた











3「あ、におーじゃん」




見上げる形で彼を見る。

笑顔で声をかけるものの
何故か彼は眉間に皺を寄せつつ
難しい顔でこちらを見ている様子だ










仁王「·····水浸しじゃ」


3「うん、暑くて」






仁王「ん」







顔をそむけ素っ気なく渡されたタオル

視線をなかなかこちらに向けない彼の様子で
やっと自分の置かれている状況を理解した








3「あ」



仁王「どうせ何も考えずに水遊びしてたんじゃろ」



3「水遊びじゃないやい!
.......あー、ありがとう」







仁王「白」




3「?!」




まるで子供っぽいって言いたそうな
笑った顔で自分の顔が一気に
熱を持つのが分かった

慌てて受け取ったタオルで体を覆ったけれど
におーは更に、満面の笑みに。





3「これは違っ!
ほら、今日走るからさっ!
いや、いつもはもっとセクスィなんだよ??
って何言ってんだいっ!」





仁王「.......ぶっ、落ちつきんしゃい」










いや、本当に。










仁王「ところで何で3がここに居るんじゃ」




3「陸上部の助っ人なんだー
におーも部活?」



仁王「おん、氷帝と練習試合」






3「....あー!そう言えばそうだったね」















なんて。





.......本当は聞いてないんだ。

最近まともにゆーしとは連絡を取っていない



取っていないでは無い、か。
返事が返ってきてないんだったっけ、





けれど、その事は誰にも悟られたくなかった。













仁王「.....さて、そろそろ行かんと」



3「あ、うん。頑張ってね!」









仁王「3もじゃぞ、よっ」





3「わっ!?」







弧を描く様咄嗟に投げられた
ペットボトルを落とさない様
慌ててキャッチをするとにおーは
あたしに背を向ける。










仁王「....."白"のお礼じゃー」




3「ちょっと!大きい声でやめてって!」




仁王「プリッ」





3「あっ、!」









"ありがとうね"



去って行く彼にそう伝えようと
後を追おうとしたけれど、










3「.......」











真夏の太陽に反射した銀色の髪がすごく綺麗で、


















3「うへぇ!?まっずーーーーー!
ちょっと!これ何混ぜたのさっ!!」





仁王「けろけろ」










振り返って悪戯っぽい顔で笑う彼は優しくて。

そして、とても眩しかった。









「ride」




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