トイレを済ませ、リビングに戻れば険悪な空気と共にぼこぼこにされて苦笑を浮かべてヒロトと、怒りを露わにした少年(確か風介と呼ばれていた)が正座で俺を出迎えた。これは…帰る訳にはいかないようだ。というか、話が済むまで帰してくれない雰囲気だ。目のあったヒロトに苦笑しつつ、俺も黙ってその場に正座した。
俺が座るとすぐに少年、風介が身を乗り出して焦ったように言った。

「っこの事を誰かに言うつもりじゃないだろうなっ…?!」

焦りと困りが混じった瞳が俺を捕らえる。ああ、この子は晴矢とは違ってバレるとどれだけ大変かが解っているんだな。晴矢にも教えてやって欲しい。

「あのね茂人、この事は見なかった事に…」
「言わない!言わないから!」
「信用ならん…っショックを与えて記憶を…!」

まっ、待て待て!うちにも居るんだ!君みたいな子!
そう言うと側の椅子を持ち上げて振りかぶろうとしていた少年と、それを止めようとしたヒロトが…は?と声を揃えてぴたりと動きを止めた。

「い、居るって…?」
「2週間くらい前にうちに来たんだ!突然人間になっちゃったって、今家で一緒に暮らしてて…」
「私以外にもいたのか…同じ状態になった奴が…」
「…ああ!それで最近急いで帰ったり携帯見てニヤニヤしたりしてたんだ。」
「まぁ、そういう事だ…」

落ち着いた風介は持ち上げた椅子を置くと、再びその場に座った。それにヒロトと俺は安心する。何だか何時間ももめていたかのようにどっと疲れていた。見た目によらないこの子の乱暴っぷりを、ヒロトは普段どう宥めているのだろうか…いや、宥められないからさっきみたいに胸倉を掴まれていたのか…。
ふと本来の目的を思い出す。時計を見る。もう17時?!

「―っもうこんな時間!晴矢絶対怒ってる…!」
「あ、帰る?はいこれ、じゃがいもと人参」
「ありがとう!風介くん、だよね?また今度!」
「また明日ねー!晴矢くんによろしく!」

ああもうっこんな量の野菜自転車のカゴに入らないっ!
無理に野菜をカゴに包めこんで全力で自転車をこぎ家へ向かうのであった。
焦りの中で心なしか口元が緩むのは、同じ境遇の仲間を見つけたからか、晴矢に会えるからか。






(茂人の馬鹿!おせぇよ!)
(ご、ごめ…)
(早くゲームしようぜっ)
(晴矢、や…休ませて…)



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風介くんとヒロトくんを出してみました。
今後の4人の絡みからが私的に一番書きたい所だったりします^^